※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

2003年に設立された株式会社ビジュアライズ。バーチャルアバターを用いたゲーム開発で成長し、現在は「ビジュアル&コミュニケーション」をテーマに、ライブ配信サービスやメタバース空間の構築も手がけている。代表取締役社長の安達弘明氏に、創業の経緯やサービスの魅力、今後の展望をうかがった。

プログラマーの素質を伸ばし、バンドマンからベンチャー社長へ

ーー経歴をお話しいただけますか。

安達弘明:
小学生の頃から父にプログラミングを教わっていましたが、反抗期を迎えて音楽の道を志すようになりました。結成したバンドが地元の長崎県で有名になり、上京後は自主レーベルを立ち上げて精力的に活動していました。

しかし、28歳になった頃にメンバーが脱退したのです。本気で音楽をやっていたからこそ「バンドを立て直すには時間を要する」と確信しました。自分の時間をつくってプログラミングを勉強し直し、「お金持ちになったら再び音楽に戻ろう」と、決心したことが今につながっています。

Javaで開発した携帯電話向けのゲームが登場した時代でもあり、「これからすごい世界になるぞ」という思いもありました。まずは、自作したロールプレイングゲームを持ち込んだ会社に就職し、2003年に独立した次第です。

ーー独立するきっかけは何でしたか?

安達弘明:
前職はプログラマーとして入社したものの、実際の立ち位置はプロジェクトを管理するプロデューサーだったため、次第に「自分が中心にいた方が早く動ける」というイメージが湧いてきました。また、入社して3ヶ月後に会社が買収されてしまい、開発会社が「開発を発注する会社」となったのです。チャンスの気配と挫折感が入り交じる状態だったため、そこで、「独立するから発注してください」と上層部に働きかけ、弊社の現CTOとともに「ビジュアライズ」を設立しました。

アバター開発×音楽愛でカラオケの新スタイルを創出

ーービジネスの転機もうかがえますか?

安達弘明:
最初の5年間は調子が良かったのですが、リーマン・ショック後は負債を背負ったり、新規事業がうまくいかなかったり、苦労が続きました。そんな中、自社の仕事をつくるために、外部から出資を受けて開発したアバターゲームが大ヒットし、出資会社が上場したことが大きな転機となりました。

その後は「お金持ちになったら再び音楽をやろう」という、当初の決意を思い起こし、株主の皆様には上場を目指すことを宣言し、しっかりと認めていただいた上で音楽活動を再開しようとしました。

目標を達成すると、「音楽とゲームの世界をマッチングさせる」というアイデアも生まれました。そこから、自社IPゲームの知見を活かし、アバターで楽しむカラオケ・ライブ配信サービスの開発に取り組んだのです。コロナ禍でライブ配信が盛り上がり、バーチャルYouTuberも流行し始めたタイミングでしたね。

ーー現在の事業内容をご解説ください。

安達弘明:
アバターを中心としたゲームの開発・運営が主力事業です。「アバター」とは、Webやゲームなどの仮想空間で動く自分の分身キャラクターを指します。自分好みのアバターを作成して、レストランを経営したり、モデルになって活躍したり、いろいろな楽しみ方があります。

そして今、注力しているサービスは、アバターになって、「JOYSOUND」の高音質な音源でカラオケを楽しめる「カラオケドットオンライン(カラオン)」です。

現在はβ版を運用中ですが、すでに1000曲以上の曲を歌うことができます。将来的には、3万曲以上を歌えるようになる予定で、ライブ配信者が収益を得られる投げ銭システムや、視聴者がアバターで同じ空間(様々なライブ会場)に入り、バーチャルライブを楽しめるシステムを搭載しています。

正式なリリース予定は2025年6月です。すでに「カラオン公式VTuber」としてライバーを募集しています。昨年は、広報活動の一環でポップカルチャーの大型イベントである「東京コミコン2024」にも出演しました。

日本ならではのコンテンツ発信で明るい経済活動を

ーー貴社の強みや社風を教えていただけますか。

安達弘明:
強みは「技術力」と「提案力」の高さです。メタバース開発のベースエンジンをもとにしたソリューションビジネスも手掛けています。たとえば、不登校の人向けのバーチャル学校や、物件探しの内装のシミュレーションツールなど、さまざまな企業様の「イメージ」を具現化することが可能です。

また、エンジニアやデザイナーが、本当にやりたい仕事ができることも強みの一つです。弊社は社員のヒアリングに力を入れ、入社前の希望と実際の仕事が異ならないように努めてきました。

採用するのは経験者だけではありません。中には、趣味でプログラムを書いていた、元電気工事士がメインプログラマーを務めるなど、未経験から「主人公」になった人もいます。バンドマンを辞めて、約9ヶ月でエンジニアから社長になった僕も主人公の一人ですね。

新しい世界に飛び込んでがむしゃらになるほど、メキメキと力がつくものです。僕はチャレンジする人が大好きなので、背中を押してあげたいと思っています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

安達弘明:
僕はオーケストラの指揮者のように、あらゆる技術を統合させる「オーケストレーション」を目指しています。カラオケにおいても、音源・アバター・交流・オンライン配信・チケット購入といった機能を1つにまとめて、賑やかに経済活動したいと考えました。

「日本の文化を世界に発信して外貨を獲得する」という目的もあります。長崎で生まれ育った僕は、「平和」を高らかに叫べるのは日本人ではないかと考えています。

カラオケやアニソンといった日本発の文化をもっとアピールして、世界中の人に日本を大好きになってもらい、「みんなで平和に毎日お祭り騒ぎしようよ」と伝えたいのです。この世界観で日本を再び元気にできれば、海外の国々も元気で幸せになれると考えています。

編集後記

約1,000件のソフトウェア開発とサービス運営を通して、多くのパートナーと出会ってきた株式会社ビジュアライズ。ライブ配信・メタバース空間の構築といった新たなサービスは、より一層「人々」をつなげる役目を果たすことになる。経済活動を軸に「みんなで幸せになりたい」という安達社長の切実な思いが、世界中の人に届くことを願う。

安達弘明/幼少期からプログラミングに親しみ、高校では音楽活動に没頭。20代で上京後、バンド解散を経験。その挫折を糧に再びプログラミングに挑み、2003年に会社を設立。自社IPアバターゲームで成功を収める。2024年、音楽への情熱を胸に「カラオケドットオンライン」を開発。音楽とデジタルが融合する新たな経済圏の確立を目指す。父の教え「雇用を創造しなさい」を信条に、挑戦を続ける情熱の経営者。