※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

1960年に設立された株式会社フカガワは、空調ダクト成型機および、関連部材の製造・販売会社として、国内トップシェアを誇り、業界のDX化に貢献している。代表取締役社長の深川和己氏に、同社の取り組みや業界のDX推進の重要性、今後の展望などをうかがった。

「開業医」と「空調ダクトメーカー社長」という二足のわらじで成功

ーーまずは、ご経歴について聞かせてください。

深川和己:
私は、長男ということもあり父が経営する会社を継ぐものだと思っていたのですが、高校3年時の進路相談で父が突然「先生、息子を医学部に行かせてください」と言いだしたのです。

その後、医学部へ進学して医師としてのキャリアが10年になる頃、大学での研究者になる道が見え始めました。そんな時、「いつまで医者を続けるのか」と父に事業継承を請われました。そこで、医療人としての基盤を残すためにクリニックを開業したうえで、家業を継承しようと決意しました。

医療人と会社経営を両立できたのは、「すべてを自分一人で実行することはできない。自分ができない仕事は自分よりできる人に任せる」というマインドがあったからこそだと思います。

ーー貴社のサービス内容や取り組みについて教えてください。

深川和己:
空調ダクト成型機械の製造販売が創業時の事業ですが、その後ダクト部材の製造販売事業が主力となりました。近年は「空調ダクト業界のDX」に注力しています。主要顧客のダクト工事業者様向けに、ICTを活用することで工場のスマート化や、積算業務・部材発注業務の効率化、工事後の管理が容易になるサービスを提供しています。

会社の取り組みとして、業務のデジタル化を進めたほか、「誠意・努力」「安全・精励」という企業理念をより分かりやすく「F-way(行動指針)」として新たに言語化しました。「お客様のお役に立つ」仕事を通して「社会の発展に貢献」しながら「全従業員の成長と家族の幸せを追求する」ことをミッションとして掲げています。

3つの強みで建築設備工事を効率化――DXを加速させるBIMやCADの活用

ーー貴社の強みをお聞かせください。

深川和己:
1つ目は「人」です。社内教育に力を入れ、目標とPDCAを設定した成長シートを導入した結果、指示を待つのではなく能動的に動く人が増えました。社員たちが部門や支店を越えて協力しあう文化は、会社にとって大変心強いものです。

2つ目は5年から10年ごとに新しいプロダクトを投入して、創業時から「業界にイノベーションを起こしてきた」ことです。主力事業が順調な時こそ新しいイノベーションにチャレンジしてきました。今後もDXで空調ダクト業界の革新のお手伝いをしたいと思っています。

3つ目は世界のワークフローのトレンドである「BIM(Building Information Modeling)」という設計から施工後の管理までを一元管理できる設計ソフトを早期に導入したことです。BIM導入を端緒に多くのDXソリューションを先行してつくることができました。これが競合との差別化となり、弊社の強みになっています。

ーーDXで解決したい課題を教えてください。

深川和己:
IT化が進まないとされる建築業界の中でも、ダクト設備工事の分野はさらに遅れをとっています。例えば、毎朝、弊社にお客様からの注文書がFAXで届きます。これは工事現場から疲れて帰ったお客様が、夜中に数時間かけて手書きしたものですが、この工程はデジタル化できる可能性が高いのです。

コンピュータ上で図面を描けるCADソフトは、上流工程を担う大手の設計会社や総合建設会社にとって、今や不可欠であるにもかかわらず、中小企業の保有率は4割程度です。たとえCADを持っていても、多くの中小企業はデータを活用できていません。

前述と同じように図面データを印刷して手作業で部材を拾い出しているケースが多いのです。弊社はCADデータを活用することにより部材の拾い出しや積算、発注業務をデジタル化することを提案しています。

さらに、CADが進化したBIMでは、上流(設計)からダクト製造や現場工事までをデータ管理することにより、施工完工後のメンテナンスや、数十年先の改修工事に至るまでデータを一元的に活用することが可能となります。

しかし、現状はダクト製造の手前でデータが分断されているのです。弊社はこのデータの分断を工事業界の課題と捉え、BIMソフトと弊社の切断機CAMをリンクさせることに成功しました。これにより、製造工程までBIMの活用を推奨しているのです。

また、CADを持たないお客様に対しては、弊社が積算、割付プレハブ業務を代行するサービスを提供しています。このような「開発と提案」によってお客様から信頼を得ることが、空調ダクト業界でのシェア向上につながると信じています。

ーーお客様の意識にも変化があったのでしょうか?

深川和己:
かつては「CADがなくても問題ない」「CADを扱える人がいない」というお客様が多かったのですが、2、3年前から潮流が変わった気がします。また、弊社が開発しているクラウド型の工場管理システムや、世界初の空調ダクト部材専用のECサイトなどが大きな変化のきっかけになると考えています。

将来、これらのクラウドサービスがリリースされれば、その便利さゆえに業界内で評価が広まり、「うちも使ってみよう」と考える企業様が劇的に増えていくのではないかと期待しています。

新たな使命の根底にある思い――「社員とその家族を5倍幸せに」

ーー求める人物像や社風、教育制度について教えてください。

深川和己:
「仲間として一緒にやっていきたいと思える人」を求めています。そのため、面接では性格の明るさや実行力の有無を重視していますね。また、「仲間のため・お客様のため」という思いで同じ方向を見て、誠意ある努力ができる人を採用したいと思っています。

教育にも注力しており、チームビルディング研修、リーダーシップ研修、昇進時研修、未来の幹部研修など、さまざまな社内研修を行っています。さらに、近年は新卒の採用・教育にも注力し、新卒・第二新卒社員を対象とした「フレッシャーズキャンプ」という教育交流プログラムを実施しています。

具体的には、「新入社員の視点で仲間のためのプロダクトをつくる」というテーマで行動します。キャンプ中は会社のフィロソフィーを学ぶことをはじめ、ゲームを通じてチームビルディングも行います。

フレッシャーズキャンプでは「フカガワ社員名鑑」、「ファミリーデイ」、「フカガワ人生ゲーム」、「1日インターンシップ体験」などといった面白い取り組みを行います。入社1年目の社員がワクワクや緊張感を持ちながら、小さくても思い出に残る成功体験を積めるように支援していきたいと思います。

ーー今後の展望をお聞かせください。

深川和己:
現在、上場を目指して、人事・総務・経理といった管理部門を強化しています。業界で必要とされる会社となった今、経営幹部の育成や事業承継も大きな課題です。

経営者としては「全社員とそのご家族に幸せになってほしい」と思います。そのためにも、さらにお客様のお役に立つ必要があります。そこで、既存事業の深堀りと、業界にイノベーションを起こす新規事業の開拓を続け、お客様にとって必要不可欠な会社であり続けることを目指していきたいと思います。

編集後記

フレッシャーズキャンプには欠かさず参加し、ディスカッションや食事会を通して親睦を深めたいと語る社長。入社1年目から、教育交流プログラムという形で企業のトップとじっくり関われる企業にはなかなか出合えないのではないだろうか。社員を大事に思う施策が会社の団結力を生み、結果的に「お客様のお役に立つ」というミッションの達成につながっていると思われた。

深川和己/1961年、埼玉県生まれ。1989年、慶應義塾大学医学部を卒業。同大学の眼科学教室へ入局。1999年、医療法人社団慶翔会 両国眼科クリニック理事長に就任。2005年、慶應義塾大学医学部眼科学教室の講師(非常勤)に就任。2015年、株式会社フカガワの代表取締役社長に就任。