※本ページ内の情報は2024年10月時点のものです。

空気は私たちの生活に不可欠でありながら、その価値はしばしば見過ごされがちだ。株式会社カルモアは、この「当たり前」の空気に新たな価値を見出し、30年以上にわたって空気環境の改善に取り組んできた。

「良い空気をつくる」というミッションのもと、さまざまな分野で独自の技術とノウハウを駆使し、目に見えない空気の課題に挑戦し続けている。コロナ禍を経て、空気への意識が高まる中、さらなる飛躍を目指す同社の取締役社長、榎本崇浩氏に同社の歩みと未来像をうかがった。

自然への愛着から空気環境ビジネスへ

ーーカルモアに入社された経緯を教えてください。

榎本崇浩:
私は新潟県の魚沼市の自然豊かな環境で生まれ育ちました。祖父が山仕事をしていたこともあり、環境に携わる仕事に漠然とした憧れがありましたね。そうした影響もあり、大学では環境経済学を専攻し、就職活動の際に弊社と出会いました。当時はまだ13人ほどの小さな会社でしたが、説明会で感じた会社の空気や社長の価値観に強く共感し、他の企業からいただいていた内定を辞退し、入社することに決めました。

入社後は営業として、主に建築業界向けに脱臭設備の販売を担当しました。単に製品を売るだけでなく、お客様の課題に向き合い、最適なソリューションの提供を心がけていました。この経験が、後の製品開発や事業展開にも大きく活きています。

ーーその後、製品開発にも携わられたそうですが、どのような経験をされましたか?

榎本崇浩:
2012年に、私の所属していたチームの主力製品が他社の製品に押されて、競争力が落ちていた時期がありました。そんなときに、製品開発を任されたのです。分からないことばかりだったので、開発に関する本を買って読んだり、ネットで調べたり、とにかく必死に勉強しました。

必死さや情熱を持って行動し続けたことで、新しい技術協力パートナーと巡り合うことができ、その結果、脱臭フィルターと除菌脱臭装置の2ブランドの商品開発に成功しました。その後、2013年からは営業に戻り、自分で開発した商品を事業として確立する役目を担いました。

それまでは誰かが確立したオペレーションに従うだけでしたが、製品開発から販売までの一連のプロセスを経験したことで、ビジネスマンとしての成長を実感しましたね。同時に、自分で生み出した製品を市場に浸透させていく過程で、大きなやりがいと面白さを感じました。

空気の総合コンサルティングメーカーとしての多角的なアプローチ

ーー貴社の事業内容について教えてください。

榎本崇浩:
私たちは「あらゆるところに、いい空気を。」をミッションに掲げ、主に3つの事業を展開しています。1つ目は脱臭事業、2つ目は空気の衛生、つまり除菌や感染対策、カビ対策などによって安全安心な空気をつくる事業。そして3つ目は、香りを使った空間演出事業です。これらの事業を通じて、マイナスの状況を改善し、さらにはゼロの状態からプラスの価値を創造することを目指しています。

最近では、匂いの種類を識別できる新しい技術の開発にも取り組んでいます。この技術が実用化されれば、臭気問題をより客観的に評価し、適切な対策を講じることができるようになると考えています。

ーー貴社の強みはどのような点にあるとお考えですか?

榎本崇浩:
私たちの強みは、空気の総合コンサルティング企業として、調査から対策・アフターサービスまで、ワンストップでお客様の課題解決が出来る対応力と、多角的なアプローチを可能とする豊富なソリューションを有している点です。単に製品を販売するだけでなく、お客様の課題を診断し、最適なソリューションを提案します。たとえば、工場の臭気問題であれば、工場内外のアセスメントから始まり、対策案の立案、実際の現場での効果検証、設備の導入、そしてアフターサービスまで一貫して対応できます。

30年以上の実績があるからこそ、さまざまな業界や状況に対応できるノウハウが蓄積されているのです。また、社員の多くが国家資格である臭気判定士の資格を持っているため、この専門性の高さも強みの一つです。これらを活かし、お客様に信頼されるパートナーとしての地位を確立してきました。

カルモアが目指す「いい空気」の未来

ーーコロナ禍を経て、空気環境に対する意識はどのように変化しましたか?

榎本崇浩:
以前は、臭いの苦情をなくすという「マイナス」をゼロにする改善対策が中心でしたが、最近では空気の品質を積極的に高めていこうするゼロから「プラス」にするニーズが高まっていると感じています。オフィスでは、従業員の満足度向上、生産性向上のために空気環境に投資する動きが増えてきました。また、除菌や感染対策への関心も高まっており、弊社の事業領域はますます広がっていると感じています。

私たちは「いい空気」を追求し続けています。これは、臭いや菌を除去するだけではありません。空間全体の空気の質を向上させ、そこにいる人々に快適さや幸せをもたらすことを目指しています。香りを使った空間演出事業は、この「ゼロをプラスにする」という考え方から生まれました。また、新しい技術開発にも積極的に取り組んでおり、より効果的で環境に優しい方法で空気の質を向上するソリューションの開発を進めています。

ーー最後に、貴社の今後のビジョンについてお聞かせください。

榎本崇浩:
私たちは、空気環境コンサルティングの分野で日本一となることを目指しています。海外展開にも注力しており、特に中国やASEANでの事業拡大を計画しています。具体的には、2030年までに売上高20億円達成を目指していますが、単に数字を追うのではなく、社員一人ひとりがやりがいを持って働ける環境づくりも並行して注力していきたいです。

私は、社員の自主性とチャレンジ精神を大切にしています。トップダウンで全てを決めるのではなく、社員一人ひとりが自分の考えを持ちアイデアを提案できる、また、方針を決めるプロセスに参画することで、納得感を持ち、ビジョンの実現に向けて主体的に動ける、そんなカルチャーをつくりたいと考えています。そのため、権限委譲を進め、社員が自ら考え、行動できる組織づくりを進めています。この取り組みによって、社内にもっと「いい空気」が広まっていったら嬉しいですね。

編集後記

「空気」という存在に、これほどの可能性があったのかと目から鱗が落ちた。臭いを消すだけでなく、香りで空間を演出し、さらには目に見えない空気の質まで向上させる。その発想の柔軟さと技術力に脱帽し、同社の「いい空気」は社内からも生まれているのだと実感する取材となった。今後は街を歩くたび、そこにある「空気」の質を意識してしまいそうだ。

榎本崇浩/1982年新潟県生まれ、専修大学経済学部卒業後、カルモアに新卒一期生として入社。建築業界向けに除菌脱臭装置の販売に従事した後、製品開発責任者に着任し複数の製品開発を担当。開発した製品と共に複数の事業を再構築し、2015年に事業本部長、2020年4月取締役社長に就任。