※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

有限会社天平フーズは、物産展の企画・演出やイベントのプロデュース、「天平キムチ」や「iroHa大福」などのオリジナルブランドの販売やフランチャイズ運営を行っている。その社名は、世の中が何事もなく無事に治まって平和であることを意味する「天下泰平」に由来する。

創業者の祖父と取締役会長を務める父のもと、2021年に代表取締役社長に就任した池田昌弘氏は、組織づくりや地域活性化の取り組みを行ってきた。今回は、社長就任までの経験や注力していること、今後の展望について話をうかがった。

お客様を喜ばせることを学んだカフェレストランでの経験

ーー前職での経験について教えてください。

池田昌弘:
生まれた時から「お前が跡取りだ」と言われて育ち、家業を継ぐことは常に頭の片隅にある状態で過ごしてきました。一方で、学生時代からファッションが好きで、華やかな世界に興味を持っていた私は、個性を大切にするという社風に惹かれ、株式会社バルニバービに入社し、カフェレストランで働き始めました。

入社当初、私はお客様から言われたことに納得がいかないとすぐに言い返してしまい、店舗で1番クレームをもらうスタッフでした。ある時、私へのクレームが原因で店長がお客様に謝っている姿を見て、自分はお客様を蔑ろにしていたことに気付いたのです。

そこから、「お客様を喜ばせるために仕事をしよう」と心を入れ替えました。バルニバービで働いた4年間で、仕事への向き合い方が身についたと感じています。

ーー天平フーズに入社してから社長就任までどのような経験をされましたか?

池田昌弘:
2011年に天平フーズに入社し、3年間は催事販売の現場で販売の仕事を経験しました。社長の息子として常に周りから注目されることへのプレッシャーもありましたが、前職でお客様を喜ばせることを学んだおかげで、リピーターを多く獲得することができたのです。その後、営業本部長を経験し、2018年に専務に就任した時にほとんどの決裁権を託され、2021年に代表取締役社長に就任しました。

現場の声を反映させるボトムアップ型の組織づくり

ーー社長に就任してからどのような取り組みを行っていますか?

池田昌弘:
組織づくりに力を入れています。弊社はこれまで、トップダウンで上手く事業を回していましたが、もっと現場の声を社内に吸い上げていかなければいけないと思い、ボトムアップの組織づくりを進めているところです。

まずは社員1人ひとりのことを知ることが大切だと考え、積極的にコミュニケーションをとるようにしています。また、経営理念である「人を幸せにする」という目標に向かって進む仲間として、立場に関係なく意見が言い合える環境にすることを心がけています。

さらに、人事評価制度を見直し、これまで年に1度だった上司との面談を四半期に1度に増やし、私も年に1度全社員と面談を行っています。

ーー事業内容を教えてください。

池田昌弘:
弊社では「天平キムチ」「iroHa大福」の他にスイーツブランドを3つ、計5つのブランドを展開しており、催事販売のフランチャイズ運営をしています。駅やデパート、スーパーなど、多くの販路を持つことが弊社の強みです。

人口減少が進む地元・滋賀県高島市を魅力ある場所へ

ーー地元を盛り上げることにも力を入れているそうですね。

池田昌弘:
私が社長に就任した時に、地元である滋賀県高島市を盛り上げることを目標に掲げました。弊社は催事販売で日本全国や海外でも商売をしているので、高島市内でお金を循環できていない状況をどうにかしたいと考えていたのです。

そこで、まずは本社の敷地内に旗艦店である「天平マーケット」をオープンしました。高島市は人口減少が進んでいて、消滅可能性自治体にも挙げられていますが、観光資源を活かし、魅力的なお店をたくさんつくることで人が集まってくる場所にしたいと考えています。

ーー今後の展望をお聞かせください。

池田昌弘:
従業員がわくわくしながら働ける会社にしたいですね。現在は「天平キムチ」「iroHa大福」を含めて5つのブランドを展開していますが、ゆくゆくは10のブランドを展開する「天平10ブランド構想」を掲げています。豊富な販路を活用した食品の販売だけでなく、飲食店など、既存の事業にとらわれないさまざまなブランドの展開を見据えています。

編集後記

人口減少が進む中で、地域の魅力を引き出し、人々を惹きつける場所をつくり上げるというビジョンからは、池田社長の地元に対する深い愛情と責任感が伝わってきた。

また、社員とのコミュニケーションを大切に、立場に関係なく意見を言い合える環境をつくることが、組織としての持続的な成長や「天平ブランド10構想」の実現につながっていくのだと感じた。地元を盛り上げながら、さらなる成長を目指す天平フーズの今後の活躍に期待したい。

池田昌弘/1985年滋賀県高島市生まれ。大学卒業後、株式会社バルニバービに入社。4年の修業期間を経て、2011年有限会社天平フーズに入社。販売から営業・企画を行い、営業本部長、専務を経て2021年代表取締役に就任。消滅可能性都市に挙げられた地元“高島市”を創生する活動に注力している。