※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

平安レイサービス株式会社は、平塚市を中心に冠婚葬祭や介護を展開する会社。婚礼や葬儀の運営だけでなく、それらの場で必要な料理や家具などを自社で製造する「内製化」にも力を入れている。

同社が手がける内製化の取り組みとは一体どのようなもので、そもそもなぜこの取り組みを始めたのか。代表取締役社長の山田朗弘氏に、詳しい話をうかがった。

冠婚葬祭業に加え、衣食住に関連する「内製化」にも取り組む

ーー貴社の事業内容を教えてください。

山田朗弘:
弊社は、神奈川県平塚市を中心に冠婚葬祭業を営んでいる会社です。創業当初は、婚礼の売上が最も大きかったのですが、最近は少子高齢化により葬祭の売上のほうが大きくなっています。

また、冠婚葬祭で培った内製のノウハウを普段の生活の衣食住に絡む製品への展開に力を入れています。

ーー事業の内製化とは、具体的にどのようなことを手がけていますか。

山田朗弘:
一般的に冠婚葬祭業は外注が多いですが、食事や生花などを内製化しています。そこから発展してきているのが、レトルト食品の製造・販売です。たとえば弊社がつくっているオリジナルカレーはお歳暮やお中元としても利用されており、直近では機械化も進め、製造業務を効率化しています。また、地元平塚の高校生が考えたカレー、漁協であがる未利用魚の煮魚を弊社が商品化するなど、地域貢献の取り組みも行っています。

そのほか、葬祭の場で使うオリジナルフロアスピーカーや祭壇、家具などに加えて、葬儀会場で出す食事の調理で使う消臭機能付きIHクッキングワゴンも自社で製造しています。IHクッキングヒーターは特許を取得しており、他社にリースできるほど高品質に仕上がっています。

これほど内製化にこだわっている同業他社はほとんどなく、内製化に力を入れることで、外注に比べてコストを大幅に削減できています。

ーーなぜ内製化に力を入れるようになったのでしょうか。

山田朗弘:
弊社の調理部門は非常に質の高い料理をつくっており、それを通夜など冠婚葬祭の場でしか出さないのはもったいないと思い、レトルト食品の外販事業を始めました。また、料理はもちろん、衣装や写真などあらゆる分野に真摯に取り組み、お客様に最善のサービスを提供したいと考えたからです。

また、家族葬の普及が示すように、葬儀に対するニーズは家庭ごとに多様化しています。元々婚礼が主力の時代から料理は自前でつくっていましたが、葬儀の際に求められる料理も各家庭で違いますし、お客様の細かなニーズに応えるために、葬儀でも料理をつくるようになりました。

弊社は料理をはじめ、自社オリジナル商品が多数存在します。それらをすべて把握し、お客様に適切な提案をするためには人材の教育が不可欠です。弊社では教育センターで研修を行ったり、動画のマニュアル教材を活用したりしながら、人材の質向上にも努めています。

多彩な事業に取り組む会社だからこそ、「柔軟な人材の育成」が成長の鍵を握る

ーー今後はどのようなことに注力する予定ですか。

山田朗弘:
お客様のニーズにより合ったサービスを提供するために、新たなエリアへの新規出店や既存葬儀会場の改修、商品のラインナップを見直したりすることに注力します。

最近では、形式的で堅苦しい葬儀ではなく、もっと自由な葬儀を希望するお客様が増えています。故人と過ごす最期の時間をより良いものにするために、故人の好きだった曲を葬儀でかけたいという方も多くいます。このようなお客様のニーズに応えるために、内製の大型スピーカーの増産・設置を進めていきたいと思っています。

そのほか、レトルト食品や家具、看板などをつくる弊社の技術を、自社のためだけでなく、OEMなどを通して他社のために活かしていきたいです。

ーー最後に、今後のビジョンや展望をお願いします。

山田朗弘:
弊社は平塚市を中心に葬儀会場の出店を進めてきましたが、今後は近場のエリアで出店をさらに拡大していきます。小田急沿線や東海道沿線の店舗数がまだ人口に対して少ないので、このエリアを重点的に拡大していきたいです。

また、弊社は冠婚葬祭業の会社でありながら、ものづくりで内製化も行うなど多様な取り組みを行っている会社です。こういった弊社の環境で活躍できる、柔軟な考え方の人材を育成することが今後は重要になってきます。

実際に弊社には、冠婚葬祭のディレクターとして入社したものの、入社後にサイト制作の勉強をして、会社のサイト制作を手がけている社員もいます。途中で部署を変える「社内転職」の取り組みも行いながら、社員がそれぞれの適性を活かして働けるよう取り組んでいきます。

いろいろなことに挑戦して自分の可能性を広げたい方にとって、弊社は非常に魅力ある会社です。また、技術を向上したい社員を応援する環境が整っている会社でもあるので、そういった弊社の特色に興味を持ってくださる方とともに働けると嬉しいです。

編集後記

平安レイサービスの内製化への取り組みは、コスト削減のために始めたのはもちろんだろうが、根底に「お客様に求められるサービスを提供したい」という思いがあることが取材を通して伝わった。

今後は同社の内製化技術をより拡大し、OEMなどで外部にも展開するとのことで、一体どのような商品が市場に広まるのか楽しみだ。

山田朗弘/1973年神奈川県生まれ、神奈川大学卒業。1996年株式会社ディスコ入社、1999年平安レイサービスの子会社に入社し介護部門を担当。その後平安レイサービス株式会社へ転籍し、葬祭部門の事業部長、事業本部長、管理本部長などを歴任し2011年取締役就任、2018年代表取締役専務取締役就任、2023年代表取締役社長就任。