
株式会社日本能率協会マネジメントセンターは「成長に、寄り添う。」というパーパスのもと、学びのデザイン事業(人材育成支援、出版)、時間<とき>デザイン事業(手帳)で企業や個人の成長をサポートしている。中でも同社が注力する「学びのデザイン」では、個人が望むキャリアや働き方を実現するために必要なスキルの習得を支援。「時間<とき>デザイン」では単なるスケジュール管理を超えて、人生を豊かにする「時間<とき>デザイン」の提案を行っている。対話を重視し、顧客のニーズに応える事業を展開する代表取締役社長の張士洛氏に話をうかがった。
マーケティングの世界で磨かれた経営者の視点
ーー貴社に入社した経緯について教えていただけますか?
張士洛:
前職の会社が経営危機に陥ったことがきっかけです。結婚して子どももいたため、社団法人や財団法人などの安定した組織で働きたいと考え、一般社団法人日本能率協会に入職したのです。入職後はマーケティング事業部門に配属され、優良企業のマーケティング担当者の会員セミナーを企画・運営したり、大企業のエグゼクティブが名を連ねる会員制度の事務局も務めました。著名な教授やコンサルタントなど、マーケティング界の重鎮が集う場で業務を行うという貴重な経験を積みましたね。
1991年に日本能率協会の人材育成・出版・手帳事業を集約し、分離独立して日本能率協会マネジメントセンターが設立されました。そのタイミングで弊社に転籍した後は、研修事業や新規事業開発などさまざまな部門を経験しました。その後、2007年の取締役就任を経て、代表取締役社長に就任したのが2018年のことです。
ーー社長就任後はどのようなことに取り組みましたか?
張士洛:
社長就任後にまず取り組んだのは企業理念の刷新です。企業がしっかりと成長していくためには社員が共感し、働きがいを感じられる理念が不可欠だと考えたのです。
私は日本経営品質賞の審査員を担当していた時期があり、そこで多くの企業を見てきた経験から、「対話」の重要性を強く認識していました。優れた企業は社内の対話が活発で、本質的な議論ができる組織文化を持っています。
この「対話主義」を弊社にも取り入れ、役員や社員との対話を通じて会社の方向性を決める組織にしようとしたのです。理念を言葉で終わらせず、日々の対話を通じて実践していくことが私の経営スタイルです。
顧客の成長を最大化する3つの事業領域

ーー貴社の事業内容について教えてください。
張士洛:
弊社は現在3つの事業を展開しています。1つ目は人材育成支援事業です。企業の人事部門や人材開発部門に対して、社員の能力を高めるためのプログラムを提案しています。お客様の経営状況や課題を見極め、研修やeラーニングなど、さまざまな学習メディアを組み合わせて企業の人材育成をサポートしています。
2つ目は出版事業です。知的ニーズに応えるビジネス書をはじめ、基本から実践まで学べる実務書や専門書、各種資格や検定試験に役立つ参考書・問題集に至るまで、幅広い世代に求められる多彩なジャンルの書籍を手がけています。ビジネス書は難しいことをわかりやすく伝えるために、漫画で伝える本を多数出版するなどの工夫もしています。また、最近では子ども向けの教育書にも注力しており、幅広い年齢層の読者がいます。
そして3つ目が手帳事業です。「NOLTY(ノルティ)」ブランドを展開しており、学生からビジネスパーソン、シニアまで幅広い方にご愛用いただいています。最近は手帳を単なる予定を書く道具としてではなく、「時間をどう使うか」「毎日をどうデザインするか」という視点で商品開発を進めています。
ーー貴社の強みはどのような点にありますか?
張士洛:
弊社の強みは「顧客起点」に徹底的にこだわっている点です。単に商品やサービスを提供するだけでなく、お客様がどのような課題を抱え、どのように成長したいのかを深く理解するよう努めています。人材育成事業では企業の人材戦略に、出版事業では読者の知的好奇心に、手帳事業では時間の使い方に、それぞれ寄り添いながら価値を提供することを大切にしています。
「挑戦と変化」で未来を切り拓いていく
ーー今後の事業展開について、どのようなビジョンをお持ちですか?
張士洛:
私たちが2030年に実現すべき道標として、JMAMグループ2030ビジョンを策定しました。一人ひとりの「自分らしい」成長に寄り添い、ありたい姿に向かって挑戦できる社会の実現に向けて、既存事業や新規事業を大きく動かし、改革を進めています。
加えて、海外展開にも力をいれていくつもりです。特に手帳事業では、日本のトップブランドとしての品質とノウハウを活かし、グローバル市場での存在感を高めていく方針です。
ーーそうした目標の達成に向けて、どのような人材を求めていますか?
張士洛:
弊社が求めるのはイノベーションを起こせる人材です。常識を疑い、新しい視点で物事を見られる方、多様な人と深い対話ができる方を歓迎します。これまで培ってきた「安心と安定」の文化に「挑戦と変化」の風を吹き込み、顧客起点でイノベーションを起こせる仲間との出会いを楽しみにしています。
編集後記

張士洛/1960年生まれ。1986年、社団法人日本能率協会へ入職。1991年、株式会社日本能率協会マネジメントセンターへ転籍。人材育成支援事業の本部長を経て、2007年に取締役に就任。2014年、専務取締役 兼 株式会社NOLTYプランナーズ代表取締役社長。2018年より、日本能率協会マネジメントセンターの代表取締役社長に就任。