※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

企業再生・事業再生コンサルティングを手がける株式会社ターンアラウンド・マネジメント・パートナーズの代表、小塚祥吾氏は、「鉄人社長」と呼ばれる。音声SNSで早朝5時の生配信を3年以上続けたことからついた異名だ。その一方で、複数の上場企業で経営を学び、CFOとして会社を上場廃止の危機から救うなど、事業再生のプロとしての実績も積み重ねてきた。そのバイタリティと豊富な経験を武器に、2024年に立ち上げたコンサルティング企業で何を目指すのか。そのビジョンに迫った。

経営の最前線で学んだ「数字で語る」ことの重要性

ーーこれまでのご経歴を教えてください。

小塚祥吾:
若い頃から「経営者になりたい」「早い時期に役員になって社長になりたい」という夢を持っていました。慶應大学卒業後は、大手コンサルティング企業の内定を断り、ある上場企業への入社を決意しました。それを決意したのにはきっかけがありました。

実は、その会社の内定をいただくときに、当時の社長が私と同じ熊本出身で、「ご縁があるね。私の隣で経営を学びなさい」と声をかけてくれたのです。そこで、「コンサル企業より、現場で実学を学んだほうがよい」と判断しました。

入社後は、50〜60名いた新卒入社組の中で、私だけが本社勤務となり、配属先の経理部では、本来はベテランが担当するような決算開示資料の作成を1年目から任されました。企業の経営成績を示す有価証券報告書や決算短信などです。さらに2年目からは、グループで80ほどある事業部すべての予算編成も担当しました。

どちらの仕事も新米の私には経験がありません。ですから、独学で知識を身につけ、会計士の先生に書類の書き方を教えられるほど詳しくなりました。また、予算編成のためにExcelで専用システムを自作するほど没頭したのです。

こうした経験を2〜3年続けるうちに、ある確信が芽生えました。「経営とは、数字で語ることが大切だ。それさえできれば、どんな事業もうまくいくのではないか」と。この仮説を自分で検証したくなり、29歳でその会社を辞め、その後は上場企業を3社渡り歩きました。

「困っている人を助けたい」と事業再生を仕事に

ーーその間は、どんなことをなさいましたか。

小塚祥吾:
経営分析では、決算書や財務諸表などの数字を見ます。その際に、「なぜこのような数字なのか」「この部門はなぜ利益率が低いのか」といった現場で起きていることを数値化し、言語化するのです。数値化と言語化、この2つができれば、うまく回っていない企業も事業再生できると考えました。

実際に、私は最後に勤務した会社でCFO(最高財務責任者)を務め、その考えを実践しました。会社が上場廃止の危機に陥ったときに、この方程式と最初の会社での経験をもとに奔走し、1年間で10億円のキャッシュフロー(企業におけるお金の流れ)を改善して危機を回避したのです。

また、その会社の子会社で、大口取引先を抱えているのに経営がうまくいっていない企業がありました。その企業を買収し、5年間で経営を健全化した上で売却したのが1年近く前のことです。

その後、それまでの疲れをとろうと3〜4か月ゆっくりしていたところ、ヘルスケアアプリで知られる「FiNC」や元サッカー選手の本田圭佑氏も参加したファンド「WEIN」などを立ち上げた起業家の溝口勇児氏から声をかけられました。「YouTubeで経営エンターテイメント番組を始めるので、出演しませんか」と誘われ、レギュラーとして参加することになったのです。

また、以前、音声SNS「Clubhouse」で毎朝5時からの配信を1100日間続けた結果、3年間ずっと集客数日本一だったこともあり、徐々に経営相談が寄せられるようになりました。

私は、子どもの頃から「困っている人を助ける」を人生の軸にしてきました。さまざまな相談に乗るうちに「ビジネスで困っている人を助けたい」「事業再生を仕事にしよう」と決意し、2024年10月に弊社を設立したという経緯です。

「傷口に塩をすり込む」スパルタなコンサルティングを全国に

ーー事業再生とは、具体的にどのようなことをするのでしょうか。

小塚祥吾:
「スパルタ事業管理」という、社長と幹部向けの育成サービスを提供しています。これは、契約した企業の社長と経営幹部、そして私が同じLINEグループとシステムを共有するものです。私がファイナンシャルのプロとして、事業管理を毎日サポートします。

日々の数値目標や進捗を毎日管理することで緊張感が保たれ、社長も幹部も成長します。トップが成長すれば社員も幸せになれる、というのが私の考えです。そのため、ビシバシ厳しく管理しています。私を含めて多くの人は自己管理ができません。「強制と監視がなければ人は育たない」とこれまでの経験から確信しています。

ーー今後の展望を教えてください。

小塚祥吾:
課題のない会社はありません。「うちは特に問題はない」という会社ほど、実は山ほど課題を抱えています。私はそういう会社からも困りごとを深掘りして聞き出し、サポートします。公式プロフィールでは私のコンサルティングを「傷口に塩をすり込む指導」と表現していますが、人の成長には痛みが伴います。

ですから、この厳しい「スパルタ事業管理」をより多くの企業に提供し、4年後には全国2000社にまで広げたいと考えています。その実現に向けて、現在はコンサルタントの採用活動に力を入れています。大手のコンサルティング企業には向上心や意識が高い人材がいるため、その層を対象に勉強会も開いています。営業担当者も複数採用し、2025年には一気に販路を拡大していく計画です。

編集後記

エネルギッシュ、そして圧倒的なリーダーシップと行動力。それが小塚氏から受けた印象だ。「スパルタ事業管理」について、「毎日ビシバシ指導します」と宣言する。自己管理が苦手な身からすれば、しり込みしてしまいそうだ。しかし、だからこそ「この人についていけば変われるかも」と、カリスマ性に惹かれる人は多いだろう。小塚氏のコンサルティングでどれほどの日本企業が再生を遂げるのか、今後に期待が膨らむ。

小塚祥吾/1977年熊本県生まれ。慶應義塾大学卒業後、大手上場企業数社にて管理業務に従事。再生医療分野の上場企業で取締役CFOを務めたのち、債務超過の企業を1円で買収。2019年にレギュラス株式会社を設立。同社を吸収合併し、5年で財務基盤を構築し一定の受注を獲得した後、2024年6月に売却。同年10月に株式会社ターンアラウンド・マネジメント・パートナーズを設立。