
オリジナリティあふれるギフト製品で、日本のギフト文化に独自の価値を提供してきた株式会社プレーリードッグ。同社は1993年の創業以来、時代のニーズに合わせた商品企画で成長を遂げてきた。現在は産地直送のフードギフトにも注力し、ギフトならではの付加価値の創造に挑んでいる。代表取締役の松岡良幸氏に創業の経緯や今後の展望を聞いた。
ブランド戦略のノウハウを武器に独立
ーー創業に至るまでの経歴をお聞かせください。
松岡良幸:
私は大学在学中から、「いずれ自分で会社を立ち上げたい」という思いがあり、そのために商社や販売の仕事を経験したいと考えていました。そこで卒業後は、企画販売を手がける大手繊維専門商社に就職したのです。
当時のファッション業界では、ヨーロッパの有名ブランドのライセンスを取得して、日本で販売するという手法が主流でした。私も類似した手法でギフト商品の販売を手がけており、そのような企画販売を習得していくうちに、「このノウハウは自分で事業を立ち上げる際に活かせるな」と考えるようになったのです。
上司に独立したいと相談したところ、快く送り出してもらい、1993年に弊社の前身である有限会社プレーリードッグを立ち上げました。
ーー独立後は、どのような出来事がありましたか?
松岡良幸:
前職で学んだ海外ブランド商品の企画販売の手法や、ライセンスの取得方法などのノウハウがあれば、問屋やメーカーに対して主導権を握れると考え、その手法を用いてビジネスを展開していきました。当時は就職氷河期と言われる時期でしたが、幸いなことに優秀な社員を採用でき、会社を成長させることができたのです。
また、創業5年目ごろに、前職の得意先で営業職をしていた、弊社に転職したいという方を採用しました。彼は独特のセンスを持っており、さまざまな企画を温めていました。その中の一つが、「ケーキタオル」です。
もともと業界には、タオルをお洒落な形にして販売する商品自体はありましたが、それほどリアルな形にはできていませんでした。しかし、彼の企画したケーキタオルは非常にリアルで、本物そっくりで美味しそうでした。すぐに得意先の展示会に出すことにしました。
本物のケーキを入れる冷蔵ケースを用意してトレイにケーキタオルを並べたところ、来場者から「まるで本物のケーキ屋のようだ」とご好評をいただきました。会場でお客さまが驚かれる様子を見て「これは海外でも売れるんじゃないか」という手応えを感じ、海外の展示会に出品することを決意したのです。
私たちは、「感動を贈りたい!」というスローガンのもと、贈る相手のことを考えて、一人ひとりに喜んでいただける商品の開発を目指してきました。一時は世界50カ国で販売されたケーキタオルは、国籍や人種を越えて人々の心を和ませることができたと自負しています。
産地直送のフードギフトで食品事業の成長を目指す

ーー現在は、どのような事業に注力していますか?
松岡良幸:
現在は、創業時から培ってきたギフト販売のノウハウを活かして、フードギフトの販売を強化しています。2020年からは、売上の70%以上を占めていた贈答用のフォーマルギフトの売上が低下したこともあり、売上アップの見込みがあるフードギフトに力を入れることにしたのです。
繊維製品と違って食品は品質が一番大切で専門知識も必要です。本気で食品に取り組んでいく企業の姿勢を取引先に理解してもらうために自ら農業を始めることにしました。私は三重県津市に住んでいて周りは田んぼが多くて「三重コシヒカリ」の美味しいお米が採れる土壌に恵まれていたこと、次男が農業を始めたこと、縁あって地域の1人の兼業農家から田んぼを5枚で合計1.2ヘクタールを借り受けて農業機械も田植え機以外はすべて貸してくれました。(田植え機は壊れていたのでJAから自分で中古車を購入)初年度から弊社のEC事業部のアイデアで『白米・玄米・5分つき・7分つき・玄米』と自分で選べる精米』を特徴にして三重コシヒカリのネット販売店をスタートさせました。
ーーフード事業を展開する中で、特に難しさを感じることは何でしょうか?
松岡良幸:
アパレル商品と比べると、食品は利益が出にくいと感じています。アパレルやファッション関係の商品は付加価値を付けやすい商慣習があるのですが、フード事業では、問屋は淘汰されていてスーパーが消費者に安くて美味しいものを提供していて、新規参入は難しいのが現状です。
また、魚などは相場によって仕入れ価格が変わりますが、ギフト・カタログ業界では、仕入れ値が上がっても販売価格を変更することができません。
弊社は、品質と鮮度の良さを大切に考えて、四季折々の日本の食品ギフトを全国で優秀な生産者から厳選して、消費者にお届けすることを目指し、新たに取り扱いを始めたオリーブオイルを使った水産加工品を企画・開発したほか、ISO22000の取得を目指すなど、食の安全性の課題にも取り組んでいます。これらの取り組みによって、フードギフトの売上が伸びることを期待しています。
やりたいことの実現に向かって進む人がほしい
ーー最後に、貴社で働きたいと考えている人に向けてメッセージをお願いします。
松岡良幸:
弊社では、若手社員の意見やアイデアを採り入れながら新たな企画を考え、試行錯誤を繰り返しています。そのため、新しい仕事にチャレンジするには専門分野を自ら勉強することを奨励しています。食品の場合、日本惣菜管理士・食品表示検定を基本として肉・魚・お米・オリーブオイル、すべて専門分野の資格試験に会社が全額負担でチャレンジでき、繊維分野では、タオルソムリエ、靴下ソムリエなど不合格でも再挑戦できます。
また、社内でやりたい仕事があれば自分の想いを皆にプレゼンできるシステムを作っています。こうすることで、常に「誰がどんな仕事をしているか」情報共有し、部門関係なく繋がりをつくることができるのです。毎週、月曜日会議では自分の意見を遠慮なく言い合い、切磋琢磨しながら最後は皆で協力して売っていく協力するチームワークを大切にするように努めています。
今後もチャレンジ精神を尊ぶ社内風土を醸成し、社員一人一人が個性を発揮できて楽しい仕事ができる会社を目指し、これからも世の中に向けて価値ある商品を提供していきたいです。
編集後記
社員のアイデアを採用し、展示方法まで工夫を重ねた話からは、ものづくりの楽しさが伝わってきた。現在は食品分野という別の領域に挑戦しているが、そこにも独自の価値を見出そうとする姿勢は変わらない。「失敗と成功を繰り返してきた」という言葉には、チャレンジを恐れない松岡社長の本質が表れていた。

松岡良幸/1959年生まれ。大学卒業後、大手繊維商社に勤めた後、1993年に有限会社プレーリードッグを創業。1996年に株式会社プレーリードッグに改組。主に寝具やタオルなどの繊維製品のギフト製品の企画を手がけ、2004年には「ケーキタオル」で業界の注目を集める。その後もデザイン性、機能性あふれる商品を数多く手がけ続けている。