※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

1925年に創業された中山福株式会社。キッチン・ダイニンググッズを中心に、さまざまなホームユース製品を取り扱う専門商社だ。大阪・東京に本社を構え、9つの物流拠点で全国を網羅し、迅速かつローコストな配送を実現していることが特徴である。代表取締役社長の橋本謹也氏に、創業100周年を迎えた企業の強みや今後の展望をうかがった。

バブル期の銀行で営業を経験したのち、老舗問屋を改革する社長へ

ーー入社の経緯や社長就任後の取り組みをお話しいただけますか。

橋本謹也:
大学を卒業後、営業職として入社した銀行で、いろいろな業界の経営戦略にふれることができました。

2017年に弊社へ出向してから、5年間は本部職だったので、お取引先や従業員との接点が少なかったと言えます。そこで、社長就任後はメーカーの工場や支店の視察、全社朝礼の実施に注力し、なるべく自分の考えや方針を対面で伝えることを心がけてきました。

私が外部から来た人間だからこそ、時代の価値観に合わせて労働環境の見直しや社内の意識改革にも切り込んで行けたと自負しています。また、卸売事業が軸である「中山福」のために、ものづくりを行ってきたLIVPLUS(旧ベストコ)を、よりものづくり企業として強化するために新体制を構築しました。

物流ネットワークと企画・開発力を誇る「ホーム用品の専門商社」

ーー事業内容と貴社の強みを教えてください。

橋本謹也:
6万点以上のホームユース製品を扱う専門商社として、北海道から沖縄まで全国9ヶ所に物流倉庫を備えています。「メーカーから仕入れた製品を小売業者に届ける」「卸先の在庫を保管する」「お得意先に製品情報を提供する」この3つが主な業務で、卸先は大手ホームセンターやスーパーマーケット、専門店など多岐にわたります。

これまで私たちのような問屋は、中間流通業者としてモノを運ぶだけで事業が成り立っていましたが、小売体制の変化により、卸売業としての存在価値を高めることが必要になりました。弊社でも、地域別の売れ筋や市場の動向を分析し、消費者ニーズに合わせた売り場づくりを取引先へ提案するなど、サービスの幅を広げています。

また、全国から取引先を招く、年2回の見本市も弊社のビジネスモデルに欠かせません。約120社ものメーカー製品の展示や戦略提案ブースを開設し、商社の活性化に貢献しています。

ーーグループ会社の解説もお願いします。

橋本謹也:
M&Aや社名変更を経て、現在は「インターフォルム」「グリーンパル」「LIV PLUS(リブプラス)」という3つのグループ会社があります。

インターフォルムは、デザイン性の高い照明や時計を扱う企画・開発の会社です。中山福とは異なる高価格帯の商材がメインで、卸先もおしゃれな雰囲気の専門店が中心です。

グリーンパルは、収納グッズ・園芸用品を得意とするプラスチック製品のメーカーです。OEMを主な事業とし、国内での製造を徹底しています。

そして、「日々の暮らしをちょっと素敵に」というコンセプトで、キッチン・ダイニング用品を展開している会社がLIV PLUSです。自社ブランドである「ベストコ」やOEM商品の開発を手がけるほか、専門店・EC向けアイテムも取り扱っています。

ーーモノづくりにおける強みもお聞かせください。

橋本謹也:
100年にわたる卸業で培ったノウハウと企画力をベースに、グループが展開するものづくり事業・EC事業をあわせた独自のバランス感覚が強みだと言えるでしょう。企画から販売までを網羅している弊社では、付加価値をつけた高価格帯のアイテムなど、差別化を図った商材を展開することが可能です。

たとえば、軽さにこだわった「軽すぎるフライパン」や、1度に3品を調理できる仕切り付きフライパン「早わざ仕切りフライパン」は、自社ブランドの中でも大ヒット商品となっています。

モノづくり事業を強化し、軸である卸売事業を次のフェーズへ

ーー経営者として感じている課題はありますか?

橋本謹也:
これまでは、少数精鋭の営業担当がスタープレイヤーとして会社を引っ張るスタイルでした。しかし、消費者ニーズの多様化に対応するためには、社員一人ひとりの意見を取り入れることも必要でしょう。全社員が主役となる組織を目指し、まずは風通しの良さを高めていきます。

また、ここ数年で従業員の男女比率が変化したことから、女性が働きやすい環境づくりにも励んでいます。休暇制度の充実に加えて、今後は働き方の選択肢も増やしたいところです。

ーー今後の展望をお聞かせください。

橋本謹也:
2025年3月に創業100周年を迎えた弊社は、新たに「100年を超えて新しい中山福へ」というスローガンを掲げました。各社のノウハウ共有によるシナジー効果で、グループ全体の事業を強化し、「卸売の枠を超えた存在」として価値のある商品を安定的に供給していくという決意表明です。

また、物流拠点を活かしたモノづくりの強化としてスタートした、自社ECサイトの運営にも注力していきます。SNSを通してファンを増やしたり、リアルな声を商品開発に反映したり、価値のある商品を届けるための様々な取り組みを行っていく予定です。

編集後記

高齢化が進む中で、フライパンは焦げ付きにくさ以上に軽さが重視されるなど、時代に合わせて移り変わる消費者のニーズ。中山福の強みと可能性を見極めた橋本社長は、「めまぐるしく変化するトレンドを追うより、自分たちで商品を見つけて、育てていく会社でありたい」と力強く語った。身近なホーム用品で暮らしを支えてきた企業は、101年目より「人々の暮らしの質」を上げる商品展開に挑んでいく。

橋本謹也/1964年生まれ。同志社大学を卒業。1988年、株式会社富士銀行(現:みずほ銀行)へ入行。2017年、中山福株式会社へ出向、2018年に入社。グループ事業部長、管理本部長、グ ループ会社の社長を歴任し、2022年に代表取締役社長に就任。