
日本は、少子高齢化による人手不足や技能者の減少、さらに製品寿命の短縮化やカスタマイズ生産の増加など、多くの課題に直面している。
こうした環境下で、創業以来70年以上にわたり顧客から厚い信頼を得てきた株式会社吉田。同社は、時代の変化に対応しつつ、社員一人ひとりの成長を促進する新たな評価制度を導入し、さらなる飛躍を目指している。今回は、代表取締役社長の吉田良治氏に、これまでの歩みと新たな取り組み、そして未来への展望についてうかがった。
営業最前線で培った経営哲学と組織運営
ーー代表取締役になるまでの経歴を教えてください。
吉田良治:
祖父が創業し、父を経て私が三代目として株式会社吉田を継承しました。創業から70年以上の歴史を持つ当社ですが、もともとは兄が後を継ぐ予定でした。大学時代に私が後継者となることが決まり、2003年に大学を卒業後、東証プライムの機械工具卸商社に入社。営業職として7年間勤務し、販売の難しさを痛感するとともに、提案が実を結んだときの喜びも学びました。2010年に株式会社吉田へ入社し、営業職、総務部長、本部長を経て、2018年に代表取締役社長に就任。営業活動に加え、社内の業務改善にも力を入れ、社員が働きやすく、営業しやすい環境づくりを推進してきました。
ーー前職の経験のなかで、今も役立っていることはありますか。
吉田良治:
「商談の場に座っていただくことは当たり前ではない」と、営業時代に痛感しました。先方にアポイントを取り、大切な時間を割いていただくからには、その期待に応える情報や価値を提供することが不可欠です。そのため、事前の準備や段取りには細心の注意を払って臨んでいました。
この姿勢は、今も大事にしていることのひとつです。たとえば社内会議や社員の時間を割く打ち合わせにおいても、できる限り無駄を省き、有意義な内容となるよう徹底しています。人と関わる仕事においては、参加者にとってプラスとなる効果を生み出す場をつくることが重要だという考えを常に持っています。
専門技術と顧客理解で確立した存在意義
ーー貴社の事業内容について教えてください。
吉田良治:
弊社は、工作機械や切削工具をはじめ、物流機器、油空圧機器、FA機器、環境機器など、生産現場で使用される設備や機器をトータルに取り扱っています。そのほか、商品の販売以外に生産に不可欠な開発・設計・製作・メンテナンスを請け負っています。特に、特殊工具や専用治具などの特殊品を得意としており、一品一様の特注品にも柔軟に対応できる点が特徴です。
事業の中心は既存のお客様対応で、物理的な距離の近さを活かした迅速かつ、きめ細かな対応に注力しています。これにより、自動車や二輪車メーカーをはじめとする大手企業様との安定した取引を続けています。お客様のご要望に応じたカスタマイズの提供が得意であり、細部にまでこだわった高品質な成果をお届けしています。単なる業務の代行で終えるのではなく、お客様の期待を超える最適なソリューションを提供することを目指しています。
ーー貴社の強みはどのような点にありますか?
吉田良治:
創業当初から培ってきた高度かつ専門的な技術提案が、私たちの最大の強みです。静岡県という土地柄、オートバイや自動車メーカー、さらに楽器や光産業、工作機械など、多岐にわたるお客様と取引があります。工場現場で使用される生産資材に関するノウハウや、工作機械に関する技術的な課題への対応など、お客様の目標達成を支援するためには、専門的な知識と経験が欠かせません。
弊社では、専任チームが購入後の活用を考慮した最適な支援体制を整えています。日々進化する技術を学び続ける姿勢を持ちつつ、これまでの70年で積み上げたノウハウの蓄積をお客様に提案できる仕組みが、弊社の強みだと考えています。
ーー吉田社長が大切にしていることをお聞かせください。
吉田良治:
「会社として社会に貢献できているのか」を常に考えています。私たちの仕事が本当にお客様の役に立っているのか、その価値に見合う仕事を社員全員が全うしているのか、と自問し続けています。
弊社は地元企業との取引が多いため、人とのつながりが事業の要です。「真摯に対応してくれてありがとう」と思っていただけるよう、経験や、知識技術を最大限に活用し、プロフェッショナルとしての仕事を貫くことにこだわり続けたいと考えています。
社員の成長とコミュニケーションを重視した組織づくり

ーーどのような組織づくりをされていますか。
吉田良治:
社員同士の円滑なコミュニケーションが生まれる職場づくりを心がけています。商社としてさまざまな業務がある中で、多くの部署が密に連携をとりながら仕事を進めることが重要です。気軽にメッセージのやり取りをし、部門を超えたミーティングを行い、「忙しそうで声をかけづらい」「連絡が取りにくい」などの理由で、仕事が滞らないように工夫しています。
具体的には、バーベキューやスポーツ観戦などのイベントを通して社員間での絆を深めたり、気軽にメッセージを送れるコミュニケーションツールを導入したりしました。こうした小さな取り組みの積み重ねにより、社内のコミュニケーションは以前よりも活発になり、アットホームな雰囲気が醸成されています。
また、社員が前向きに働ける職場づくりを進めるために、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」の基準をクリアし、今後も社員の健康をサポートする取り組みを強化していきます。
私が代表取締役に就任してから取り組んだことのひとつが、評価制度の再編です。「もう少しお客様の訪問回数を増やせば給与が上がったのに」といったように、後から言われて悔しい思いをすることがないよう、当社では「成長支援シート」を評価前にお渡ししています。
このシートにより、どのような行動や成果が成長につながるのかが事前に明確になっているため、自分の努力した成果が実感しやすくなっています。また、評価と給与が連動しているため、成長もでき、給与も上がり、自分の人生をさらに豊かにできる仕組みを構築しています。
その他にも、上司との面談を3カ月ごとに設けており、どの部分で成長が必要かを相談したり、アドバイスを受けたりする機会を増やしています。
このような仕組みにより、社員の成長状況や次のステップが「見える化」され、モチベーションの向上につながっています。
ーー今後の事業に対する考え方や展望をお聞かせください。
吉田良治:
社会の変化に対応するために、仕入れ先メーカー様との連携を深め、お客様へのご提案の質をより一層高めていくことに全力で取り組んでいきます。弊社の財産は社員の経験と技術提案力です。この強みを最大限に活かすため、一人ひとりがやりがいを持ち、日々チャレンジできる企業であり続けたいと考えています。
編集後記
長年の信頼、技術提案力、専門的な知識を基盤にしつつ、新たな評価制度を導入して社員一人ひとりの潜在力を引き出そうとする姿勢は、製造業界の未来を見据えた先進的な取り組みだ。
顧客のニーズを的確にとらえ、スピード感をもって具現化できるのは、営業時代に鍛えられた経験と鋭い洞察力によるものだろう。変革が求められるこの時代において、顧客や社員へのリスペクトを忘れない吉田社長のリーダーシップがもたらす、新たな飛躍に期待が高まる。

吉田良治/1980年静岡県生まれ。2010年に株式会社吉田に入社。2018年に同社代表取締役社長に就任。