
2025年7月、株式会社impactTVから商号を変更し、新たなスタートを切った株式会社impact mirAI。同社は「ヒューマンリソース(人的資源)」と「デジタルソリューション」という二つの強力な資源を融合させ、人手不足やDX推進といった現代社会の重要課題に挑む。30年ぶりのインフレ経済という大きな変化を「ビッグチャンス」と捉え、力強く舵を取るのは代表取締役社長の川村雄二氏。その情熱の源泉は、アウトドアブランドの営業で培った徹底的な「現場主義」と、39歳で自らを追い込み、覚悟を決めたベンチャーへの挑戦にあった。成長を追求し続ける経営者の軌跡と、変化する時代への挑戦について聞いた。
大企業とベンチャー2つの経験で培われた経営の礎
ーー前職でのご経歴についてお聞かせください。
川村雄二:
大学卒業後、株式会社ゴールドウインに入社し、アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」事業を15年間担当しました。卸売先の小売店様への営業(ホールセール)と、自社の直営店(リテール)の両方を経験しました。直営店に良い商品が並べば、卸売先からは「なぜ自分たちに商品を回してくれないのか」という声が上がる。まさに板挟みの状態でしたが、この経験を通じて社内外の利害を調整し、物事を前に進める折衝力が鍛えられました。お客様の元へ足を運び、汗をかく。アナログなコミュニケーションが信頼を生むことは、現場での大きな学びとなりました。
当時、在庫管理はアナログが主流で、アナログにはアナログの良さがありました。たとえば、営業担当が店舗に足を運び、在庫を実際に見て確認し、店長と直接コミュニケーションを取る必要がありました。
しかし今は、POSシステムで在庫が自動管理されて現場に行く必要がありません。その結果、人とのつながりというアナログの良さが失われつつあります。だからこそ私は、「現場・現物・現実」の三現主義を重視しています。トップ自ら現場に足を運ぶことで、社員に対して大切にしている価値観を直接伝え、組織全体に浸透させていく。さらに、自分自身が現場を見続けることで、経営と現場との間に乖離が生まれないようにしています。デジタル全盛の今だからこそ、こうした姿勢が組織の一体感を生み、結果としてお客様への提供価値を高めることにつながると考えています。
ーーその後、貴社に入社されてからのことをおうかがいできますか。
川村雄二:
順調にキャリアを積んでいましたが、ベンチャーで自分の力を試したくて、39歳で株式会社シアーズ(現・株式会社impact mirAI)に転職しました。これまでとはまったく異なる環境に飛び込んだわけですが、不退転の覚悟で猛烈に働きました。そのおかげで圧倒的な成績を出すことができ、取締役や社長代行を経て、2017年に代表取締役に就任しました。大企業で培った経験に加え、ベンチャーでの徹底した実力主義の世界を歩んだことが、今の私を形成しています。
社長に就任した当時、親会社であるインパクトホールディングス(旧・メディアフラッグ)グループの事業の主軸は、ヒューマンリソース事業でした。しかし、私はデジタル系の事業を担っていました。
2023年5月、グループが新たに株式会社impact・eを買収。この会社もimpactTVと同様に、デバイスやソフトウェアを扱うデジタル系の企業でした。事業内容に親和性があったことから、私が代表取締役を兼任することになりました。これが、グループ内のデジタル事業を本格的に集約し、強化していく大きな転機となります。
2024年1月、創業者が第一線から退き、第2創業のタイミングを迎え、2024年4月から現在の体制がスタートしています。
ーー貴社の設立経緯についてお聞かせいただけますか。
川村雄二:
日本経済は30年以上続いたデフレを脱し、インフレへと大きく転換しました。これは私たちにとって、社会や企業の課題を新しい形で解決できる大きなチャンスだと考えています。特に顕著なのは、人手不足とDX需要の高まりです。これらを同時に解決するには、人的リソースとデジタルソリューションを切り離して提供するのではなく、融合させて提供することが不可欠です。
従来から人材サービスに強みを持っている親会社インパクトホールディングスグループとデジタル事業に強みを持つimpactTV、その両輪を集約し、次の成長ステージへ進むために設立されたのがimpact mirAIです。現在、グループ全体で従業員約430名、売上高は約90億円規模に成長しています。ここからさらに、人とデジタルを融合させた新しいソリューションを社会に提供していきます。
DXと人的資源の融合 唯一無二のワンストップサービス

ーー貴社の事業内容、強みについて教えてください。
川村雄二:
弊社は、「DXソリューション」と「HR(ヒューマンリソース)ソリューション」という2つの事業を融合させ、企業の課題解決をワンストップで支援する会社です。「DXソリューション」では、デジタル技術やIoT機器を活用して、社会や企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進します。具体的には、デジタルサイネージやフードオーダーシステムなどです。
「HR(ヒューマンリソース)ソリューション」では、全国30万人以上の登録スタッフネットワークを活かし、人の手が必要な現場の業務を支援・代行します。具体的には、コールセンターやキャンペーンの事務局運営、ゲームやシステムのテスト・デバッグ代行まで、専門のスタッフによる代行が可能です。これらのデジタル技術と人の力を組み合わせることで、個別の課題だけでなく、店舗運営や企業活動全体の課題解決を目指しています。
この「デジタル」と「人」の両輪を自社グループ内に持ち、統合的に提供できる体制こそが弊社の強みです。多くの企業ではシステム導入と人材支援を別々の会社に依頼するため、調整の手間や責任の分散が課題になります。impact mirAIは、デバイス開発・ソフトウェア提供を担うデジタル事業と、全国規模の人材ネットワークを一体で活用できるからこそ、設計から現場運用までを一気通貫で支援できるのです。
さらに、規模の大きさだけではありません。30万人のネットワークを持つことで、業界や地域の特性に合った最適な人材を迅速にアサインできます。そして「ただ人を派遣して終わり」ではなく、システムや業務フローが現場に根付くまで伴走する。人材ネットワークのスケールと、現場主義に基づく運用力。この両輪があるからこそ、導入効果を最後まで保証できるのです。
加えて、万が一のトラブルにも迅速に対応する体制を整えています。予期せぬ課題が発生しても速やかに解決し、安心して任せていただける。この責任感ある取り組みが、高いリピート率と長期的な信頼につながっています。
今後は、既存の強みを強化させつつ、私たちがまだ気づけていない業界や領域に積極的にリーチしていきたいと考えています。
変化を好機と捉え共に歩む 会社の未来と個人の成長

ーー求める人物像と、未来の仲間に向けたメッセージをお願いします。
川村雄二:
弊社グループでは、大切にする価値観を 3つのバリュー 「TEAM IMPACT」 として定めています。1つ目は、「Impossible? “I’m possible!”(不可能などない。アイデアと工夫で可能にする。)」、2つ目は、「Drive yourself.(待っていてはダメだ。 自ら行動する。)」、3つ目は、「Fail fast,fail forward.(失敗を恐れるな。変化しながら挑戦する。)」です。
弊社ではこの価値観に共感し、成長意欲のある人を求めています。人生の意味は成長することだと私は思います。成長はストレスと背中合わせですが、その環境を楽しみながら乗り越えられる人こそ、これからの社会に必要とされる人材です。
成長を望むなら、挑戦の場に身を置いてください。インフレに転じた今、私たちが持つ「人とデジタル」という資源は、時代の要請に応える力を持っています。会社の成長と個人の成長は切り離せません。変化を楽しみ、成長したいと強く願う人材にとって、弊社グループは最良の環境になるでしょう。未来を切り開く意欲のある方々と共に、新たな挑戦を続けていきたいと思います。
編集後記
安定したキャリアを捨て、39歳で自ら不退転の覚悟で実力主義のベンチャー企業に飛び込んだ川村氏。その決断力と、そこから代表取締役まで駆け上がった実行力。インフレへの歴史的な転換点を「これ以上ないビッグチャンス」と捉え、人とデジタルの融合で社会課題解決に挑む姿勢。これらは、まさに現代の経営者が持つべき視点といえる。安住を求めず、自らの可能性を信じて挑戦したいと願う人にとって、同社は最高の舞台となるに違いない。

川村雄二/1968年東京都港区生まれ。1992年、法政大学経営学部卒業後、株式会社ゴールドウイン入社。アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」のホールセール営業、直営店SV担当。2007年株式会社シアーズ(現・impact mirAI)に入社。取締役、社長代行・営業部統括を経て、2017年株式会社impactTV代表取締役社長に就任。2023年株式会社impact・e代表取締役社長を兼任。2024年、親会社インパクトホールディングス株式会社 上席執行役員に就任。2025年7月、株式会社impact・e吸収合併にともない社名を株式会社impactTVから株式会社impact mirAIへ変更し、代表取締役社長就任。