※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

女性目線のSNSマーケティング支援を軸に、業界の先駆者として走り続ける株式会社ミンツプランニング。同社は、女性の心を動かす瞬間を捉える独自の概念「ハート・ムーブ・マーケティング」を強みに、数々の企業のプロモーションを手掛けている。大学在学中にインフルエンサーとしての原体験を経て同社を創業した金本かすみ氏は、現在、上場企業グループの一員として代表取締役社長を務める。今回は、金本氏にこれまでの軌跡、事業の核心、そして未来への展望について話を聞いた。

大学時代の原体験が導いた起業への道

ーーまず、金本社長がSNSマーケティングの世界に足を踏み入れた、キャリアの原点についてお聞かせください。

金本かすみ:
大学生のときに、まだ有名なブログサービスが普及する前から個人でブログを運営し、今でいうインフルエンサーのような活動をしていたのが私の原点です。ちょうどその頃に日本でiPhoneが発売されたこともあり、これからは個人が情報発信をして影響力を持つ時代が来ると強く感じました。当時、私の周りには同じように活動する仲間がたくさんいましたので、彼女たちにお仕事を提供できる存在になりたいという思いで、現在の会社を立ち上げたのです。

ーー創業当時から、明確な目標をお持ちだったのですか?

金本かすみ:
そうですね。地元が名古屋なので、当時から東京と名古屋の間にある仕事量の差をすごく感じていました。名古屋の読者モデルたちは東京と比較して仕事が少ない。そこで私が、東京のクライアントと名古屋のモデルたちを繋ぐことで、この状況を変えたいと考えたのです。

多くの女性にしっかりとお仕事を提供できる仕組みをつくることが、創業当初からの大きな目標でした。大学卒業後すぐの起業で、リスクを深く考えていたというよりは、むしろ勢いで挑戦したようなものです。

会社の成長をドライブさせた「3つの転機」

ーー創業から現在に至るまで、会社の成長において特に大きな転機となった出来事は何でしたか?

金本かすみ:
転機は3つあったと考えています。1つ目は、2014年に初めて社員を雇用したときです。私とは異なる強みを持つバックオフィス業務が得意な社員が入社してくれたことで役割分担が明確になり、会社の売上が一気に伸びました。

2つ目は、その後に訪れた赤字経営の時期です。社員が増え、固定費がかさむ中で営業がうまくいかず、自己資本だったため精神的なプレッシャーは相当なものでした。しかし、これを機に、紹介や問い合わせなどの受動的な仕事に頼るのではなく、社内で営業の仕組み化と販路開拓に本気で注力しました。まず「女性目線」を前面に押し出したブランディングを徹底し、SNSマーケティングのターゲットである女性に特化したブランド価値と営業トークをしっかりつくり込むことで、この危機を乗り越えました。

そして3つ目の転機が、2022年の株式売却です。自己資本だけでは限界があると感じ、より社会的なインパクトを生むために、シナジーのある会社と組む決断をしました。これらの転機によって会社を成長させることができ、現在に至っています。

独自の価値を生む「Heart Move Marketing(ハート・ムーブ・マーケティング)」

ーー改めて、貴社の事業内容と、他社にはない独自の強みについて教えてください。

金本かすみ:
企業様のSNSアカウント運用代行を主軸に、企画から撮影、投稿までを一貫して行っています。それに加え、認知を広げるためのインフルエンサーのキャスティングやSNS広告運用、商品のブランディングやウェブサイト制作まで、トータルで支援しているのが特徴です。長く業界にいる実績と、トレンドを的確に捉える社内の仕組みが私たちの強みですが、最大の差別化要因は「ハート・ムーブ・マーケティング」という独自の考え方です。

ーー「ハート・ムーブ・マーケティング」とは、どのような概念なのでしょうか?

金本かすみ:
女性がSNSを見て商品を買うとき、そこには必ず「かわいい」とか「キュンとする」といった、心が動く瞬間があると考えています。私たちはその心の動きをマーケティングで意図的につくっていくことを追求しているのです。

単にフォロワー数でインフルエンサーを値付けするのではなく、その方がどんなファンを持ち、そのファンがどんな投稿を見たら心が動くのか、という企画部分を非常に大切にしています。そのために、月1回「ハート・ムーブ会議」を開き、1つの商品に対してどうすれば心が動くプロモーションになるかを、全員で徹底的に議論しています。

ーーそのマーケティングを実践する上で、インフルエンサーの方々と接する際に大切にされていることはありますか?

金本かすみ:
インフルエンサーの方々自身が「この企画をやりたい」と思ってくれることが、何よりも重要です。その熱量こそが良い投稿の源泉になります。そのため、企画をしっかりと固めて提案することはもちろん、人としての丁寧なコミュニケーションを常に心がけています。機械的にならず、インフルエンサーの方々の気持ちを深く理解した上で企画を立てられる点が、私たちの介在価値だと信じています。

ポジティブな社風を育む行動指針「7Rule」

ーー社員は全員が女性だとうかがいました。理念が浸透したポジティブな組織をつくるために、どのような工夫をされていますか?

金本かすみ:
女性だけの職場というと「ギスギスしているのでは」と思われがちですが、それが全くないのが自慢です。その根幹にあるのが「7Rule」です。「関わる全ての人にHappyを!ありがとうは魔法の言葉」「日々の変化と楽しみ、挑戦を!自分磨きは趣味」といった7つの項目を定めています。そして週に1度、この指針に対して日頃どんな実践をしているかを全社員でシェアする時間を設けているのです。仲間を称え合ったり、得た知見を共有したりすることで、理念が自然と組織に浸透しているのだと思います。

AI時代を見据えた未来と、共に働く仲間への思い

ーー5年後、10年後を見据え、会社をどのように成長させていきたいですか。

金本かすみ:
AIの台頭は、私にとってiPhoneが登場したときと同じくらいの衝撃です。これからは、AIを使いこなすことで、より「誰と働くか」という人間力や考える力が重要になると確信しています。だからこそ、分業制をやめ、社員一人ひとりが自律して仕事を選べる組織を目指しています。会社の規模を急激に拡大するよりも、社員が無理なく、長く活躍できる「サステナブル」な成長が理想です。たとえば、出産や育児をしても安心して戻ってこられる環境を整えることの方が、私にとっては重要です。

ーーそうした未来に向けて、どのような人材を求めていますか?

金本かすみ:
この業界は華やかに見えますが、人と人との間に立つ大変な仕事でもあります。だからこそ、ただ憧れるだけでなく、自己成長に貪欲な、自立した方に来てほしいと考えています。実際に、成果に応じてインセンティブがつく仕組みもあり、意欲のある方が輝ける組織です。採用で一番大切にしているのは、本当に「いい人」かどうか。このポジティブな社風を大切にできる方と働きたいですね。

ーー最後に、この記事を読む読者にメッセージをお願いします。

金本かすみ:
「女性だから」という理由で、何かを諦める必要は全くありません。なぜなら、私たちの提唱する「ハート・ムーブ・マーケティング」は、性別にかかわらず、人に共感し心を動かす瞬間を捉える感性を最大限に活かせるからです。自分らしくありたい、女性であることをポジティブな力に変えたい、という思いに賛同してくれる方がいれば、ぜひ仲間になってほしいです。

編集後記

大学生時代のブログ発信から始まった事業は、インフルエンサーマーケティングの草分け的存在として確固たる地位を築いた。その根底にあるのは、一貫して「女性の心を動かすこと」を追求する姿勢だ。同社が掲げる「ハート・ムーブ・マーケティング」や「7つの行動指針」は、単なる手法やルールではなく、代表である金本氏の原体験から生まれた哲学そのものである。AIの進化を追い風に、さらにしなやかに、強く、そしてサステナブルな組織へと変貌を遂げようとする同社の未来から目が離せない。

金本かすみ/1986年愛知県名古屋市生まれ。愛知淑徳大学を卒業後、2011年に株式会社ミンツプランニングを創業。SNSマーケティングの先駆者として事業を拡大する。2022年に株式を売却し、上場企業グループの一員となった現在も、同社の代表取締役社長として経営の第一線で活躍を続けている。