大手企業向けの基幹業務パッケージソフトウェア(ERP)で高いシェアを誇る製品を持つ株式会社ワークスアプリケーションズ(http://www.worksap.co.jp)。同社が新たに2015年にリリースしたのが世界初の人工知能型ビジネスアプリケーション『HUE』だ。世界で初めて業務システムに人工知能を組み込み、「情報化促進貢献個人等表彰」として「経済産業大臣賞」を受賞するなど、その革新性が評価され国内外でシェアを伸ばしている。

『HUE』をさらに進化させるべく抜擢されたのは、2017年の春に入社した新入社員、嶋田瑞生氏である。東北大学在学中にビジネスゲームを扱う会社を設立したほか、超難関と言われるワークスアプリケーションズのインターンシップでは全国の参加者の中でもずば抜けて優秀な成績を叩き出した期待の若手社員だ。そんな嶋田氏が同社を選んだ理由、そして壮大なプロジェクトを進めていくための原動力に迫る。

「熱く夢を語るおじさん」に心を惹かれた

―御社との出会いについてお聞かせください。

嶋田 瑞生:
大学1年生の時に友人とビジネスゲームの会社を設立し、3年生の時には、地域振興や学生のキャリア形成に関するビジネス団体を立ち上げました。その縁で、世界的な起業家団体であるEO(Entrepreneurs’ Organization)の仙台支部立ち上げ記念パーティーに行く機会があり、そこで弊社CEOである牧野の講演を聞いたんです。周囲の50代の人たちには、「仕事はご飯を食べていくためにするものだ」というような感覚の人が多い中、50歳を過ぎても熱く夢を語る大人をその時初めて目にしました。「こういう人のところで働いたら刺激を得られる、それによって今自分が想像できないようなことが想像できるようになったり、今描けないような夢が描けたりするようになるかもしれない」と感じて、懇親会の時に名刺交換をして「インターンシップに参加したい」と伝えたんです。

牧野さんからは「君のように起業している人は、うちに入社しないで自分の事業をやっていったほうがいい。そのほうが成長できる。きっと入社パスはもらえるだろうから、もしも事業が失敗したら入社パスを使ってうちに来たらいい。」と言われました。むやみに自分の会社を売り込むのではなく、僕自身の成長を考えた言葉にかえって感銘を受け、「絶対参加してトップの成績を残してやる」と思ったのを覚えています。


―牧野CEOの講演を聞いた時、どんな印象を持ちましたか?

嶋田 瑞生:
本当に魅力的で、いい意味で「暑苦しいおっさん」だと思いました。

あれほど熱く夢を語るおじさんを知らなくて、2時間くらいの講演中、吸い込まれるように聞き入っていました。当時はワークスアプリケーションズのことは知らなかったのですが、とにかく牧野さんの人間としての魅力に惹かれました。そして次の日に、頂いた名刺にあるアドレスにメールを送りました。そうしたら数時間後に「牧野です」と返信が来たんです。「新しいものを生み出すには多くの難しい課題が立ちはだかるが、世の中にために是非チャレンジして欲しい! 」と背中を押す一言をくれました 。そこでまた、数千人規模の企業の代表にも関わらず、地方の若者から急にきたメールにきちんと返事をしてくださる姿勢に感動しました。

その後、インターンシップの説明会に参加した時、牧野さんの講演が終わって会場を出ようとしたところで「今、牧野さんは休憩中だろうから、もしかしたらトイレにいるんじゃないか」とふと思ってトイレに戻ってみると、なんと本当に牧野さんがいたんです。「お疲れ様です。あの時の嶋田です」と声をかけたところ、僕のことを覚えていて、説明会の席に座っていることにも気づいていたことがわかりました。そしてその場で、人事の方に紹介してくれました。

インターンシップで感じた先輩社員の優秀さ

―インターンシップに参加された感想はいかがでしたか?

嶋田 瑞生:
インターンシップ中はいくつかの課題が出されるのですが、私が1時間考えて、なお難しいと悩んでいた課題を、あっという間に解いてしまう学生もいました。様々な経歴や能力を持った人たちがいる中で自分の力を試すことができて、とても刺激的な空間でした。また、社員の人に相談事をしたり、課題に対するレビューをしてもらったりすると、淡々と的確な指摘をくれて、すごく頼もしいというか、派手ではないけど問題の本質を見抜く能力のある優秀な人たちが多いなと、最初の1週間くらいで感じた記憶があります。


―入社に際しては他の企業も検討されたのでしょうか?

嶋田 瑞生:
検討しました。ただ、他の企業を見ていく中で、一番素の自分を出している時に評価をしてくれたのがワークスアプリケーションズだったので、そこに惹かれたというのが1つのきっかけです。また、私は「今、自分が新卒でその会社に入社するべきか」を判断する5項目をつくっていて、それに照らし合わせてもワークスアプリケーションズが最も当てはまる企業でした。

「“今”、“自分が”“新卒で”“その会社に”“入社”するべきか」を決める5項目

―その5項目とはどんなものですか?

嶋田 瑞生:
まず、なぜ“今”なのかということについてですが、ワークスアプリケーションズは、すでにシェアNo.1を獲得して安定している『COMPANY』という製品があるにも関わらず、『HUE』というこれまでにない新しい製品の開発に挑戦していくというビジネス面でのタイミングを迎えていました。いわゆる“第二創業期”に関われたら面白いなと思ったんです。また、CEO・COO・CTOの3人の経営陣が50代という、ビジネスパーソンとして一番脂がのっているタイミングでもあり、チャレンジングな仕事に魅力ある経営陣のもとで携わることができるという点で、“今”は十分満たしていると判断しました。

「“自分”が入る意味があるのか」という観点でいくと、ワークスアプリケーションズが一番ありのままの自分を評価してくれたということが大きかったです。それが、“自分以外の他の優秀な人”ではなく“自分が入ることで貢献できるかもしれない”と思えた要素です。

また、「その会社でなくてはならない理由」として、ワークスアプリケーションズは業務システムに世界で初めて人工知能を搭載し、それを世界に広げていくという難度が高いミッションに挑戦しているので、“ほかの会社では知り得ないこと、触れられないこと”に出会えると感じました。

更に「“新卒”でその会社に入る意味があるのか」という点では、弊社には小手先の技術ではなく、難しい問題解決をするにはビジネスパーソンとしてどうあるべきかという文化が浸透しており、そういう姿勢を新卒時代に土台として身に付けたいと思いました。

最後に、起業ではなく「“入社”をする意味」について考えたのですが、「会社の規模という面でも、名だたる大企業が顧客にいるという面でも、こんな会社は自分ではつくれない」と思ったんです。あの3人の経営陣がいたからこそ、この会社ができたのだと。だからこそ、シンプルに「入ってみたい」と思うことができました。同じように色々な企業を検討したのですが、ワークスアプリケーションズを抜くことができる企業はないと思い、入社を決意しました。

新入社員でありながら最高難度の仕事に携わるやりがい

―現在のお仕事内容についてお聞かせください。

嶋田 瑞生:
HUE AC Suiteの債権管理機能を開発するチームに所属し、今後新たにリリースする予定の新機能をゼロから設計しています。私たちが製品のグランドデザインを描いてプロトタイプをつくり、その後、海外の開発チームがグラインドデザインをもとに実際の製品を構築するという流れで、海外のメンバーと密に連携を取りながら開発を行っています。


―どんなところにやりがいを感じますか?

嶋田 瑞生:
若手であっても最高難度の仕事を任せてもらえるところです。採用の時に「若手に最高難度の仕事を」ということを人事の方が言い続けていて、その時は半信半疑だったのですが、入社してみたら本当でした。配属当初に「グランドデザインをつくるのと、実際にコードを打つのと、どちらがいい?」と聞かれて、「グランドデザインをつくりたいです」と答えたら、「今ある機能と、今全くない機能を1からつくるのと、どちらがいい?」とまた質問されたので「ゼロからつりたいです!」と言ったところ、数日後には私と1つ上の先輩と2人で新機能を担当することになりました。新機能によって実現したいことと、その機能によってサポートする業務領域、そして完成までの期限を伝えられただけで、「あとは任せるね」という感じです。どんな機能を作ればユーザーにとって一番便利か、ゼロから自分たちで考えてつくりあげていきました。

その後、自分たちが設計した機能のグランドデザインについて1時間半かけて役員にプレゼンテーションをする機会がありました。一通り説明した後に、マシンガンのように細かくレビューをされて、色々なフィードバックをもらいボコボコになりましたが、入社数ヶ月の社員に役員へのプレゼンテーションを任せてくれるということに、裁量の大きさとやりがいを感じています。

弊社では主体性が尊重されるので、私が「やります」と言えば、先輩や上長も「やってみろ」と言ってくれますし、責任を持ってサポートもしてくれます。しかし、仮に私が諦めたら、最終的に社長がお客様に対して頭を下げることになりかねません。1年目なのでまだまだ能力は先輩社員には及ばないかもしれませんが、それでも責任ある仕事を任せてもらえるので、どんどん成長を実感できます。それが何よりのやりがいだと感じています。

大きな仕事を任せてもらうためにするべきこととは

―そうした事業に抜擢されるような人材になるには、何を心掛けるべきだとお考えでしょうか?

嶋田 瑞生:
弊社は若手に責任ある仕事を任せる文化が根付いていますが、その中でも進んで手を挙げることは大事だと思います。特に新入社員であれば、本当に任せるかどうかは上司が判断することが多いと思います。だからこそ、思い切り手を挙げてアピールをすればチャンスを得られますし、その後より大きな仕事を任せてもらうことに繋がるのではないでしょうか。そこに必要なのは、「やりたい」と言える瞬発力と「面白そうだ」と感じるアンテナの感度です。それに付随して、きちんと成果を意識した取り組みをすることです。弊社は成果を重視するのではなく、そこに至るまでのプロセスを評価してくれます。一度失敗しても再びチャレンジさせてもらえるからこそ、次はどうすればより良い成果を出せるかということを考え続ける姿勢が大切だと思います。

新たなフィールドをつくり出したい

―今後のキャリアについて、どんな道を進んでいきたいですか?

嶋田 瑞生:
今はまだ明確なものはないのですが、30歳までに、弊社の経営に携われる人になっているか、自ら起業し経営者となるか、会社組織から抜けてフリーランスになるか、3つの選択肢からどれを選ぶかを決めたいと思っています。

「サラリーマン生活より起業が楽しい」と言う意見を耳にしますが、私は企業に入ることは面白いと思っています。特に弊社の経営なんて本当に難しいですし、その分やりがいもあると思います。ただ、30歳までに決めるためにも、25歳くらいまでは色々なことに本気で挑戦して、自分に合った道を探す時間にしたいと思っています。


―御社の中で更に挑戦してみたい事業はありますか?

嶋田 瑞生:
弊社には『WithKids』という社内託児スペースがあり、企業内保育事業の先進事例としても注目されているのですが、いずれ『WithKids』のプロジェクトにも携わり、そこで培われたノウハウを使って、社内託児スペースを導入したいと考える他の企業を支援する取り組みができないだろうかと考えています。私はもともと小さい子どもたちが好きで、保育士の資格も取得していますので、いずれ『WithKids』を軸に新しい事業を展開できればと思っています。また、解決するべき社会課題を自分で発見し、新たなフィールドをつくることをしてみたいですね。それが『HUE』のような領域になるのかはわかりませんが、今の自分の仕事とは別の新しくて面白い領域をつくりだしていきたいと思います。

編集後記

高い思考力や柔軟な発想など、ビジネスに必要な素養を豊富にもつ嶋田氏。そうしたスキルだけではなく、類まれな行動力も、嶋田氏の強みの1つだろう。様々な実績に裏打ちされた嶋田氏のビジネスパーソンとしての可能性は、今後ますます花開くに違いないと感じた。

嶋田 瑞生(しまだ・みずき)/1994年生まれ。東北大学経済学部卒。
大学入学後、1年生の冬に"ゲーミフィケーション"という学問分野を用いて、ビジネスゲームの企画・作成、およびゲームを用いた研修を扱う有限責任事業組合baselabo.comを設立。2年生時には、東北大学にて講師として数回講義を実施したほか、タイ王国タマサート大学の特別講師として現地で講師を担当、経済産業省・中小企業庁主催の地域創業促進支援事業でも2年連続で特別講師を務めた。3年生時には、「大学生が靴磨きで地域活性化」を標語とするビジネス団体Uppersを設立し、2016年1月に仙台市長奥山恵美子氏より「学生起業家特別賞」を受賞。2015年夏に株式会社ワークスアプリケーションズのインターンシップに参加し、その年の全国1位の成績を残す。2017年の春に株式会社ワークスアプリケーションズへ入社。座右の銘は『食パンマンよりカレーパンマン(見た目だけでなく豊かな中身のある人になること)』、 『面白きこともなき世を面白く』など。愛読書は『翻訳できない世界のことば』(創元社)、『大泉エッセイ 僕が綴った16年』(KADOKAWA)、『Reality is Broken -幸せな未来はゲームが創る- 』(早川書房)。

※本ページの情報は2017年12月時点のものです。

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株式会社ワークスアプリケーションズ 代表取締役最高経営責任者 牧野 正幸