オンライン英会話サービスを手掛ける株式会社レアジョブ。その海外子会社であるENVIZION PHILIPPINES, INC.は、クオリティの高い英語教育サービスを、フィリピン共和国のミンダナオ島から、レアジョブ英会話のお客様をはじめ、全国の小学校から大学にわたる教育機関に提供している。そんなレアジョブのサービスの根幹を担うENVIZIONを立ち上げから支えている1人が、同社Chief Operating Officer(COO)の水島俊介氏だ。1990年生まれ、新卒でGoogleに入社した経歴を持つ期待の若手社員が語る、独自の仕事観とは。

二度の挫折から目標を失う

―学生時代はどのように過ごされていたのでしょうか?

水島 俊介:
高校まではプロを目指してサッカー漬けの日々を過ごしていました。しかし、ある日ふと、自分の限界を悟り、高校卒業と同時にサッカーの道を諦めました。当時はただひたすらストイックに練習するだけで満足していたので、もっと戦略的かつ客観的にサッカーと向き合う必要がありました。しばらくして、自分の強みは何なのか、その上でどんなプレイヤーになれば選手としての価値を最大化できるのか、そういうことを考え抜けなかった自分を非常にふがいなく思いました。それ以降、何かに取り組む際は徹底して自分の頭で考える習慣がつきました。

大学入学後は、両親の夢が息子をパイロットにすることだったこともあり、航空大学への編入に向けて勉強を始めました。ところが、身体検査がネックとなり、早々にパイロットの夢も断念することになったのです。

二度の挫折に無気力状態になりながらも、一方では冷静な自分もいて、企業へ就職することについて考え始めました。そして、これからのビジネスパーソンは英語ぐらい話せなくてはと思い、1年間フィリピンへ留学に行きました。留学中に何か新たな目標が見つかるのではないかと淡い期待もあったのです。しかし、特に見つけることもできず、ただただ日に焼けて帰国の途につきました。

新卒でGoogleに入社した経緯

―明確な目標が見つからなかった中、新卒でGoogleにご入社された理由をお教えいただけますか?

水島 俊介:
お恥ずかしい話、当時はそれらしい理由をあれこれ考えていましたが、振り返ってみると”カッコいいから”という理由が正直、一番大きかったように思います。当時、本をたくさん読み、多くの社会人の方と会ってお話を聞いたり、様々な企業インターンに挑戦したりしたのですが、具体的に「これをやりたい、こうなりたい」と心から思えるものは一切ありませんでした。大学の友人は「世界で起きているこんな課題を解決したい」などといった崇高な目標を掲げて就職活動をしていたんです。非常に劣等感を感じていましたね。そんな時、Googleの社員の方々とお話をする機会があり、皆さん自分の意思やビジョンをしなやかに持ち続けている姿を目の当たりにし、そのような人たちの中に身を置くことで、自身の精神や感性が、知らず知らずのうちに淀むことなく、生きていけるのではないかと思ったことを覚えています。


―Googleではどういったお仕事をされていたのでしょうか?

水島 俊介:
Googleでは大手広告代理店の広告営業を担当していました。

その仕事を通して、デジタルマーケティングでは「何ができて何ができないか」を理解しました。そして、何よりも一番の収穫は「『Google』という仮説検証が繰り返された組織の仕組み」を実際に体験できたことでした。完成度の高い組織で働けた経験は、後に自分で会社の組織や制度を作ることになった際、非常に参考になりました。

画一的な学校教育に対する違和感

―御社に転職された経緯をお教えいただけますか?

水島 俊介:
入社後は目の前の仕事や、恵まれた環境を楽しんでいました。そんな中、あることをきっかけに学校教育について考え始めました。子どもの頃に「優秀だな」と思っていた友人たちが、大学生、社会人になった時に強みを生かすことができず、大勢の中で埋もれてしまっている現状を目の当たりにしたのです。

もともと私は学校に対して、非常に強い苦手意識がありました。勉強が苦手であったということもありますが、一人ひとり異なる認知特性、興味関心、才能を持っているにも関わらず、決められた内容を同じ方法で学び、一つの物差しで評価されるというスタイルに、違和感を抱いていました。

そんな時、偶然にレアジョブに勤めていた友人とランチへ行くことになり、レアジョブの教育機関向けサービスについて話を聞きました。強く惹かれるものがあり、その後すぐ実際に事業担当の方に詳しい話をうかがったんです。聞けば聞くほど、自分が持っている学校教育に対する課題解決に貢献できると考え、入社を決意しました。

振り返ると、私にとってやる意義を見出せるかどうかは、課題意識をどれだけ自分事として強く感じられるかが、非常に重要であるように思います。

不安よりも楽しみが勝るプロジェクトとは

―ご入社されてすぐにフィリピンの新しい子会社であるENVIZIONの立ち上げに携わられていますが、海外転勤ということに不安はありませんでしたか?

水島 俊介:
もともとは教育機関向けサービスの部署に配属されるはずだったのですが、入社初日に、「フィリピンに新会社をつくるつもりだけどやるよね?」と言われ、「はい」と即答しました(笑)。当時は、まだ何をやるかすらよく分かっていなかったのですが、フィリピンへの留学経験もあったためか不安は全くなく、むしろ新しい事業に対する期待が大きかったですね。


―今は具体的にどういった内容のお仕事をされているのでしょうか?

水島 俊介:
会社のためになると思うことは何でもやります。

CEOが意思決定に全責任を持っている一方、私はCOOとして目標達成のための執行に責任を持っています。実際には、オペレーション部門、トレーニング部門、HR部門、IT部門、そしてAdmin部門を統括しています。

設立当初は、レアジョブとして、レッスンを供給するセンターの立ち上げ、さらにそれを法人化するということは社内で初の試みでもあり、もちろんノウハウが無い中、短期間でスタッフを200人まで拡大していく必要があるという非常にチャレンジングな状況でした。そのため、ゼロから仮説をもとに新たな仕組みをつくり、検証して体系化、そしてスタッフにそれを移管することで、私はまた新たな仕組みをつくるということを繰り返してきました。また同時に、利益を生むビジネスモデルを走りながら模索していきました。

現在は、ある程度の仕組みが出来上がってきたため、私は主に各部門の現地スタッフのマネージメント、既存の仕組みの生産性向上やルール変更、そして新しいプロジェクトの立ち上げ期の担当をしています。他にも、会社イベントのゲーム企画、当日のBGM係、そして毎朝会社のオフィスの椅子をきれいに並びなおす等、必要だと思うことは何でもやります。

生活環境は日本と全く異なりますし、田舎町ということもあって不便なこともありますが、今のこの仕事がとても楽しくて、休日よりも平日のほうが好きなくらいですね。

“企業カルチャー”が経営の土台

―組織をつくる上で、どのようなことに気を付けていらっしゃいますか?

水島 俊介
常に、会社の「戦略」「オペレーション、意思決定」「企業カルチャー」が一貫しているかどうかに注意を払っており、日々、微調整を繰り返しています。私たちは、カルチャーをマインドセットと定義づけ、且つ組織を運営するうえでの土台であると考えています。なぜならば、マインドセットが行動を生み、行動が結果を生むと考えるからです。

つまり、まず市場で勝つためには、ユーザー・マーケットからこんな風に認識されたいというゴールに対して、会社として出す必要のあるアウトプットがあります。そして、そのアウトプットを出すためには、社員一人ひとりがどのようなマインドセットを持つことが必要か、それを定義づける必要があると考えています。

それを実現するためにも、カルチャーに合った人材を採用することを徹底しています。たとえ、能力的に優秀であってもカルチャーに合わない人材は残念ながら採用しません。立ち上げ当初はスタッフ数も10~20人でしたが、今では200人近くになってきています。人数が増えるにつれてカルチャーを維持していくのは難しくなるため、現在はそれを保ち続けるための仕組みや空気をつくることに注力しています。

そして、ENVIZIONを一緒に立ち上げてきた、CEOである西條から多面的に大きく影響を受けているのですが、その一つとして、「会社は人で成り立っている」ということを日々、肝に銘じ行動しています。

経営において、便利さや説明のしやすさから、できる限り全てを数値化して管理しようとしがちになります。しかし、企業は人の集積で出来上がっており、日々のオペレーションも人と人とのコミュニケーションによって成立しているため、数値のみに頼った経営手法に限界を感じました。そのため、簡単なことではありませんが、たとえ「定量的で論理的な根拠」が無かったとしても、必要に応じて自らの倫理観に基づいて意思決定をするよう努めています。しかし、この分野では多くの人生、ビジネス経験があるCEOの西條には全く及ばず、ビジネスマンとしてだけではなく、人として豊かになることが重要であることを日々痛感させられています。

尊敬できる上司のもとで仕事ができる喜び

―御社にご入社して良かったと思うことは何ですか?

水島 俊介:
レアジョブのサービス自体が好きで入社したという経緯もありますので、自分の好きなサービスを提供できる会社で働けるのは幸せだと思っています。ただ、何よりもCEOの西條のような上司の下で働く経験ができていることに感謝をしています。基本的には権限と責任を大きく委譲して好きなようにやらせてもらえるのですが、陰では常に状況を観察してくれていて、何か事故が起こる前には必ず警告をしてくれます。そのため、大きなトライと最小限のエラーを繰り返しながら日々、学ぶことが出来ています。

レアジョブに入社後間もない若造(当時26歳)をCOOに抜擢する意思決定は、周りとの調整も含め容易ではなかったと想像します。ただ、そんな中でも、全責任を担い抜擢してくれた男気には今でも心から感謝をしています。

漫画等で、ある日、冴えない主人公の前に突然現れ、その人のおかげで急に強くなれたり、劇的に人生のステージが上がったりすることがよくあるかと思います。

現実の世界でも、大きな成果を出せるかどうかは、そのような人に出会うことが出来たかどうかが非常に重要なのではないかと思うんですよね。私の場合はそれが西條との出会いでした。

また、先日日本に出張に行った際、弊社がサービスを提供している学校の授業を見学させていただきました。生徒がレッスンをしている画面をのぞき込むと、その向こうには普段はオフィスで一緒にワイワイやっている社員たちがプロの英会話講師として生徒を惹きつけ、生徒も一生懸命に英語で自分の意見を伝えようとしている姿を目の当たりにしました。私は社員を心から誇りに思うと同時に、学校英語教育の前進に貢献できていることを確信し、本当にやりがいのある仕事であると感動しました。

”自己成長ではなく会社のために”

―COOの責務を担う上で、現在取り組まれているご自身の課題はありますか?

水島 俊介:
基本的に私自身の課題よりも、会社としての課題を考えることのみにフォーカスしています。そのため、私自身の課題を解決する、能力を伸ばすというのは、解決策の一つの選択肢でしかありません。大抵の場合、私は自分の得意領域のみに集中をして、あとは周りのメンバーから適材適所で助けてもらうことで会社の課題を解決していきます。

例えば、私は0から10にするくらいが得意だと認識しているので、その後は10から100にしていくのが得意なメンバーに任せます。
そのため、普段から自分は何が得意で何が不得意なのかを周りに理解してもらうこと、そして自分の得意な分野では圧倒的な貢献をすることで信頼を得られるよう努めています。

また、なかなか自分では自身の強みに気づくことが難しいため、日々のコーチングのなかで個々のメンバーが自身の強みを自覚できるよう努めています。


―最後に、今後の展望についてお聞かせください。

水島 俊介:
上場企業の海外子会社であるため、もちろん売り上げや利益は追っていきます。ただ、一見繋がりがないように見えるかもしれませんが、私たちは「会社の成長=社員の幸福度の向上」と定義づけて経営をしています。

今、働いてくれている社員が退職した後も「ENVIZIONで働いて本当によかった」と思えるような会社をつくり上げたいです。まだ新しく知名度や実績のあまりない会社に、有名大学を卒業してきてくれている社員の一人ひとりには本当に感謝をしています。そして、日本にいるレアジョブスタッフと力を合わせ、提供するサービスを通して、日本の英語教育、ひいては学校教育全体が良くなる方向に、微力ですが貢献できればと考えています。

ENVIZIONのメンバー。水島氏は写真中央。

編集後記

サッカー選手という夢をあきらめ、新たに見つけたレアジョブでの目標。高い思考力を持ち、様々な課題を解決し続けてきた水島氏なら、日本の抱える英語教育の問題点に新たな光を示すことができるのではないかと感じた。

水島 俊介(みずしま・しゅんすけ)/1990年生まれ。
新卒でGoogleに入社。大手広告代理店を対象にした広告営業に従事。2016年、株式会社レアジョブに入社後、まもなくENVIZION PHILIPPINES, INC.の立ち上げに参画。オペレーションスタッフとして赴任後、オペレーションマネージャーを経て、COOに就任。座右の銘は「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」。愛読書はショーペンハウエル『読書について』。

※本ページ内の情報は2018年2月時点のものです。

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株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村 岳