株式会社カケハシ (以下「KAKEHASHI」)が提供する電子薬歴システム『Musubi(ムスビ)』は、薬剤師が患者に対して行う服薬指導をその場で記録できる調剤薬局向けクラウドサービスだ。
薬剤師の作業短縮につながる『Musubi』には、2016年に誕生したスタートアップ企業のシステムでありながら、すでに8千件を超える調剤薬局から問い合わせがあり、約6割の導入率を誇るという。
そしてそれら顧客に対して業務支援を行うKAKEHASHIのカスタマーサクセスチームは、現場課題に合わせた、より良い運用方法の提案などといったサポートによって、契約継続につなげる重要な部隊だ。
カスタマーサクセスチームにおいて、若手のホープとして活躍している中山田明氏に、KAKEHASHIの魅力と仕事に対する思いを伺った。
医療業界の道を志したきっかけ
―新卒では製薬メーカーのMRに就職されました。なぜ、医療の世界を選ばれたのでしょうか。
中山田 明:
病気や怪我、障がいを持つなど生きにくさや生活のしにくさを抱えている方々の力になりたいと思ったからです。 自分が提供するサービスによって、その人たちの生活が良くなっていく瞬間をつくっていきたかったのだと思います。 そのようなサービスは何かと考えたとき、医療や教育の分野に興味を持ちました。
―その後、複数の企業を経てKAKEHASHIに入社されました。転職のきっかけはどのようなものでしたか?
中山田 明:
MRとして医療従事者に提案営業をする中で 、もっと自分自身を高めて価値を出していける人材になりたいと思いコンサルティング会社に転職したことが、結果的にKAKEHASHIへの入社につながります。そこではコンサルタントとして、全く未知な分野でも自分なりのポジションを確立して提案していかなくてはなりませんでしたが、当時の私の知見は求められているレベルに達しておらず、全く価値を出せませんでした。
そして入社半年後の面談で、その会社で今後何がしたいのか問われたとき「昇格したい」という目標しか浮かばず、何のために自分は高みを目指していたのかを改めて考えさせられたのです。「自分は社会的に公共性の高い課題を解決することで社会に貢献したい、提案して終わりではなく、事業会社の中で多様な関係者と草の根的に仕事を進めながら価値を提供したいのだ」という考えに立ち返りました。その後、教育福祉関係の企業を経て、KAKEHASHI入社に至ります。
入社の決め手となったKAKEHASHIの“他社と一線を画する視点”
―KAKEHASHIへご入社された決め手をお聞かせください。
中山田 明:
製品の価値を継続してユーザーに感じてもらえるようにするカスタマーサクセスという職種に対する魅力と、この会社は社会に強い影響を与えるであろうという期待です。
一般的な製品の営業では、売って終わりということも多く、会社組織として目先の利益を追求する方向にいけばユーザーの利益と会社の利益が相反する場合もあることは、多くのビジネスパーソンが葛藤してきたところだと思います。しかしカスタマーサクセス職は、契約成立後にユーザーの満足度を高め続けることでユーザーあたりの利益を増やし、結果として自社の利益を向上させる仕事です。ユーザーと会社の双方の利益が得られる職種に好感をもちました。
KAKEHASHI自体には、ITの会社であるのに、人そのものの価値を高めていくことに主眼を置いていることに先見性を感じました。
今の多くのIT企業では、例えばスマートフォンをタッチするだけで今までの作業が楽になるといったようなプロダクトばかりが作られていますが、KAKEHASHIはITで便利になった後、人間がやるべきことを支援しようという挑戦をしています。IT化のその先を見つめているところが、他のIT企業とは一線を画していると思いました。
人として正しくあれ
―ご入社されて感じられたKAKEHASHIの魅力についてはいかがですか?
中山田 明:
人として正しくあることを求めてくれる会社だと感じています。
好き嫌いや目先の利益を優先するのではなく、長期的にみて良いと思われるであろうことを判断の基軸として、その行動を承認してくれます。例えば数字だけを追い求めて、私たちにとって適切ではない顧客を確保しようとすれば会社から強い批判が入りますし、ユーザーから要望された機能であっても鵜呑みにせず、多くの人に長く製品を使っていただくために本当に必要なことなのかと考えます。
長い歴史の中で「日本の医療を変えた」「患者さんたちに本当に価値を出した」と思ってもらえるような判断をしたいという思いが、どんな意思決定の瞬間にも見られることを好ましく思います。自分自身にとっても自分がどんなことで評価されていて、何をすればいいのかが明確なので納得感が強く、働いていて非常に面白いです。
―高い倫理観を持つ企業体質は、創業者の中尾社長の影響によるものでしょうか?
中山田 明:
そうですね。中尾は武田薬品工業のMR出身で堅いイメージを持たれがちですが、話すととても気さくな人です。情熱的で、自分の利益だけでなく本当に相手のことを考えた提案ができる人なので、周囲から愛され、共感する人材が集まってくるのだと思います。
KAKEHASHIの提供する『Musubi』では、患者さんの価値を高めつつ、薬局の利益も生まなくてはならないという部分に相反が生じることがあります。
その矛盾について素直に話せる環境にあることは非常に素晴らしいと思いますし、目先の利益を優先してもおかしくない状況にあっても「患者さんのためになることを選びたい」という中尾の心からの声を聞くことは何度もあります。中尾自身も葛藤の過程をオープンに話してくれるのは、中尾とのコミュニケーションにおいてとても印象的なところです。
実は父が個人事業主でして、そのような働き方を模索したことがあるのですが、まだ社員数も足らない時期なのに中尾は「それならばこのスキルを身につけたほうがいい」などと誠実に相談にのってくれました。人の人生に真摯に向きあうのは誰にでもできることではないですし、信頼は一層増しています。
ユーザーの課題を先回りして“驚き”をつくりたい
―仕事上で心掛けていることや、今後の展望をお聞かせください。
中山田 明:
心掛けているのは、ユーザーや顧客に対して誠実であることです。その誠実さとは、たとえユーザーにとっては耳の痛い話であっても、臆さずにKAKEHASHIの考えを伝えることも含みます。そして、こうすればユーザーはより良い環境になっていきますと言い切ることを意識しています。
『Musubi』は売り切りではなく、使い続けてもらうことで利益を生み出すビジネスモデルですから、どのように誠意を持ってコミュニケーションを取っていけばユーザーにとって良い会社になれるのかは、常に意識しています。
今後の展望としては、今は導入初期のユーザーが製品の価値を初めて感じるプロセスをチームメンバーと構築しているところなので、その中でユーザーがメーカーに感じている価値観を変えていきたいと思っています。
今までの医療業界の営業は現場に足繁く通うことで数字をつくっていくスタイルでしたが、私たちはITの会社として、現地に行くことが価値なのではなく、本当にユーザーが抱えている課題を、データをもとに読み抜いて、ユーザーが求めているタイミングでアプローチするという驚きをつくりたい。それが直近の目標ですね。
―目標を成し遂げるために、どのような課題を乗り越える必要があるとお考えですか?
中山田 明:
ここ1年で社員数が急激に増え、多様な人材が集まっているので、どのようにしてその人たちの価値を100%出し、組織としての価値を高めていくかを勉強する必要性を感じています。元々私は自己成長欲求が強かったので、自分の価値は自分で上げるものという意識があったのですが、企業と成長を共にする中で、人を育てることの大切さにも気づき始めました。
さらに、KAKEHASHIに入ってきた皆さんはそれぞれの専門性や強みを持っているので、どのようにレバレッジを効かせて、よりパフォーマンスを上げるかは、チームを運営する側が考えなくてはなりません。KAKEHASHIの優秀な皆さんの能力を、もっともっとチームのアウトプットに還元していきたいと思っています。
―最後に、転職に対するご自身のお考えをお聞かせください。
中山田 明:
会社という箱には、実はあまり意味がないと思っています。どんなに有名企業でもそれは今評価されているだけにすぎません。個人的には、どこの会社で働いているかよりも、そこでどう働いているか、何をやりたい自分なのかということを重視したほうが本質的だし、自分自身の納得度が高いと考えます。
最近はCtoC(個人間取引)サービスも盛んになっており、個人の力で仕事をする場面は益々増えていくはずです。自分の働きや仕事を通して世の中にどういう価値を提供していくかを考え、それを求めてくれる会社と縁があるならば、踏み出してみるべきだと思いますね。
編集後記
組織や社会において、自分自身がどのような価値を出せるのかを常に考え続けている中山田氏。自身の適性と役割を見つめながら柔軟に変化してきたからこそ、納得度の高い働きが得られているのだと感じられた。そんな中山田氏が今後の課題に周囲のマネジメントを上げたことは、急激に成長しているKAKEHASHIの大きな力となるに違いない。
中山田 明(なかやまだ・あきら)/1989年生まれ。創価大学英文学科卒業。新卒で製薬メーカーMRに就職後、コンサルタント、教育・福祉企業のコールセンター業務改善を経験。2017年12月より株式会社カケハシのカスタマーサクセスとしてユーザー支援を担当する。座右の銘は、「自分が変われば、相手が変わり、組織が変わり、社会が変わる」。