株式会社RevComm(レブコム)は、AIがリアルタイムで解析することで、電話営業・コールセンター応対の内容を「見える化」し、営業の生産性向上につなげるAI搭載型クラウドIP電話 『MiiTel(ミーテル)』を開発・提供するスタートアップだ。
「いつ」「どの担当者がどの顧客と」「何を」「どのように」話したのか全てAIによって可視化およびデータベース化し、クラウド上での共有と情報の蓄積を実現させた。
例えば、「どのように話しているか」では、担当者が話している時間と聞いている時間の比率、話しているスピード、沈黙の回数、顧客の発話中に被せて発言した回数などが可視化され、「何を話しているか」では、自動文字起こしに加え、誰が・いつ・どんなキーワードを何回言ったのかも全て可視化される。
この画期的なサービスは、2019年5月に行われたスタートアップの祭典「B Dash Camp」のピッチイベント「Pitch Arena」で優勝を飾り、同年11月に行われたスタートアップとテクノロジーの祭典「TechCrunch Tokyo 2019」のプレゼンコンテスト「スタートアップバトル」でも最優秀賞を受賞するなど、一際注目を集めている。
RevCommを率いる代表取締役、會田武史氏は、経営者である父の影響を受け、ビジネスで世の中の仕組みをつくろうと、小学4年生の時に起業することを決意したという。
海外留学や大手総合商社での経験を経て「やりたいこと」に出合い、起業を実現した會田社長。知られざる『MiiTel』誕生の裏側と今後の展望に迫った。
10歳で起業を決意し、17歳でその目的を固めた
―幼少期はどのような環境でお育ちになったのでしょうか?
會田 武史:
私は、祖父も父も経営者という、いわゆる経営者家庭で育ちました。
幼少の頃から様々な経験をさせてもらい、広い世界を見せてもらう中で父から言われたのは、「とにかく感謝しろ」ということでした。「ビジネスをして世の中の仕組みづくりをし、その対価としてお金を頂戴し、今の生活が成り立っている。とにかく感謝をしなさい」と。
グローバルな視点でのビジネスというのも見せてもらっていましたし、同じ分野で祖父や父を超えたい、という気持ちもあったので、ビジネスで世の中の仕組みづくりをして日本を世界に発信する、これが自分のすべきことだと思ったんです。小学4年生の時でした。
―高校生の時にも転機があったと伺いましたが、どのようなものだったのでしょうか。
會田 武史:
とある国語の試験の時に、鷲田清一先生という日本の哲学者の本に出合ったんです。その時に、「哲学って超おもしろい!」と思って、テストが終わった後にすぐに図書館で哲学書を探して、そこからのめり込みました。
哲学書をひたすら読む中で、私が行きついた結論は、「幸せのために生きる」ということです。誰の幸せかというと、自分です。では自分とは誰なのか。そこで観点を変えて俯瞰してみたんですね。
自分というのは、接する相手によって、全部違うんです。自分とは他人によって定義されている、よって自分が幸せになるには他人を幸せにしなければいけないわけです。
ビジネスを通して人を幸せにし、その結果、自分が幸せになる。これって実は、自己中心的な考え方なんです。でもその自己が相対的なので、聞こえは良いですよね。
世のため人のために立つ、これがビジネスの原理原則だと思いました。父もまさにそれをやっていたので、しっくりきましたね。
小学校4年生で夢のベクトルを定めて、高校2年生でその夢をどう実現させるのかを、自分で考えて定めることができたのは、組織でいう権限委譲のような、信じて任せる教育をしてくれた親のおかげでもあると感謝しています。
今する努力と一年後にする努力は全く価値が異なる
―大学生の頃にアメリカへ留学されたそうですが、そこでの印象深い経験などはございますか?
會田 武史:
当時はリーマン・ショックの直後だったのでマクロ経済は大きなダメージを受けていましたが、学生はみんな元気でしたね。私のルームメイトも、学生ながら起業をしてアリゾナでホットドックのEC販売を始めていました。
残念ながら上手くはいかなかったのですが、彼は「失敗しちゃったよ、次何しようか」と言ったんです。衝撃を受けましたね。その時私は、何を通じてビジネスをするかが見つからないという言い訳をして何もしていない自分がそこにいたということに事実に気づかされたんです。
それからはNPOを立ち上げたり、カリフォルニアに移って広告代理店でインターンをしたりして、とにかく行動を起こしました。
行動する中で気づいたのは、「今の努力と一年後の努力の価値が全く違う」ということです。今努力して成長することができたら、一年後、二年後、その成長した分だけ他人と差が開きますよね。
ルームメイトの頑張る姿を見て、やりたいことが見つからなくてもがむしゃらに動いてみたのは、今思えば良い経験だったと思いますね。
現在の事業着想につながった考え方
―とにかく行動されたとのことですが、その中で、ご自身の「やりたいこと」にはたどり着いたのでしょうか。
會田 武史:
いえ、結局、学生時代には見つからないまま、日本に戻って大手総合商社に入りました。海外でのセールスマーケティングや自動車のトレーディング、会社の立ち上げ、クロスボーダーM&Aなど、ビジネスに必要な一通りの業務に携わることができました。
しかし、社会人6年目のとある日曜日の夜、当時いたウクライナで、今挑戦をしないということが、一番のリスクなんじゃないかとふと思ったんです。
―ではその後、すぐに起業について考えを巡らせたのでしょうか。
はい。どんなことで起業できるかを考えました。
この変わりゆく社会の中で、テクノロジーは確実に必要です。そこで、今後3~5年の間に来る要素技術として真っ先に浮かんだのがディープラーニング・ブロックチェーン・量子コンピュータの3つでした。なかでも一番ワクワクしてかつ応用可能性が高かったのがディープラーニングでした。
このディープラーニングを活用して、私が日頃ペイン(苦痛)だと感じていた「高いコミュニケーションコスト」を解決できるし、したいと思えました。
すなわち、「何を言ったか」じゃなくて「誰が言ったか」が優先される世界、そこに一石を投じたかったんです。僕は人と話すのが大好きなので、見事に自分の「好き」とも重なりました。GUI(Graphical User Interface)からVUI(Voice User Interface)へというマクロの波にも合致します。
10歳からやりたいことを探し続けて17年、要素技術と社会的ペイン、自分の好きなことが重なったのが、ディープラーニング×ボイスコミュニケーションだったのです。