『MiiTel』誕生秘話
―事業が具体化していく中で、『MiiTel』はどのように生まれたのでしょうか。
會田 武史:
AI×コミュニケーションでは抽象的すぎるので、具体的な経営戦略に落とし込み、経営判断AIをつくるというゴールをまず決めました。我々がやるべきことは、経営判断のビッグデータを集めるプラットフォームをつくることでした。
経営判断に必要なものは何かを考えると、例えば6ヶ月のプロジェクトがあったら、6ヶ月間、市場のポテンシャル、それに対するリスク、打つ手やリスクヘッジ策などを侃々諤々議論してPDCAを回した、その集積データだったんです。
この議論はどこでなされるかというと、普段のミーティングです。となりますと、普段のミーティングをすべて録音しなければいけません。ミーティングルームのインフラ構築というのは、結構大きな話です。実績もない当社がそこに参入したとしても、門前払いを食らうでしょう。
そこで四象限分析やヒアリングを繰り返し、10回くらいピボットした結果、行きついたのがインサイドセールスでした。その中で生まれたのが『MiiTel』です。
電話応対の内容の詳細な記録・分析に加え、共有も自己の振り返りもでき、パフォーマンスを飛躍的に向上させられると、ご好評をいただいております。
指針となっている4つの経営戦略
―現在はBtoB向けにサービスを展開されていますが、今後はBtoC向けへの展開もお考えなのでしょうか。
會田 武史:
はい。経営戦略としてVertical(機能面)・Horizontal(事業領域)・Parallel(プラットフォーム化)・Geographical(地理的な展開)という4つのレイヤーで考えています。
Vertical(機能面)では、自動でアポイントを取るAIというのを構想しています。これはおそらく2~3年後に実現できると思っています。
電話営業は「聞く」と「話す」というきわめてシンプルなコミュニケーションで成り立っています。「聞く」は音声認識、「話す」は合成音声を活用すれば実現できます。
あと重要なのはコンテンツ、すなわち統計的なQ&Aです。『MiiTel』を通して、リリース1年現在ですでに約600万件の電話営業がなされており、その蓄積データがあります。
これを元に、どう聞かれたらどう返すのか、合成音声を当てれば営業が成立します。全くSFの話ではありません。
有名人があり得ないことを話しているような「ディープフェイク」と呼ばれる動画が問題になっているように、合成音声は、もはや本人の肉声との聞きわけが全くつかないレベルに達しています。ですので、自動アポ取りAIは近い将来実現できるでしょう。
Horizontal(事業領域)には、自動議事録ツールというのを考えています。セールスの次はミーティングの領域、その延長線上に経営判断は得られるので、これも2~3年以内に動きたいですね。
Parallel(プラットフォーム化)はもうすでに動き始めていて、『MiiTel』の解析エンジンを様々な領域のサービスに組み込んで展開したいと考えています。
例えばHR領域では、リモート面接のツール、そこに『MiiTel』の解析エンジンを入れれば、人によってどのぐらいの速度で話をするのが適切なのかが明確に分かるようになります。
例えば、圧迫面接官はえてして早口であるという特徴があります。
実はこれが、表情も手振りもそのままで、ただ話す速度を落とすだけで、ものすごく柔らかい印象になります。これはどんな仕事、どんな職種であれ、最適なコミュニケーションの取り方というのを定義できるということです。
Geographical(地理的な展開)においては、やはり日本を世界に発信するために、今後グローバル展開をしていきたいですね。まずは2020年にインドネシアやフィリピンといったアジア諸国への進出を目指しています。
求める人材像とRevCommが実現したい社会
―先程仰った4つの経営戦略を実現するために、人材に求めていることは何でしょうか?
會田 武史:
当社のコーポレートバリューにも掲げている「HAPPY」な人です。「HAPPY」とは、それぞれの頭文字を取って次のような意味があります。
H(Happiness)……いつも明るく元気で、笑顔の絶えない人の集まり
A(Accountability)……世の中から、人から頼られる人の集まり
P(Professionalism)……自ら考え、行動し、変革を生み出せるプロフェッショナルの集まり
P(Passion)……情熱的な人の集まり
Y(Youthfulness)……若々しく溌剌として、創造的な発想ができる人の集まり
(株式会社RevComm 公式ホームページより引用)
現在の社員数は約50名です。時短やフルリモートなどを活用している社員が多く、働き方は比較的自由なほうだと思います。
―今後、御社のサービスを通じてどのような社会にしていきたいとお考えでしょうか。
會田 武史:
私がつくりたいのは、人が人のことをもっとよく考える、「本当の意味でのコミュニケーションが行き交う豊かな社会」です。人の感情を揺さぶる、感動を呼び起こすことが本当の意味でのコミュニケーションだと私は思っています。
例えば茶道は、客人を迎える一週間前から季節に合う掛け軸や生け花、お茶菓子を選ぶなどして準備をします。
そうして客人のために丹念に点てられたお茶をいただくと、人は一杯のお茶に大変感動するそうです。この間に言語的コミュニケーションはありません。これが感動の本質、本当の意味でのコミュニケーションだと思います。
非効率な労働から解放された合理的かつ、効率的な社会が実現され、その結果として人が人のことをよく考える。私が理想とするのはそんな社会です。
これは同時にPhilosophyでもあります。短期的に、サービスを提供して売り上げを立てるという目的のためには、やはりサービスのメリット、バリューを訴求する必要があります。
当社は『MiiTel』を通じて、営業のブラックボックス化問題の解消と、セルフコーチングの実現という2つのバリューを提供し、営業の効率化を実現することができます。
これは企業規模や業界に関係なく、どこでも抱えている普遍的かつ本質的なニーズなので、すぐに受け入れられるはずだと考えています。
経済的、社会的、文化的に豊かで、「本当の意味でのコミュニケーションが行き交う豊かな社会をつくりたい」というPhilosophyを伝えていくことが重要だと思いますね。
編集後記
中学時代から哲学に傾倒されていたからか、思考が実に理路整然としていて、膨大な知識や経験に基づいたユニークなエピソードが次々と飛び出る會田社長のお話。
『MiiTel』という画期的なサービスはもちろん、企業としての勢いと今後の展開を含めて多大なる可能性を感じた。
「本当のコミュニケーションが行き交う豊かな社会」の実現に向けたRevCommと會田社長の挑戦に、これからも注目していきたい。
會田 武史(あいだ・たけし)/ 三菱商事株式会社に入社し、自動車のトレーディング、海外市場での販売/マーケティング施策の企画・立案・実行、クロスボーダーの投資案件・新会社設立、政府向け大口入札案件、M&A案件等に従事。2017年7月に株式会社RevCommを設立。一部先行販売を経て、2018年10月、電話営業を可視化する人工知能ソフトウェア『MiiTel』を正式リリース。