※本ページ内の情報は2023年10月時点のものです。

多重下請け構造の建設業界において100%元請けを実現し、大規模修繕工事を手がけるアローペイント。

代表取締役の染矢正行氏は2002年に20歳の若さで起業し、2013年頃から大型修繕専門店へと業態転換、2019年には売上13億円を達成した。

コロナ禍においても、業績を落とす企業が多かった中で同社は順調に成長し、2022年には月々定額制の修繕サービス「コツコツめんて」をリリースした。必要箇所からこまめに修繕を行うことで、まとめて工事をする従来式よりもコストを最大30%も削減できると反響を呼んでいる。

革新的な挑戦を仕掛け続ける注目のトップ、染矢社長に話を聞いた。

既存に無いものをつくることが存在意義

ーー染矢社長は定額制の修繕サービスを提供するなど、既存の枠にとらわれない取り組みに挑み成功させていますが、その根底にはどのような思いをお持ちなのでしょうか。

染矢正行:
まず経営者として、既存に無いサービスを出さないと意味がないと思っています。

そのあたりの感覚は製造業に近くて「今までにないものをつくりたい」という気持ちがありますよね。それがこの会社の使命だとも思います。

たとえば製造業では、ベルトコンベアーを増やして収益を上げることを目標にする社長と、今までに無いものを生み出すことを目的にする社長がいると思いますが、僕は後者ですね。

建設業では後者のタイプの社長が少ないんですよ。でも、ゼネコンから仕事もらって、職人さん増やして・・・というようなことをいつまでもやっても、より安い業者さんとずっと比較され続けるわけですから、しんどいじゃないですか。

僕が理想としているのは、「アローペイントは大嫌い、染矢正行は大嫌い。だけど、アローペイントを選ばざるを得ない」、こういう商品・サービスをつくることです。

iPhoneなんかそうですよね。スティーブ・ジョブズが嫌いだとしても、買わないとしょうがない。そういうサービスを提供したいと思っています。それが僕のビジネスマン人生の最終目的なんですよ。

従業員定着、採用の決め手は「自由」と「自責」

ーー貴社は社員の定着率が高いそうですが、その理由は何でしょうか。また、人材採用における決め手がありましたらお聞かせください。

染矢正行:
弊社では入社してすぐに転職する社員はいません。それは弊社が割と自由だからではないかと思っています。 働き方も自由だし、朝礼などはありますけど勤務時間もそれほど縛られませんし。

オフィスで座る席もフリーアドレスだったり、風通しと居心地がいいんじゃないかと思います。

採用に関しては、物事がうまくいかないときに他責にするような人間ではないかどうかだけは見極めるようにしています。

能力などは後からいくらでも伸ばせます。でも環境のせいにしたり人のせいにしたり、そういう言い訳が多くて、自分のできていないことに目が向かない、よそを責める精神を持っていれば、この業界に限らず一生伸びないでしょう。会社の中でも上に上がっていけないはずです。だからそこを1番重要視しています。

幸福感度が仕事に活きる

ーーこの記事を読む方や若い方々へ、メッセージをお願いします。

染矢正行:
大切なのはどういう環境に置かれても、不幸と思わないこと。そういう人間が1番だと思います。

たとえば、フィリピンでゴミの中から毎日の食べ物を探す子供たち。日本人から見ると不幸じゃないですか。でも、物質的なものと人間の幸・不幸は必ずしも関係ありません。

では何が関係するかというと、自分のモチベーションです。今の環境が幸せだと思えるかどうかなんですよ。

転職を考えるということは、現状を幸せだとは思っていないのでしょうね。でも、失業してもセーフティネットがある、そういう日本にいて幸せなはずですから、基本的には今勤めている会社で幸せな部分を探す方が先だと思います。

この記事を読める状況にある方は、多分十分に幸せでしょう。転職できる余裕があるとか、仕事を選べる国に生まれたとか、インターネットを利用できる環境にいるというのは十分幸せですから、そのことに気づこうということです。そもそもそこに気づかない人間は、たとえ転職しても何も気づきません。

幸せの定義にもよりますけど、人間、苦労して頭を使って生きていくことが最終的には幸せじゃないですか。

編集後記

16歳で塗装職人になり、今や業界が注目する経営者となった染矢社長。

「基本的にいつも困難ばかり。“選択肢はアローペイント一択”という理想をまだ実現していませんから、達成感を感じる暇はありません」と語る。成し遂げた成果の大きさに反して、驚くほどの謙虚さと冷静さが印象に残った。

旧態依然とした業界の風景を塗り替えることができたのは、本質を見抜く鋭い眼力があってこそだろう。その慧眼とこれまでの豊富な経験を活かし、同社では外国人実習生の人材研修、工事コンサルティングも手掛けている。今後も染矢社長の活躍が楽しみだ。

染矢正行(そめや・まさゆき)/大阪府大阪市生まれ。中学を卒業後16歳で職人の世界へ。2002年20歳にして独立し「染矢塗装工業」を設立。2009年、社名を「アローペイント」に変更。大規模修繕の専門家として多数のセミナー実績あり。同業者や不動産管理会社のコンサルなども行う。