※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

新型コロナウイルスの影響で、巣ごもり需要や在宅勤務など、生活の様式が大きく変化した近年。深刻なダメージを被った業種の1つが外食産業だろう。

そんな中でも「食の社会的インフラ」を目指して攻めの姿勢を貫き、存在感を増し続けたのがSRSホールディングスだ。職人の腕が不可欠なために難しいといわれていた和食分野でチェーン化を実現した同社は、コロナ禍や物価高でも快進撃を続けている。

「和食さと」「にぎり長次郎」など和食に特化した巨大ファミレスチェーンを率いるのは、3代目社長の重里政彦氏。重里社長が入社の翌年に生み出したメニューである「さとしゃぶ」は、現在も和食さとの看板商品だ。

常識にとらわれず、常に改革を進める重里氏に話をうかがった。

実は厳しい状況下で誕生した起死回生の「さとしゃぶ」

ーー創業者のお父様、現会長のお兄様から経営を引き継ぎ、社長になられたのが2017年。これまでの中で、印象に残っている出来事があればお聞かせください。

重里政彦:
実は、僕にとっては社長に就任してから現在までよりも、2008年に入社してからの印象の方が強烈に残っています。入社直後にリーマンショックが起きて、会社が非常に厳しい状況に陥っていたからです。

入社以前は商社で働いたこともあって、海外事業や仕入れなどを任される前提で入社したのですが、それどころではなくなり、主要事業である「和食さと」の事業責任者にいきなり就任。そのときが最も辛かったです。光が見えない状況でしたが、できることはすべてやろうと決意しました。

翌年の2009年6月、起死回生を図り、「120分しゃぶしゃぶ食べ放題」をうたった「さとしゃぶ」の提供を開始しました。その前に10店舗で実験を行い手応えは感じていましたが、200店舗余りでの本格導入となるとさすがに不安がありました。そのため、初日にある店舗で食材が不足するほどの状況を目にしたときには「これが顧客が待ち望んでいたものだ」と、大変嬉しかったものです。あのとき、店の前に行列ができていた光景は、一生忘れられません。

社長になってからは「止まったら終わる」という一心で、手を抜かず、おごることなく、常に商品のブラッシュアップに努めるとともに、M&Aも実行して事業拡大に取り組んできました。

業務効率化と顧客ニーズに応えるため最先端技術の導入を速断

ーー少し前まで、和食レストランではお客様のところに行って注文をとるというスタイルが一般的であった中、貴社はタッチパネル注文をいち早く導入されていました。社内で反感を買うなどの困難もあったのでしょうか。

重里政彦:
非常に苦労しましたよ。人間はやはり変化を嫌いますからね。特に弊社の「和食さと」はテーブルサービスがコンセプトにあって、注文から料理の提供、最後にお会計で感謝の言葉を述べるまでの全てのやり取りを含めてお客様に満足していただくものでした。

このスタイルが確立していましたから、お客様が自分でタッチパネルで注文する方法は以前のスタイルとは違うため、反対意見もありました。ですが、店舗のスタッフが忙しく走り回る様子を見て、お客様をお待たせしないためにも、業務の効率化を図るためにも導入を決断したのです。

他のファミリーレストランでもまだ導入していない中での挑戦ですから、当初はさまざまな困難がありました。でも現在では、世の中が人手不足になっていることもあり、どこも当たり前のように導入していますよね。

実は、タッチパネルの前にドリンクバーを導入していたのですが、このときもお客様が自分でドリンクを注ぐのはどうなのかということで、社内でもめました。しかし僕が懸念していたのは、従来の形式にこだわってお客様のニーズから離れていくこと。だから半ば強引に導入したわけです。

今年はAI配膳ロボを導入し、人手不足を補ったことで、特にお子様連れのお客様から高評価を得ています。

顧客満足度とともに従業員満足度の向上を

ーーコロナ禍では、飲食業はリスクがあるというような雰囲気も業界に漂ったと思いますが、貴社では休業手当を出されて対応されたそうですね。現在も従業員満足度を高めるいろいろな取り組みを実施されているかと思いますが、例えばどのような制度がありますか。

重里政彦:
飲食業ではおそらく初めてだと思いますが、7日間連続休暇制度の導入です。今では7連休を取らせない管理職は、社内で批判されるような風潮すら高まっています。

また、新入社員が独身で30歳までの場合、本社勤務ならどこに住んでも会社から補助や手当があり、本人の負担は実質1万円です。これは会長の時代から継続していることですが、まだ全グループでの実施ではないので、できる限り少しずつでも拡大していきたいと思っています。

社内環境については、本社では服装が自由であり、出社と退社の時間はフレックス制で、座席もフリーアドレスにしています。特に商品開発などは社内にいるよりも、外でいろいろなものを見た方がいいですから、そのあたりも個人に任せています。

飲食業は今後も人手不足が予測されています。そのため、働きやすい環境を作ることで従業員を大切にしたいと考えています。従業員を幸せにできなければ、お客さまを幸せにすることはできないと思っています。

編集後記

時流を読み、顧客ニーズにあった商品を提供する一方で、従業員も大事なパートナーと考え、働きやすい環境づくりにも積極的に取り組む重里社長。「SRSグループがなくなったら安くて美味しいものが食べられる場所がなくなる、と言われるような企業になれたらいい」と明るく語る。

コロナ禍で中食の重要性を実感したことから、現在はデリバリーやテイクアウトの強化に取り組み、2023年10月には持ち帰りぎょうざ専門店「一福」の関西初出店も果たした。

止まらない快進撃を見せ、“浪速の和食ファミレス王”とも呼ばれる重里社長。“日本の和食ファミレス王”と呼ばれる日もそう遠くなさそうだ。

重里政彦(しげさと・まさひこ)/1968年生まれ。東京大学を卒業し、株式会社トーメン(現豊田通商株式会社)、アリスタライフサイエンス株式会社を経て2008年サトレストランシステムズ株式会社(現SRSホールディングス株式会社)社長室長。2010年取締役、2014年副社長を経て、2017年4月社長に就任。