※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

後継者不足に悩んでいる企業もあれば、会社を買収して事業を拡大したい企業もある。それをマッチングさせるのがM&Aである。いわば、企業同士のお見合いだ。

株式会社M&A総合研究所は上場企業唯一の完全成功報酬制という料金体系と、AIによる効率的なマッチングを武器に急成長している会社だ。創業からわずか3年9ヶ月で上場し、業界内で時価総額3,500億円を超え1位(2月時点)のM&A仲介会社へと成長させた佐上社長とはどのような人物なのか。ご本人に話をうかがった。

農学部から起業家へ。紆余曲折の末にたどり着いた答え

ーーどのような学生時代だったのでしょうか?

佐上峻作:
神戸大学農学部で菌に関する研究をしていましたが、このまま研究者としてのキャリアを積んでいくことは性格的に合わないと感じていました。では何をやりたいのかと考えたところ、出した答えは「自分で会社を経営したい」でした。

手に職をつけようとダブルスクールでデザインの学校に通い、スキルが身についたところでデザインの仕事をいくつか受託しました。

その後、自分で通販サイトを立ち上げました。しかし、広告やSEOについての知識が全くなかったので、独学でマーケティングについて勉強をしました。

エンジニアリングを極めて、経営者への道を切り開く

ーーいろいろな職種がある中で、どうしてエンジニアを選んだのですか?

佐上峻作:
エンジニアリングが最も難易度の高いスキルだと考えたからです。経営に必要な要素を六角形で表現するとしたら、すべてが90点以上で無ければ経営者にはなれないだろうと思っていました。その中でエンジニアとしてのスキルが90点を取るのにもっとも難しいと考えたため、まずはエンジニアを目指しました。

また、アメリカにはエンジニア出身の起業家が多いことも、エンジニアを目指すきっかけとなりました。

仕事をしながらシステムに関する勉強を約2年半行い、その期間中、自身でシステムを開発し、エンジニアとしてのスキルを高めていきました。

4,000本の電話から、3年で上場へ

ーーエンジニアから経営者になった経緯を教えてください。

佐上峻作:
2015年に株式会社Alpaca(現在は株式会社メディコマ)を設立しました。この会社をM&Aで売却した後、上場会社やファンドなどとの取引で10件ほどのM&Aに携わりました。このとき、M&A仲介会社のアドバイザーは非常に優秀だと感じつつも、その効率性と料金体系の不明瞭さに課題を感じ、この課題を解決する会社が必要だと考え、まずは自分で調査や情報収集を行いました。その後独立を決意し、2018年に株式会社M&A総合研究所を設立しました。

従業員は私だけ、雑居ビルからの始まりです。最初は信頼が得られず、契約が難しい状況でしたが、泥臭く、粘り強く努力を続けました。たとえばマッチングのために数千社に電話をかけ、契約が決まるまで徹底して行いました。数をこなせば成功すると考えていたので、「まずやる」ということが大事でした。

どんどん実績が出てきたことで知名度が上がり、3年9ヶ月で上場できるまでに成長しました。

ーーわずか3年9ヶ月で上場できた秘訣を教えてください。

佐上峻作:
20代の間ほとんどは1日20時間以上働き続けていました。こういった努力と時間の積み重ねが、他者と差をつけることに繋がったと考えています。

失敗を繰り返してスキルアップ

ーー学生時代、なりたいイメージ像はありましたか?

佐上峻作:
当時話題になっていたマークザッカーバーグなどの経営者に憧れていました。

事業を立ち上げては失敗を繰り返し、自分のスキルや知識の不足を痛感しましたが、それを補うために、努力を重ねてスキルアップを図り、結果として仕事の守備範囲が広がり、今に至っています。

ーー佐上社長のおっしゃる仕事の守備範囲は、どのようなものですか?

佐上峻作:
ほぼ全てです。人事の仕組みをつくり、延べ数千人の方と面接を行い、そのうち数百名の方を採用しました。また、M&A総研の広報やテレビCMの制作では、企画から制作、実施まで全てを担当し、さらにはSEOや広告に関する組織を立ち上げました。上場後のIR戦略(決算説明資料や中期経営計画の作成なども含む)も私が立案しました。

AIを駆使して徹底的な効率化を図る

ーー独自のシステムを開発されたとお聞きしました。

佐上峻作:
最初は市販の既存システムを使用していましたが、半年ほどで契約を解除しました。そして使い勝手の良いシステムをゼロから作りあげました。弊社専用にカスタマイズされたオリジナルシステムですので、非常に効率が良いです。同業他社から転職してこられた方へのアンケート結果では、労働時間を27%削減できています。

ーーDXやAI技術で案件を取っているのですか?

佐上峻作:
AIの得意分野は「速さ」と「抜け漏れを防ぐ」ことです。
営業活動から収集されたデータは、この会社がどのようなニーズを持っており、またはどの分野に興味がないかなどを含んでいます。これらの情報はデータベースに保存され、営業提案が増えるほど、AIは学習して精度を上げていきます。

営業は提案リストを作成するためにAIを活用します。AIはデータに基づいて客観的な提案を行うため、抜け漏れを防ぎ、リスト作成を効率化できます。しかし、営業が作成する属人的なリストには、顧客のニーズや状況を踏まえた提案が含まれているため、AIだけでは補えない属人的な部分も大事になってきます。そのため、AIは人の営業活動を補完する存在だと考えています。

在籍2年超のメンバーの平均年収は2,800万円

ーー夢のような年収ですね。

佐上峻作:
会社自体が設立から5年半しか経っておらず、在籍5年以上のプレイヤーがいない状況で、これだけの年収をもらえることは、正直に言うと異常だと思います。未経験で年収1億を超える人も珍しくありません。M&A仲介のビジネスモデルは複雑で難しいため、参入しても撤退する企業が多いのです。

ーー将来のビジョンについて教えてもらえますか?

佐上峻作:
この業界においてナンバーワンのポジションを獲得することは当然の目標だと考えています。さらに、新しい事業領域での収益拡大に注力し、成長を続けていくつもりです。また、プロ経営者を社内で育成していきたいと考えています。一般的に経営者は非常に優秀な人が多いですが、M&A業界も優秀なプレイヤーが多いと思っています。そして弊社にも優れたメンバーがいます。そこで、経営者と同じような環境で学べば、経営者になれる可能性が高いのではと考えました。私は再現可能な方法で体系的に学んだことで、経営者になることができました。現在は、経営に興味を持ち、真剣に取り組みたいと意欲のあるメンバーを育てて成長させています。

ーーぜひ仲間になっていただきたい人物像はありますか?

佐上峻作:
ハードルは高いですが、弊社は時価総額で1兆円を超える企業に成長させることを目指しています。このビジョンに共感して本気で目指していただける方に来ていただきたいです。そのうえで、論理的思考力や問題解決能力を兼ね備え、素直で前向きに努力できる方と仕事をしたいです。

編集後記

マルチタスクという言葉では足りないほど、すべての業務に精通し、国内最年少のビリオネアとなった佐上社長。AIテクノロジーや徹底した自動化で効率化を図れるのはエンジニア出身の強みであろう。

数字をきちんと把握し、理論的に語る佐上社長には、時価総額1兆円超えの未来も見えているに違いない。佐上社長の挑戦に、これからも注目していきたい。

佐上峻作(さがみ・しゅんさく)/1991年大阪府生まれ。神戸大学農学部卒業。新卒でマイクロアドに入社し広告配信のアルゴリズム設計に従事したのち、EC・メディア事業を行うメディコマを創業。同社をベクトルに売却後、子会社社長に就任してから十数回の企業・事業買収と売却を実施。2018年にM&A総合研究所を設立。