※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

フランスの食文化を日本に届ける輸入会社として高い評価を受け続けている日仏商事株式会社。現在に至るまでの間、信頼を獲得し続け、2019年には創立50周年を迎えた。

今回は、代表取締役社長の筒井ミシェル氏から、入社から社長就任後の苦労や取り組んだこと、今後の展望などの話をうかがった。

フランスの子会社での勤務から日仏商事の社長へ

ーー貴社への入社のきっかけを教えてください。

筒井ミシェル:
弊社は、私の父ベルナールが1969年に創業した会社です。
私は大学を卒業後、1989年に弊社の子会社であるNFSインターナショナルへ入社しました。
ここは父と現地社員が立ち上げたフランスの会社なのですが、父から「日本とフランスをつなぐアンカーとして入社してほしい」と頼まれたことがきっかけで入社することになりました。
それからフランスで長く働いていたのですが、このままだと日本市場に疎くなってしまうという危機感を抱きました。
そして勤務して約10年が経った1999年に日本に帰国し、日仏商事へ入社することを決めたのです。

学生時代に弊社でアルバイトをしていた経験があり、そこで社員の方々とも交流があったので、特に抵抗なくスムーズに仕事ができました。

文化の違いを乗り越えてコミュニケーションが活発な会社に進化

ーーフランスの子会社に入社して学んだことは何でしょうか?

筒井ミシェル:
海外での仕事の進め方を知ることができたのは、とても学びになりました。

たとえば1980年代後半といえば、日本ではワープロがようやく世に広がっていった時代でしたが、そんななかパソコンを使って文書管理や計算表を活用したことは、貴重な経験でした。

また、自分の仕事をマニュアル化し、誰もが代わりに業務できる手筈を整えている点も良い勉強になった。ただそれは、同僚に仕事を預けて自身がバカンスに出るためだと知って、さすがフランスだなぁと思いました。

ーー一方で大変だったことを教えてください。

筒井ミシェル:
1つ目は、社長の息子という立場で入社したため、社内で常に模範的でなければならないというプレッシャーがあったことです。

もちろん、悪いことをやってはいけませんし、何をやるにしても手を抜かずに取り組む必要がありました。
ただ、フランスの子会社で働いていた時は、本社とは別会社だったため気を張らずに済んでいたので、ここは大きな違いだと感じました。

プレッシャーは感じつつも、そういった環境で働かせてもらったという感謝の思いが強かったので、結果的にいい経験になったと思っています。

2つ目は、コミュニケーションがとりにくい環境だったことです。

日本だと、ワンフロアで仕事をするオフィスが多いのですが、フランスの事務所では、社員1人1人に小部屋があり、それぞれそこで仕事を行うという環境でした。

最初はとても驚きましたが、これは文化の違いによるものなのだと理解しました。

しかし、この状況では社員同士のコミュニケーションが全く発生しないので、「大部屋でみんなで仕事をしないか」と提案したところ、意外とすぐ賛同してもらえました。その結果、オフィス環境を改善し、社員同士でコミュニケーションをとることができるようになりました。

ーー印象深いエピソードはありますか。

筒井ミシェル:
フランスで開催される洋菓子コンテストに挑戦する選手のサポートをしたことが、最も印象に残っています。

毎年必ず多くのハプニングが起こるのですが、各選手のサポートを行い、コンテストを無事に終えられるよう尽力しました。

私がアシスタントを担当した選手が翌年リベンジに来ていたり、現地のフランス人の方が優しく協力してくださったり、さまざまな人間ドラマが生まれるのでとても感動しました。

フランス文化の伝道師としてリアルな食文化を届ける

ーー日仏商事の社長としては今後どのような展望をお持ちでしょうか。

筒井ミシェル:
フランスの食文化をもっと実感していただけるようなサービスを展開したいと思っています。

食を通じてフランス文化を日本に伝えるという使命を持ち、お菓子やパンなどをどこでも買えるようにしたという点は、良かったと思っていますが、フランスの食文化を具現化できているとはまだいえません。

たとえば、焼き立てのフランスパンをすぐに提供できなかったり、フランス本来の味ではなく日本風にアレンジされた商品が販売されたりしている点が挙げられます。

そこで、フランスの本場のチョコレートやワインなどを、直接購入していただける物販サービスをスタートさせました。

これにより、フランスの食文化をお客様にもっと体験していただけるようになります。

また、サービスを提供する弊社の社員にとっても、もっと良い商品を入れたい、売りたいといった気持ちになるという点で良い施策だと感じています。

ーーそのために会社をどのようにして変革していくのでしょうか。

筒井ミシェル:
全社員が生き生きと働くことができ、同時に、フランスの食文化を食卓に届けられる会社にしていきたいです。

そのためには、弊社がフランス食文化の伝道師であるという点に立ち返り、弊社の存在意義を社員全員が認識できる状況をつくる必要があります。

今まで以上に社内コミュニケーションを活発化させ、フランスの食文化を伝えるというミッションを実現できる環境をつくっていきたいと思っています。

「柔軟性と紳士らしさ」を持って仕事に取り組んでほしい

ーー読者である若手人材へメッセージをお願いします。

筒井ミシェル:
個人でも組織でも仕事ができる人材になってほしいと思っています。

仕事をする上で個人のパワーはもちろん大事ですが、会社は組織なので、組織の中でもパワーを発揮できる柔軟性を持つことが大事です。

そのために、固定概念を捨てて、「超えられなければ潜ればいい」「ぶつかったら流れればいい」といった気持ちで取り組んでほしいです。

また、「紳士であること」も大切です。

弊社でも、何か判断しなければならないときは、「どちらを選んだ方が紳士的であるか」という基準で選ぶようにしています。

紳士であることは信頼を得られやすいですし、将来必ず成功する人材になると思っているので、ビジネスを行う上で意識してほしいところです。

編集後記

「フランス食文化をもっと日本に浸透させたい」という思いで新たな挑戦を続け、社内の活性化にも積極的に取り組む筒井ミシェル社長。
「フランス食文化の伝道師」として、新しい取り組みにも挑戦し続ける日仏商事株式会社から今後も目が離せない。

筒井ミシェル(つつい・みしぇる)/1965年神戸市生まれ、1988年甲南大学経営学部卒業後フランスへ渡り、1989年日仏商事株式会社のフランス子会社であるNFSインターナショナルに入社、1999年に帰国し日仏商事株式会社に入社。取締役総務部長、専務取締役営業部統括を経て2021年6月より代表取締役社長。一般財団法人 藤井幸男記念・教育振興会の理事を務めフランスパンの普及と製パン技術の継承活動に携わる。