オーウエル株式会社は、国内トップクラスの生産財商社だ。塗料関連の事業と、センサーなどの電気・電子部品の事業を中心に、国内に46拠点、海外に13拠点という大規模な事業体制を構築し、グローバル展開も進んでいる。
今回は代表取締役社長の川戸康晴氏に、社長に就任するまでの経緯や就任後の苦労、労働環境、今後の展望などについて話を聞いた。
代表取締役社長に就任するまでの道のり
ーー貴社の代表取締役社長に就任するまでの経緯を教えてください。
川戸康晴：
1994年、関西大学を卒業し、当社へ入社しました。塗料関連事業分野の営業から、新規上場時のプロジェクトマネージャー、執行役員として総務部・人事部・経理部の担当、取締役として経営企画室・グローバル戦略プロジェクトを担当するなど、様々な仕事を経験しました。
そして、現在の会長から次期社長就任の話があった際には、とても驚きましたが、「断る理由がない」と覚悟し、2022年6月の株主総会を経て、代表取締役社長に就任しました。
ーー社長就任から現在までを振り返ってみて今の心境はいかがですか？
川戸康晴：
覚悟をしていたとはいえ、実際にその時を迎えると、とてもハードな日々で驚きました。会社の代表というプレッシャーもあり、毎日ほぼすべての時間を会社や仕事のことを考え続ける状況になりました。
ほとんど眠れない夜が毎日のように続きましたが、就任してから約1年半が経ち、少しずつ自分の時間やリズムを確保できるようになってきました。
ものづくりへの熱い思いとチームワークの強さが武器
ーー様々な仕事を経験する中で印象に残る出来事はありますか？
川戸康晴：
日本の会社のものづくりに対する情熱と団結力の強さに圧倒されたことを覚えています。たとえば、何か不具合が発生したときは、全員が一致団結して知恵を出し、解決しようとします。
また、新しい材料を使ったり商品を開発したりする時も、少しでも良いものをつくるために、妥協せずに、真剣に、議論し、結論が出た後は、全員が同じ方向を向いて進んでいくというチームワークの強さも感じました。
海外企業では、同じことはなかなかできないのではないかと思いました。
社員が働きやすい環境とモチベーションが上がる福利厚生を整える
ーー労働環境や福利厚生の面でアピールできることは何でしょうか？
川戸康晴：
当社は、他社と比しても劣らない充実した福利厚生や働きやすい環境が整っていると自負しています。
例えば、従業員に対する家賃補助制度では、物件の家賃を会社が相当に高い割合で負担しています。
また、従業員持株会もあります。この制度は、当社の創業者が「社員の実績を会社の実績に反映し、社員自ら株式を持って頑張ってもらいたい」と考え、非常に早期に取り入れた制度です。社員の加入率も大変高くなっています。
これからも、社員のモチベーションアップにつながる制度をたくさん増やしていきたいと思っています。
国内外で新しい挑戦や課題解決に取り組んでいきたい
ーー今後はどのようなことに注力していく予定ですか？
川戸康晴：
ひとつの方向性は、新しい技術の開発です。直近ではJAXAやJALと共同で、航空機の機体表面にリブレット形状塗膜を施工し燃費を改善するという取り組みです。現在、実際の飛行における実証実験の最中です。
燃費を改善することでCO2排出量を大幅に削減することができるので、持続可能な社会の実現に貢献しています。
新商品や新技術の開発は、企業にとって永遠のテーマであり、それがいつ日の目を浴びるかはわかりません。
しかし、会社を発展させる上で必要不可欠なことであり、日の目を浴びる日まで諦めずに取り組み続けていきたいと思っています。
ーーグローバル展開について今後の展望があれば教えてください。
川戸康晴：
2008年に中国・大連に会社を設立したことをはじめとして、それ以降は韓国やベトナム、メキシコなどにも現地法人の子会社を設立し、グローバル展開を進めてきました。
以前のお客様の海外拠点の課題は、「要求されている品質のものをしっかりつくるにはどうすればよいか」という点でした。しかし、その課題がここ数年で「海外でより収益性を高めるためにはどうすればよいか」、あるいは「現地調達・現地生産、場合によっては現地販売といった、ビジネス全体をローカライズしたい」という風に変わってきたように感じています。
この新しい課題を解決するために当社が取り組めることがまだまだあるのではと考えており、そのソリューションをビジネスにしていきたいと考えています。
まずは目の前の仕事に全力で取り組むことを大切にしてほしい
ーー最後に読者である若手人材に向けたメッセージをお願いします。
川戸康晴：
まず、何よりも、目の前の仕事に全力で取り組んでほしいです。会社では誰でも役割があり、仕事を割り振られます。割り振った人が自分に100%の期待を抱いていたとしたら、それを上回る120％の成果を出すつもりで取り組んでほしい。
「とても基本的で当たり前なことだ」と感じるかもしれませんが、このような地道な努力を積み重ねることで実力がつき、実績をつくることができます。
与えられた自分の仕事に全力で愚直に取り組む姿勢を大切にし続けてほしいと思っています。
編集後記
代表取締役に就任してからは多忙により多大なストレスを抱えながらも、会社と事業に真摯に向き合い続けてきた川戸社長。
新商品、新技術の開発やグローバル展開など新たな挑戦にも積極的に取り組み、会社の発展に向けて今も行動し続けている。
「世界のものづくりを支える企業」を目指し、これからも成長し続けるオーウエル株式会社の未来は広がっている。
川戸康晴（かわと・やすはる）／1971年、鳥取県生まれ。1994年関西大学社会学部卒業後、オーウエル株式会社に入社。執行役員総務人事部・経理部担当、取締役経営企画室・グローバル戦略プロジェクト担当などを経て2022年6月、代表取締役社長に就任。
