※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

青盛建材株式会社は、新築マンションやビル、店舗、オフィス、公共施設などの内壁や床の防水、外壁工事を担当する専門工事業者である。

「いつも、そこに、あおもり」をキャッチコピーに、幅広い年齢層の社員と共に多くの建物の工事を手掛けている。

同社の西村氏に、代表取締役就任までの経緯や、人手不足解消の秘訣、今後の組織づくりについて話を聞いた。

失敗をバネに、赤字の回復と信頼を取り戻した支店長時代

――大学卒業後は別の企業に勤めていたとお聞きしましたが、貴社に入社された経緯を教えてください。

西村和信:
広島工業大学を卒業後、大建工業株式会社に入社し内装工事の部署にて3年間勤務しました。全国に拠点のある企業ですので転勤が多く、初年度は大阪、2年目で名古屋と勤務先が変わり、「これでは地元に戻ることができない」と思い、転職を決意しました。

名古屋で親しくなった取引先の社長さんに「広島に戻るなら青盛建材(現アオケン株式会社)という良い会社があるよ」と教えてもらい、推薦状まで書いていただきました。そのような経緯から青盛建材(現アオケン株式会社)に入社し、その後分社した現青盛建材株式会社広島支店の支店長に任命されました。

――支店長として働かれていた際の、印象深いエピソードなどはありますか?

西村和信:
支店長を任されたのは、リーマンショックの2年後です。厳しい時代ながらも景気は回復傾向にあり受注が舞い込んでいたのですが、私が時代の流れを読み切れず、采配ミスで職人不足に陥ってしまったのです。協力業者の人員を合わせても全く追いつかず、全国から人を集めましたが採算も合わないため、かなりの赤字を会社に背負わせてしまいました。

「俺について来れば大丈夫」と言って支店長に就任したにもかかわらず、その件により部下を何人か転勤に追いやることになり、逆に苦労をかけてしまったのが一番つらい出来事でした。

部下の人生を左右してしまう程の経験を経てからは、2度と同じことを繰り返さないよう、これまで以上に意識して仕事に取り組みました。同業他社と情報交換をおこない広島市場の状況をしっかりと把握し、受発注に備えて先手を打てるような体制を整えました。

それからは一度も赤字にならず、前回赤字を出した分の3倍の利益を出すことができたのです。おかげで転勤を余儀なくされた部下を全員広島に呼び戻すことができ、心から安堵しました。

背中を押され、15年越しの社長就任が結実

――支店長を経て、どのようないきさつで社長に就任されたのですか?

西村和信:
先代社長は、私が広島支店で支店長をしていたときの上司で、昔からの付き合いのある方でした。私が支店長になる前から「次の社長はお前だ」と言われ、経営の勉強もしておくよう釘を刺されていましたが、私自身は社長になりたいという気持ちがそこまでなく、踏ん切りがつかない状態でした。

役員会議で先代社長が「今期で社長を交代しようと思っている」と話をされたときも、私の心情を察して無理に引き継ぐことはせず、私が自ら手を挙げられるような環境を用意して待っていてくださったのです。入社してから15年後にようやく決心が固まり社長就任を果たしました。

人手不足解消のための具体的な取り組み

――貴社の強みを教えてください。

西村和信:
社員が一番の強みだと思っています。建材業界は人材不足が深刻な状況ですが、弊社では協力会社も含め若手社員が多く在籍し、機動力では他社に負けることはありません。

社員教育に力を入れ、資格取得支援などの制度も充実させています。制服も若手の意見を反映して、今年新たにつくり直しました。人事評価を見直しDXを図るなど、若手社員が働きやすい環境を整えることで、人材の確保につなげています。

――人材確保や社員の満足度向上のために取り組まれている会社の制度などはありますか?

西村和信:
社員やその家族に対して少しでも感謝の気持ちを示せればと思い、株式会社リロクラブの福利厚生倶楽部に加入しています。残業が多く泥臭いイメージの業界ですが、弊社が率先してその印象を払拭するべく、有給をしっかりと取得させ、昨年は男性の育児休暇制度も積極的に推進することができました。11月にはコロナ禍で中止になっていた社員旅行を実行し、皆で伊勢に行ってきました。

――勤怠アプリを使用されているとのことですが、その他にDXとして取り組まれている事項があれば教えてください。

西村和信:
人事マネジメントシステムを使用し、人事評価制度の見直しをしています。かつては個人の評価が正当にできておらず、利益のみを反映していました。このシステムを採用したことでプロセスの部分や人間性なども総合的に評価できるようになり、社員のモチベーションアップにもつなげられたと思います。

また、今後は施工管理アプリを使用し、営業管理に着手します。これまで営業は、主に顧客情報が頭に入っている上司がおこなっていましたが、物件情報をアプリで管理し全社員で共有することで、若手社員にも積極的に新規開拓に励んでもらうつもりです。そのために、経験と自信をつけられる環境づくりをしていきます。

若い社員が夢を語り合えるような会社へ

――最後に、今後どのような組織づくりをしていきたいかお聞かせください。

西村和信:
若い世代の方が夢を抱き、それを語り合えるような会社にしたいと思い、6ヵ年計画を推進しています。建築の世界は景気の波に影響されやすく安定しにくい業界です。土台がしっかりしていなければ夢や目標を抱くこともままならない状況が続くでしょう。まずは景気に左右されないような強い会社をつくり、彼らの成長を応援していきたいと思っています。

6ヵ年計画の1つとして若手が提案してくれたのが、これまでやっていなかったリフォームの案件です。「戸建て住宅を買い取り、リフォームをして貸し出しましょう」と積極的に計画を打ち出し、現在3件目を購入したところです。

こうして新規事業なども進めていき、10年、20年後に「本当に良い会社になったね」と社員に思ってもらえるような組織をつくり、次世代に引き継いでいくことが、社長のやるべきことだと思っています。

編集後記

建築業界の深刻な問題である人手不足解消のため、意欲的にDXや人事評価など若手社員が定着するような環境作りに励んでいる西村社長。

若い世代の方へのメッセージとして、「向上心を持って真面目に取り組んでいれば必ず評価されます。その中で自分がどうしたいかを発信できる人間になってもらいたい」と語った。生き生きと夢を語れる魅力ある会社として、今後も業界を盛り上げていくことだろう。

西村和信(にしむら・かずのぶ)/1967年山口県生まれ、広島工業大学建築学科卒。1989年に大建工業株式会社に入社し、その後アオケン株式会社を経て2005年に青盛建材株式会社に入社。2020年に同社代表取締役に就任。専門工事業としての地位の向上に努める。