株式会社ミルボン 業界トップメーカーの強さの秘訣とグローバル戦略に込めた想い 株式会社ミルボン 取締役会長 佐藤 龍二  (2020年10月取材)

インタビュー内容

【ナレーター】
経済の発展や美意識の進化により拡大する美容産業。しかし少子高齢化による市場縮小などの社会的課題を抱える国内において成長を持続させるためには、より広い市場に踏み込むことが必須となる。

そんな中、美容室向けの業務用ヘア化粧品で国内トップシェアを誇りつつ、グローバル化や新事業を推進している企業がある。株式会社ミルボンだ。

「美しさを拓く(Find Your Beauty)」をコーポレートスローガンに掲げる同社は、1996年には業界で初めて株式を店頭公開し、2001年には東証1部に上場。業界最大手の地位の確立と並行し、2013年には海外初の生産拠点となるタイ工場を竣工するなど、世界の美容市場を見据えた事業展開を進めている。

創業は後発組でありながら、美容のプロフェッショナル市場において圧倒的な存在感を放つミルボン。その強さの秘訣に迫る。

【ナレーター】
長崎県佐世保市で生まれ育った佐藤。米軍基地があった関係で、外国人がいることが当たり前の環境に身を置いていたことが、後のグローバル展開がスムーズに進められた要因のひとつだったという。

【佐藤】
外国人に違和感を持たない環境でした。食事に行っても飲みに行っても街の中に普通にいたからです。世界ということに対するひとつのイメージが幼少時代に自分の中の培われたことが、今、グローバル展開を進めていることにつながっていると感じることもあります。

【ナレーター】
そんな幼少期を過ごした佐藤が志したのは新聞記者だった。その理由について、次のように語る。

【佐藤】
世界とはどういうところなのだろう、この方たちはアメリカから来てることはわかるが、アメリカはどんなところなのだろうという興味と憧れのようなものがありました。それはなぜかというと、外国人が街の中に普通にいたから、遠いものじゃなくて身近なものとして感じられたのです。

それが世界を飛び回る新聞記者につながり、当時の私の夢になりました。憧れから夢になり、新聞記者になろうと思ったのですね。でもそれはすぐ終わるのですけどね。

【ナレーター】
学生時代は剣道に打ち込んでいた佐藤。その経験から得た学びとは。

【佐藤】
「道」というのは、ひとつの人としての生き方であったり、考え方であったり、そういうことを真摯に考え学べる場だと思います。その中には必ず基本があり、基本がちゃんとできなければ応用も効きません。

これは色々なところで基本は大事なことだし、人としての「型」を学ぶことができるという思いがあったので、自分のためになると思い続いたのが剣道ですね。

【ナレーター】
高等専門学校を卒業後、大手製薬会社へ就職。しかし、自身が思い描いたキャリアが歩めないことを悟り、1年半で退職を決断。その後、高専の就活担当をしている教師に声をかけられ、紹介されたのが大手IT企業と当時従業員数90名のミルボンだった。佐藤がミルボンを選択した理由とは。

【佐藤】
一つだけです。例えば大手企業には社員が1万人いるとしたら自分は1万分の1。しかしミルボンは90人の町工場のような会社で、まだ大卒入社が少ないので、私が入っても学歴は問題にならない、自分の力でやれると考えました。

一般的に考えると、1万分の1となる大手を選ぶと思います。しかし1万分の1より90分の1のほうが大きい、これを自分の存在感だと思ったら、90分の1のほうが夢があります。

町工場から町の会社、大阪の会社、そして上場企業といわれるような企業にステップアップしていく変化を、ずっと見てこられました。ミルボンがどう企業として変わっていくか、その様を見られたことは、私の中では非常に勉強になっています。

もうひとつは、ミルボンを選んでいなければ絶対社長にはなっていなかった。100%なっていません。

【ナレーター】
ミルボンへ入社後、徐々にキャリアを重ね、全国を飛び回って営業活動を行えるようになり、充実した日々を送る。何事もポジティブに捉えてきたという佐藤が語る、その秘訣とは。

【佐藤】
よく人はネガティブになったり、もっと言うと壁だと言ったりします。その「壁」は誰がつくってるんだと。「隣のおじさんが壁つくるか?先輩が壁つくったか?その壁は、自分でつくったのでしょう?」と話すのです。自分でつくって、どんどん持ち上げていって、そして壁にあたって益々ネガティブになっているのです。

これを「よく考えたらおかしくないか?誰もつくっていないし、その壁はあなた自身がつくったものでしょう?」と話します。それから、「よしわかった、つくってしまったものは仕方ない。いいことを教えるから。「潜れ」。超えようとなんて思うな、モグラみたいに潜って出てこい」と話すのです。

それは何を言いたいかというと、一つのことだけ考えるのではなくて、考え方をちょっと変えようということです。越えようとして越えられないとき、潜ることができたら、これも一つの方法だよねと。

発想を変えることによって道が開け、そこに光が差すと、人はポジティブになってきます。するとエンジンが一気に回り出し、いい方向に動いていくのです。

【ナレーター】
自身の成長につながった出来事として、過去の仕事での大失敗を挙げた佐藤。その中で特に印象深いのが、「清濁併せ呑む」という言葉だ。知られざるそのエピソードに迫った。

【佐藤】
ある日、会社に返品が山のように来ました。数日前に顧客であるオーナーとのやり取りで、私は当時、正論だけを主張していたために衝突してしまいました。もう来なくていいと言われ、それで終わるのかと思っていたら、返品がどっと返ってきたのです。これは参りましたね。

でもそれによって私は、「清濁を併せ呑む」という言葉の意味を本当の意味で理解しました。何でも正しいこと、清いことがいいことではなく、しかし濁り過ぎてもいけないと。

これもちょうどいいところがあり、しかもその時のタイミングや人や色々なことによって変わっていくわけで、これは人の機微だとか清濁だとかがわからないと、やはりビジネスもうまくいかないことを勉強しました。これは今でもはっきり覚えています。

【ナレーター】
この大失敗には、実は後日談があると佐藤は付け加える。

【佐藤】
1年後に電話かかって来たのです。大失敗をしてしまったお客様から「来てよ」と言われて、その後そこからはずっとお付き合いが続いています。まさに人としてどうするかという清濁や機微が、やはり大事なのだと学びました。

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経営者プロフィール

氏名 佐藤 龍二
役職 取締役会長
生年月日 1959年10月18日
出身地 長崎県
座右の銘 未来、それは自分の意志
愛読書 坂の上の雲、佐久間艇長の遺書
尊敬する人物 鴻池一郎(創業者)
略歴
1981年ミルボン入社。関東エリアでの営業を担当後、1992年にマーケティング部へ異動、商品企画や業界に向けた大型メッセージイベントなどを手掛ける。2008年に代表取締役社長へ就任。2010年に新たなグローバルビジョンを掲げ、本格的な世界展開を開始。2017年には(株)コーセーとの合弁会社を設立し、美容室専用の化粧品事業に着手。

会社概要

社名 株式会社ミルボン
本社所在地 東京都中央区京橋2丁目2番1号 京橋エドグラン
設立 1960
業種分類 化学工業
代表者名 佐藤 龍二
従業員数 870名(連結1,140名)※2023年12月31日 現在
WEBサイト https://www.milbon.co.jp/
事業概要 美容室専売ヘアケア商品やヘアカラー剤などの製造・販売を行う国内最大手の美容室向けヘアケアメーカー
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