※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

急速に普及しつつある歯科医院向けクレジットカード決済サービスPay Light(ペイライト)サービスをご存知だろうか。株式会社スマートチェックアウトが開発したこのサービスを導入した歯科医院数は、開始から3年間で1万院まで増大した。

今回は代表取締役の玉井雄介氏から、会社の理念についてや、短期間で会社を大躍進させた秘密をうかがった。

代表取締役になるまで

――「国民の健康と幸せ」を考えた会社づくりの原点はどこにあるのでしょうか?

玉井雄介:
私の前職はサラリーマンでしたが、当時は利益を上げることばかり考えていました。しかし、それに行き詰まりを感じていたところ、スマートチェックアウトと出会い、経営を引き継ぐことになりました。そこで、「社会のために生きていく、社会のために仕事をする」という大きな使命を見出しました。

私が代表取締役になったときには、社員はアシスタントと私の2人だけでしたので、きちんとビジョンをつくっていかなければという責任感もあり、サラリーマン時代とは異なった生き方に意識が切り替わりました。

歯科医院業界におけるPay Lightの影響と成長

――Pay Lightのサービスについて詳しく教えていただけますか。

玉井雄介:
Pay Lightとは、簡単に言うと、弊社が開始した歯科医院専用の治療費クレジットカード支払いサービスのことです。

その特徴は、クレジットカード手数料を3%から1.5%に引き下げたことです。Pay Lightは歯科医院にとって圧倒的なコストダウンが図れるサービスです。従来の3%と、現在の1.5%を比べると、キャッシュレス決済の使用率が全く違います。

――Pay Lightをご利用の歯科医院さんは増加していますね。サービス導入までのご苦労はありましたか?

玉井雄介:
旧態依然の手法で業務を進める金融業界において、決済手数料の相場を大幅に下げていくことは簡単ではなかったです。

しかし、患者さんと歯科医院双方の利便性を考え、正しいと思えることに弊社は力を傾けました。弊社の掲げる目的や使命は「社会のために生きていく」ということですので、あえて業界の常識を覆してでも業務を進めました。

さらなる目標、そして今後注力していきたいSaaS事業

――さらなる目標はありますか。

玉井雄介:
弊社の目標は、歯科医院さんのメリットに貢献するのはもちろん、患者さんにも向けているのです。患者さんが歯科医院をもっと気軽に利用でき、通う頻度が高くなれば、治療も首尾よく進み、最終的には患者さんの健康につながる。若くて健康な人でも、定型的に歯科医院に通いやすい仕組みができれば、一定の頻度で訪れる場所になり得ます。それはいわゆる予防診療にもなります。

そのような環境をつくること、そのように社会に貢献するというのが弊社の目的であり、本質なのです。

また、弊社としてはSaaS事業を中心にこれから据えていこうと思っており、軸足を移そうとしている事業として今後注力していきたいと考えています。

事業運営におけるAIの役割と人材採用について

――企業戦略として取り入れていることはありますか?

玉井雄介:
今50人程いる社員のうち、20人程がエンジニア、20人程が営業です。弊社では、社員のスキルアップにつながる取り組みを多く取り入れています。たとえばカスタマーサクセス(顧客の成功体験を実現させる取り組み)やマーケティングオートメーション(マーケティング業務の自動化)などです。

具体的には、弊社の電話の内容はテキスト化され、会話の内容を評価しています。合理化にも非常に積極的で、RPA化(ソフトウェアロボットを用いた業務の自動化)を行っています。

――社員の採用において重視していることは?

玉井雄介:
「終身雇用」が日本の文化において大きな強みを持っていると考えています。いったん入社したならばずっと働いてほしい。「死ぬまで一緒に働く仲間」という意識は欧米の会社とは異なります。弊社に入社した仲間とは、これからもずっと一緒に働いていきたいと思っています。

また、この会社は主体的にチャレンジする精神を持つ集団、いわゆるスマートクリエイティブな人材の集まりにするのが目標です。

そのため、採用基準を厳しくして優秀な人材だけを採用します。応募者の経験や、逆に失敗談も重視しています。失敗を恐れずにチャレンジしたことは成功の糧だと捉えていますから。

ーー玉井社長自身の変わらない理念はありますか。

玉井雄介:
サラリーマンの頃から大事にしていることは、とにかく諦めないこと、そして、価値を創造することです。それから、固定観念を持たないこと、常に目標を持ち、楽しく次を考えることを心掛けています。

テクノロジーとヘルスケアの未来

――貴社の今後の展開について伺えますか。

玉井雄介:
今後3年以内に、弊社独自のAIエンジンの構築やR&D(リサーチ&ディベロップメント:研究開発によって新しいビジネスを生み出す取り組み)部門の立ち上げを予定しています。

また、患者さんに対する医院の受付の向き合い方にも新しい技術を取り入れていきます。たとえば、AIによる電話応対、予約システムの構築などです。

そして、最新テクノロジーの別の局面として、いわゆるゲノムの世界への投資も考えています。ゲノムと口腔医療との関連性は深いのです。

私のプライベートでは、来年アフリカのキリマンジャロに登るなど、様々な非日常的なチャレンジを予定しています。非日常の体験により、日常のありがたみがさらに深く感じられ、仕事にも活かせると思っています。

編集後記

低手数料のキャッシュレス決済システムを構築し、歯科医院と患者の両方に利益をもたらす事業を推進する玉井雄介氏は、最先端テクノロジーに精通しながらも、あえて終身雇用を重視し、社員の生き方を大切にする、人間味溢れる方だった。

今後も、より多彩なサービスを展開し、患者と社員の幸せを追求しながら、新たな領域に事業を発展させていくことだろう。

玉井雄介(たまい・ゆうすけ)/1977年、愛媛県生まれ。2000年に株式会社日商システムに入社し、ファイナンス事業に携わる。2005年、保証会社である株式会社AGIを設立。カード決済や信販事業などの事業立ち上げに従事。2017年8月に株式会社スマートチェックアウトの代表取締役社長に就任。歯科医院向けクレジットカード決済サービスPay Lightをサービス開始から3年間で導入医院数1万院を達成。歯科医院を対象としたSaaS事業にも注力している。