※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

1970年に創業し、2015年に法人化を果たした榎本調剤薬局。地域のかかりつけ薬局として、東京・立川の地でコンセプトの異なる4店舗を運営している。

代表取締役の榎本祐子氏に、法人化のきっかけや成功の裏側、今後の展開についてうかがった。

榎本調剤薬局の事業内容について

ーー貴社の事業について教えてください。

榎本祐子:
保険調剤薬局として、医療機関で発行された処方箋にもとづき、調剤したお薬を患者様にお渡ししています。出生時からお亡くなりになるまで、地域の皆さまの健康をサポートしていくことが事業の根幹ですので、病気の予防段階から相談をお受けしています。

ご自宅で療養中の患者様にお薬をお届けするなど、「在宅医療」にも力を入れています。訪問先には、難病と闘う方や末期のがん患者様、住み慣れた地域で最期を迎えたいと思う患者様などがいらっしゃいます。

経営危機からの法人化――薬局ビジネス成功への道のり

ーー榎本社長のご経歴を教えてください。

榎本祐子:
私は東京都立川市で生まれ、三姉妹のひとりとして育ちました。父が調剤薬局を経営していたことから中学時代には「家業を継ぎたい」と考え、薬科大学へ進みました。卒業後は都立駒込病院での勤務、薬局での修業を経て、出産を機に榎本調剤薬局の専属となりました。

ーーターニングポイントはいつでしたか?

榎本祐子:
私が40歳の頃、父ががんを患いました。当時の榎本調剤薬局は個人事業主としてお客様に薬の使用許可を出していたので、当薬局で唯一使用許可を出せる立場にあった父が亡くなると薬の使用許可を出せなくなることから、法人化が急務でした。提携先のお医者様も高齢となり、患者様が減少していたので事業の立て直しも検討しました。経営コンサルタントの方と相談し、まずは3店舗展開による「経営の安定化」を目指したのです。

ーー貴社の強みをお聞かせください。

榎本祐子:
幼馴染である、ぜんしん整形外科立川スポーツリハビリクリニックの守重昌彦先生、外来だけでなく在宅でもお世話になっている立川クリニック(内科)の池田健一先生、イケメン歯科医師で有名な立川アローズ歯科クリニックの久保賢仁先生、そして私、の4人で「立川北口メディカルモール」をつくりました。

地域医療を支えるには外来客を集める必要があり、多摩地域の中でも人口が増えている立川駅前に注目しました。ドクター陣も魅力的なので、今では1日300人以上の患者様が来るモールとなっています。榎本調剤薬局としては、「店舗がきれい」というブランディングも集客や人材採用に効果をあげているのではないでしょうか。

生産性とサービス満足度を上げるために

ーーパートナー制の導入について詳しくお聞かせください。

榎本祐子:
弊社が運営している西立川本店では、非薬剤師の事務スタッフを「パートナー」と呼び、1人の薬剤師につき1.5人ほど導入しています。分業により、薬剤師が対人業務に注力できるようになりました。

パートナーは調剤事務はもちろん、調剤助手としてのお薬集めから患者様の契約管理まで行っています。どれも重要な作業ですが、薬学的判断やライセンスが必要ない場面をパートナーに託すことで生産性が上がりました。薬剤師の人数は同じままで、在宅訪問件数が倍増したという効果も出ています。

カウンセリングの間にお薬がご用意できることで体感的な待ち時間も減らせます。「早く帰りたいから解説は不要」とおっしゃる患者様もいますが、対話の中で医師の処方ミスが判明することもあり、「薬剤師がしっかり話を聞いてくれた」という満足度も高まるでしょう。

ーー独自の取り組みやPRも話題となっていますね。

榎本祐子:
ものづくり補助金、IT導入補助金などの助成金を活用し、中小企業ならではの設備投資をしています。立川に貢献するためにも医療の質と親切さ、速さを追究し、広報では目立つ必要があります。

巨大看板やバス車内の音声広告を出したり、「えのちょー仮面」というゆるキャラをつくったり、PRにも積極的です。地域のドクターに知っていただくことで、在宅医療に関するご相談を受けるケースもあります。

各店舗のコンセプトと今後の展開

ーー各店舗のコンセプトを教えてください。

榎本祐子:
本店は、高齢者をはじめとする地域住民へ向けた「在宅医療の中心地」です。在宅医療に欠かせない無菌調剤室や医療機器を導入し、本店からすべての在宅医療関連業務を行っています。

産婦人科クリニックに隣接するコクーン店は、「全世代の女性にやさしい薬局」として女性スタッフを集めています。2階には地域の人が集えるカフェがあり、認知症予防教室や育児に役立つ講座など、弊社主催のイベントを開いています。

立川北口店は通勤客や学生の方がターゲット層です。駅前ということで夜8時まで営業しており、日曜日も利用可能です。カウンセリングユースとともにスピーディーさを心がけています。

立川北口大通店は、駅前路面店として「近隣のクリニックから大通店に集めていく」というコンセプトです。立地的にも試み的にも、弊社の顔になっていく店舗だと考えています。

ーー今後の目標をお聞かせください。

榎本祐子:
在宅事業を強化し、5〜6店舗に拡大することが現在の目標です。立川や近隣エリアで運営し、人材や在庫を効率化することで、利益率の増加を目指します。

生まれてからお看取りのケアまでサポートできる薬局として、地域での存在感を今後も増していけたらと思います。

編集後記

危機を迎えた家族経営の薬局を見事に立て直し、地域で唯一無二の存在にまでした榎本社長。

学生時代にはバックパッカーとして世界を旅したというエピソードも飛び出し、「未知」を恐れないチャレンジ精神が今の成功につながっていると感じた。

榎本祐子(えのもと・ゆうこ)/1975年、東京都立川市生まれ。1998年3月、明治薬科大学衛生薬学科を卒業(薬剤師免許を取得)。同年10月より都立駒込病院に勤務。2003年4月より榎本調剤薬局に勤務。2008年、薬剤師による在宅訪問を開始。2015年に父から事業を継承。2018年に立川北口店、2019年にコクーン店、2022年に立川北口大通り店を開く。2018年、多摩信用金庫より第16回多摩グリーン賞 優秀賞を受賞。2020年、経済産業省により、地域未来牽引企業に選定される。