※本ページ内の情報は2024年5月時点のものです。

株式会社CoLife(コーライフ)は、デジタル×人で住宅業界の課題を解決するメンテナンス企業だ。住宅事業者と居住者を繋ぐ住宅メンテナンスのプラットフォーム「iecon(イエコン)」は、家の中で発生する不便なことや住宅設備の不具合などのトラブルを把握し、住まいの体調を可視化することができる。

「家ナカにマーケットプレイスをつくる」というミッションを掲げる同社の事業が生まれたきっかけは何だったのか。代表取締役社長兼CEOの池内順平氏に、起業のきっかけや事業内容、将来の展望などについてうかがった。

大手デベロッパー時代に感じた「問い合わせ先の明確化」の大切さ

ーーまずは貴社を起業したきっかけをお聞かせください。

池内順平:
大学卒業後は大手デベロッパーへ入社し、住宅に関わる業務を担当していました。しかし少子化により人口が減り続ける日本で家をつくり続けることに疑問を抱き、これからは家を引き渡した後の接点づくりが重要な時代になるのではないかと思い、そのような新規事業を立ち上げました。

事業に取り組む中で気付いたことは、お客様が住宅業者に求めることは、入居後の問い合わせ先のわかりやすさだということです。たとえば給湯器が壊れたときなどの問い合わせ先ですね。そのように、家で何か不便を感じたときに、それを解消する問い合わせ先を明確にするサービスをつくりたいと思うようになり、起業を決意しました。

ーーそのサービスは、当時の勤務先でつくることは難しかったのでしょうか?

池内順平:
大企業ではダイナミックな仕事ができる面白さがある一方で、日々起きることや問い合わせに対して改善を繰り返さなければならず、また異動もある環境でした。

そのような中で新しい事業をつくり、軌道に乗せるのは難しいと感じたため、独立することを選びました。

ーー起業することについて、周囲の反応はいかがでしたか?

池内順平:
「そんな小さな事業を仕事にするのか」と驚かれました。しかし「日々の生活の中で困ることを解決したい」「人が必要不可欠としているものを提供したい」という軸を貫き、事業に取り組んできたおかげで今まで続けてこられたので、起業するという決断は間違っていなかったと思っています。

競合の少ない「暮らしの不便を解消するプラットフォーム」を提供

ーー貴社の事業内容について、具体的にはどのようなことに取り組んでいますか?

池内順平:
「不動産テック×人のサービス」というテーマを掲げて、住宅事業者と住宅オーナー・居住者をつなぐプラットフォームを提供しています。

住宅設備などで何か不具合があった時、取扱説明書のどこを見ればいいのか、問い合わせ先はどこなのかがわからないといった悩みが出てきます。弊社のサービスはスマートフォンアプリと連動したシステムを活用しているため、それらをスマホ1つで解決することができます。

また住宅設備の修理やリフォームも全て弊社で完結させることができます。

このように、「人が提供するサービスとテックをかけ合わせることで、家全体の不便を解消しよう」という目標を持ち、事業に取り組んでいます。

ーー貴社の事業は競合他社が少ないように感じますが、実際はいかがですか?

池内順平:
「修理やリフォームの分野」「テック分野」といったように、それぞれの分野では競合がいますが、それらを組み合わせてプラットフォームとして提供しているところは弊社以外にほとんどないと思います。

実際に多くのパートナー企業から、「競合が少ない業界であり、ありそうでなかった事業モデル」という点で評価していただいています。

ーー貴社の事業を通して、将来的にどういったことに取り組んでいきたいですか?

池内順平:
私たちは、日々メンテナンスや問い合わせ先を明確化する中でそれらをデータ化しています。将来的にはそのデータが集まった住宅を認定住宅として、不動産価値を高めていくところまでつなげていきたいと考えています。

業界全体の課題にグローバルに取り組む企業に成長させたい

ーー今後のビジョンについて教えて下さい。

池内順平:
目下、注力していきたいことは2つあります。

1つ目は、新規取引先を増やすことです。日本の新築住宅の提供ベースでいうと、現在約10%程度、弊社のプラットフォームを採用いただいています。これを20〜30%にまでシェアを広げることができれば、業界全体の課題解決に取り組めると思っています。今までは大手企業の取引先が多かったのですが、他にも素晴らしい企業がたくさんあるので、まずはプラットフォーム連携から始めたいと考えています。

2つ目は、海外展開です。取引先のデベロッパーやハウスメーカーも次々と海外へ進出しているので、弊社も声をかけられる機会が増えてきています。弊社のエンジニアには外国籍の社員もいるため、日本のシステムを海外に持っていくことも目指せる状態だと思っています。

しかし、メンテナンスを行う職人は国や文化、法律などの違いにより、ローカライゼーションすることは難しいという課題があります。システムの部分だけを先に海外へ出すのではなく、人のサービスとセットにした事業モデルを体現していきたいので、そのためにはもっと日本で実績を積む必要があると感じています。

将来的には、「ホーム衛星」を打ち上げたいと思っています。衛星を使えばそこから屋根の形状や外壁の寸法などがわかるので、家を維持させるために有効活用することができます。将来的には、衛星から家の価値やメンテナンス状況も把握できるようにしていきたいと考えています。

編集後記

池内社長は「マンションや戸建てなど、建物はそれぞれ違う生き物であるため、弊社のサービスは全てプラットフォームを分けて提供している」と語る。全てオーダーメイドでデータをつくっているため、修理する際は型番や説明書の確認も自社で行い、依頼者に手間をとらせない仕組みになっているとのこと。

このように「住まいの不便さを解消するために必要なものは何か」を追求してきた同社だからこそ、他社と差別化を図れるサービスに成長させられたのだと感じた。建物を長く活かす時代となる日本において、同社のような不動産価値を高める会社はさらに重宝されていくだろう。

池内順平/1978年岡山県生まれ、早稲田大学卒業。大手デベロッパーへ入社。住宅関係の事業に従事したのち、2015年、不動産テック企業として株式会社CoLifeを創業。iecon(イエコン)というプラットフォームを展開中。