※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

株式会社ワールドツールは、豊富な品揃えとリーズナブルな価格で人気の自動車工具専門店「アストロプロダクツ」を展開する会社だ。代表取締役社長の中島勉氏は、代理店ビジネスで成功した経験をもとに同社を設立した。

現在、全国に約200店舗を展開している同社だが、一体どのようにして会社を成長させたのか。中島氏に、今までの道のりや事業の強みを聞いた。

自動車工具店の代理店ビジネスで成功した後、自らの店舗を全国に展開

ーー起業するまでの道のりをお聞かせください。

中島勉:
もともと起業には興味があり、高校生の頃に家庭教師の派遣事業を自分で立ち上げたことがあります。ただ、この事業は上手くいかなかったため、「高校卒業後はすぐに起業せず、ひとまず何らかの職に就こう」と考え、就職することにしました。

その後、いろいろな仕事を経験しましたが、その中でも大きな転機となったのが、自動車工具商社へ入社したことです。同社には給与が高いことに惹かれて入社しましたが、いざ働いてみると営業の仕事がとても楽しく、とにかく一生懸命働きました。

そして、入社から3年ほど経ったある日。「スナップオン」というアメリカの自動車工具メーカーが、日本で代理店を募集しているという話を取引先から聞きました。

高校時代に事業立ち上げを試みるほど起業に興味があった私は、この話を聞いたとき、「挑戦したい」と強く思い、代理店加盟のための資金を貯めることを決意。それから約1年後、目標金額を貯めることができたため同商社を退職し、23歳のときに代理店ビジネスで起業を果たします。

ーーそれから貴社を立ち上げるに至った経緯を教えてください。

中島勉:
「スナップオン」の代理店になった後、最初に始めたのが自動車修理屋を1日35件ほどまわる飛び込み営業。最初は1日1件売れたら良いほうでしたが、地道に営業活動を毎日続けているうちに、お客様がどんどん増えていきました。

営業活動は順調でしたが、徐々に「自分で訪問販売をするだけでは、売上に限界があるな」と感じて、お客様に来店してもらえるよう、店舗を構えることにしました。しかし、いざ開店してみたものの、1年経っても来店客は増えないまま。会社の資金もどんどん減り、このときは「もうダメかもしれない」と本気で思ったことを覚えています。

そんな中、古い車(オールドカー)に特化した雑誌「オールドタイマー」が広告主を募集していることを知り、「これでダメならお店を畳もう」と、最後の試みとして広告出稿に挑戦。お店を畳むことまで覚悟していましたが、結果、その翌日から電話が鳴り止まず、来客も止まらないほどの反響があったのです。

なぜそこまで反響があったのか、後で振り返ってみたんですが、その頃はアメリカに買い付けに行って仕入れていた商品があって、「日本では手に入らないものがうちの店にはある」ということが読者に伝わったんでしょうね。

反響があったことは本当に嬉しかったですし、それと同時に、「自分が販売している商品には需要がある」という確信にも繋がりました。この気づきをきっかけに、一般ユーザー向けの工具専門店「アストロプロダクツ」を展開し、現在に至るという流れです。

顧客から評価される理由は「日本にない商品」と「スタッフの質の高さ」

ーーどのような事業を運営していますか。

中島勉:
弊社は、自動車工具の専門店を展開している会社です。ホームセンターには置いていない専門的な工具を多数取り扱っており、お客様からは「日本では見つからないアメリカにある工具が安く手に入る」と評価されています。

過去に代理店ビジネスで成功できたのも、「日本にはない面白い商品がいち早く手に入る」という点が評価されたからでした。その経験から、弊社では日本のマーケットのニーズはあるものの、日本ではなかなか手に入らない商品を展開するようにしています。

ーー事業や店舗の強みはどういった点にありますか。

中島勉:
強みは、スタッフの接客レベルが高い点です。一般的なホームセンターでは、スタッフからお客様に声をかけることは少ないですが、弊社の店舗ではスタッフ自ら「何かお求めですか?」といったお声がけをし、できる限りお客様のお困りごとをキャッチアップするよう指導しています。

また、日本ではなかなか取り扱われていない商品を多く展開しているので、それぞれの工具をどのように使うのかなど、工具に関する勉強会も開いており、スタッフたちの商品知識が豊富な点も強みです。

今後はECと実店舗の融合やチーム力強化により一層力を入れる

ーー今後のビジョンをお聞かせください。

中島勉:
地方への店舗展開に加えて、海外展開も進めており、すでにタイ・バンコクへ出店しています。

また、越境EC(国境を越えた取引)を含めた、EC販売に力を入れることも重要なテーマです。たとえばインターネットで注文した商品を店舗で引き取ることができるようにするなど、インターネットと実店舗の融合に力を入れていきます。

そのほか、特にこれから重視したいのが、チームとしてより良い店舗をつくることです。弊社は店舗の人材が高い点が強みではありますが、店頭に立つのが苦手な人に、無理に接客を任せるといったことはしません。できないことは無理に任せず、本社も含め組織として協力し、より良いお店づくりに取り組んでいます。

これらの目標を達成しつつ、お客様の手の届きやすい価格で商品を提供し、長く愛される店舗を目指していきたいです。

編集後記

ピンチの際でも諦めず、どうにかして会社を上向きにさせようと試行錯誤した中島社長。この根気強さが、現在の全国200店舗という結果につながっているのだと感じた。最後まで諦めない強さを持つ中島社長と、お店を信頼して任せられるスタッフがいる同社なら、海外進出などの新たな挑戦もきっと実を結ぶはずだ。

中島勉/1965年、東京都文京区生まれ。埼玉県富士見市で高校卒業後就職。1986年工具商社へ就職後、1989年工具メーカー「スナップオンツールズ」代理店事業で起業。1995年、株式会社ワールドツールを立ち上げ代表取締役社長に就任。後に一般ユーザー向けの工具専門店アストロプロダクツを展開、現在全国約200店舗。