
モデラート株式会社は、2014年に設立され、2018年にアパレルブランド「SOÉJU(ソージュ)」を始動し、急成長を遂げているアパレル企業だ。「トレンドに流されずに装いのベースになる」服や化粧品などを開発・販売し、幅広い年代の方から支持されている。代表取締役である市原明日香氏に、これまでの経緯や今後の展望などについてお話をうかがった。
経営コンサル、CRM、事業開発……多彩な経験が今につながる
ーー大学卒業後、モデラート株式会社を創業するまでの経緯を教えてください。
市原明日香:
もともとは「外交官になりたい」という夢があり、大学では国際関係論を学んでいました。そのなかで国際経済などにも触れる機会があり、経営やビジネスに興味が湧いて、就職では経営コンサルティングを行うアクセンチュアに入社しました。
アメリカに本社がある企業で、入社後にシカゴで行われた研修では、英語でディスカッションするところから始まったため、大変な思いをしました。これまで英語で話した経験もなく、もちろんビジネス用語なども分からない状態で「何を言っているの?」というところからスタートし、必死で勉強していた記憶があります。
経営コンサルタントとして働くうちに、カスタマーリレーションシップマネジメント(CRM)に興味を持つようになりました。そこで、当時グローバルでCRMに取り組んでいたルイ・ヴィトン ジャパンに転職しました。
その後、知人が代表を務めるベンチャー企業で働いていた時期もあり、そこでは事業開発・人事・労務・経理など、必要なことは何でもやりました。全ての経験が現在につながり、活きていると感じています。
ーー起業し、アパレル業界を選ばれた理由は何だったのでしょうか。
市原明日香:
私は「服が好き」というよりは「服で悩むことが多かった」というタイプです。年齢を重ねるにつれてライフスタイルや体型も変化しますし、好みや心地よさを感じるものも年々変わっていくものです。そうした実体験から「どんなライフステージの方でも装いを楽しむ選択肢を増やしたい」と感じ、アパレル業界での起業を決めました。
心地よさを追求した「SOÉJU」はオン・オフ問わず、ずっと着られる一着

ーー代表的なブランド「SOÉJU」の特徴やターゲット層について教えてください。
市原明日香:
弊社が2018年から手がけているアパレルブランド「SOÉJU」は、年代を問わず心地よく着ていただくことができ、かつ手に取っていただきやすい価格であることも大切にしています。シーンを問わず、いつでも着られる服を目指してデザインしており、幅広い年代の方から支持されて嬉しく思っています。特に「素材にこだわった服を長く着たい」「マネジメント層になり、ふさわしい服を購入したい」といった、自分なりの選択軸をお持ちのお客様が多いのもSOÉJUの特徴です。
また、SOÉJUの大きな特徴としては、実店舗を持たず、EC販売専門で行っているという点があります。2018年にできたブランドで、その後すぐにコロナ禍の影響を受けたため、これまで実店舗で服を購入されていた方もインターネットで服を購入するようになったという背景があり、D2C企業として成長してきました。
一方で、やはり「ネットで服を買うのは失敗が怖い」と思っている方も多くいらっしゃいます。弊社には、販売を目的としない常設のフィッティングルームが東京にあり、そこで試着やアドバイスなどを行っているのも特徴的です。
新規顧客開拓に力を入れるということは、新たな人材が必要だということ
ーー今後の事業展開についてお聞かせください。
市原明日香:
新しい層のお客様も増やしていきたいです。SOÉJUはこれまで、「お求めやすい価格で、ずっと着られる服を販売しているブランド」として認知されることが多くありました。しかし、近年は普段着・おしゃれ着・仕事着の境界がほとんどなくなってきていることもあり、「普段からSOÉJUの服を着て、そのまま仕事もできる」といったお声をいただいています。イベントの時に着る服を探してSOÉJUの販売ページを見つけるだけではなく、日常使いできる服としての認知度も高めていきたいと思います。
そのため、東京にある常設のフィッティングルームだけでなく、日本全国で「出張フィッティングルーム」としてイベントを行っており、地方のお客様にも直接手に取って試していただける場所をつくり、お客様を増やしています。
また、これまで日本国内のお客様だけを対象に販売してきましたが、2024年9月からアメリカ、11月からは香港台湾向けのECサイトをつくり、販売をスタートしています。そのため、これまで以上に多彩なサイズ展開なども進めているところです。
海外向けのみならず、サイズ展開を増やすことは、日本国内でも大切です。現在はウィメンズサイズを想定して開発していますが、良いと思っていただければ性別を問わず着ていただきたいと考えています。
性別や国籍を問わず、多くの方にフィッティングルームにも足を運び、自分がこれまで選べなかったような服にも挑戦して、新たな一面を発見していただけると嬉しいです。
ーー事業展開にともない、社内体制についてはどのように考えていますか。
市原明日香:
やはり会社規模を拡大していくにあたり、新たな人材の採用は必要不可欠です。弊社には現在、「自分で考え、行動するのが好き」というタイプの方が多く活躍しています。決まった業務をこなすのではなく、新たなアイデアなどを常に持つ方と一緒に働けると、弊社の成長も加速していくと思います。
中途採用も行っていますが、アパレル業界出身者のみならずいろいろな業界出身者がおり、多様な観点から意見を出し合っています。
弊社は常により良い商品、サービスの開発を志しており、同じ志を持つ社員を採用することで、さらなる成長を目指しています。年齢に関わらずチャレンジできる社風で、柔軟な働き方を受け入れる会社です。
「ソージュの服は全方位心地良い」(着心地も、価格感も、環境への配慮も)と思っていただけるような商品を生み育て、世の中に新しい定番を浸透させられる存在になれたら嬉しいですね。
編集後記
経営コンサルタント・カスタマーリレーションシップマネジメント・事業開発などを経て起業した市原氏。多彩な経験を活かしながらも、自身や周囲のニーズに素直に応えることが、新ブランドの成長につながってきた。同社はこれから、多種多様なシーンで愛されるアパレルをつくり出し、国内外でますます存在感を増していくことだろう。

市原明日香/1976年福島県生まれ。東京大学卒業。アクセンチュア株式会社で3年間経営コンサルティングに従事後、ルイ・ヴィトンジャパン株式会社にて4年間CRMに従事。息子の闘病にともなうフリーランスの期間を経て、2014年12月にモデラート株式会社を設立。2018年9月にD2Cファッションブランド「SOÉJU」を立ち上げる。