
株式会社コネクト・インターナショナルは、タレントやキャラクターといったIP(知的財産)を活用したものづくりに特化したベンチャー企業だ。同社の展開する事業は主にIPに関連するもので、2024年の第12期にはその関連流通総額が30億円を突破した。独自のアプローチによって、IPビジネス領域での存在感を確実に高めている。
同社のD2Cブランド(※)事業では、現在9つのタレントブランドを展開し、ファングッズの枠を超えた高品質なアパレル商品を提供している。また、グッズ事業、カスタマイズ事業でも、国内外のアーティストやキャラクターとの提携を次々と実現するなど好調だ。IPファンを魅了する「新しいものづくり」を追求する同社の代表取締役、由羽弘明氏に話をうかがった。
(※)D2Cブランド:「Direct to Consumer(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」の略で、製造メーカーが自社のECサイトやSNSなどを通して消費者に直接販売するビジネスモデルを採用しているブランドのこと
異なる文化が交わる環境が育んだ国際協業への思い
ーーこれまでのご経歴を教えてください。
由羽弘明:
私は、神奈川県横浜市の中華街という多文化な環境で育ちました。台湾系の家庭だったこともあり、幼少期から日本語と中国語の両方に触れていたことで、自然と国際的な視点を身につけられたと感じています。
その後、慶應義塾大学の経済学部に進学し、卒業後は教育業界でキャリアをスタート。20代のころはタレント講師としてテレビ番組にも出演し、参考書も3万部超えのベストセラーを出版したりと、教育の分野で経験を積んできました。
その後、ブランドビジネスの分野に転身し、2013年に弊社を設立。代表取締役として今日までIPビジネスの拡張に取り組んでいます。
ーー起業を決意したきっかけは何だったのでしょうか?
由羽弘明:
高校時代から漫然と「起業家になりたい」という夢を持っていました。当時同級生の間で回し読みしていた『100億の男』という漫画のタイトルが頭に残っていて、「いつか自分も大きな規模のビジネスを動かせるような存在になりたい」と思ったのを覚えています。
「コネクト・インターナショナル」という社名にも、そうした思いが込められています。まず「コネクト」には、異なる価値同士をつなぎ合わせて、より大きな価値を生み出していきたいという思い。そして「インターナショナル」は、国際的な環境で育った経験を活かし、世界中とつながるビジネスをつくっていくという意思を。この思いは今も、弊社の原点であり、方向性を示す旗印になっています。
アパレルブランドとグッズ、カスタマイズサービスの3本柱で、IP領域でナンバーワンを目指す

ーー貴社の事業内容について教えてください。
由羽弘明:
弊社の主力事業は大きく分けて3つの柱に分かれます。
1つ目は、D2Cブランド事業です。この事業では、タレントやインフルエンサーの方々と一緒にオリジナルブランドを共同開発し、アパレルやコスメの企画・製造・販売まで一貫して展開しています。ファングッズの域を超えた、高品質で世界観のあるブランド構築を目指しています。
2つめはグッズ事業です。コンサートや展示会等での定番グッズ制作に加えて、弊社独自のオンデマンド製造サービス「KONNEKTED(コネクティッド)」を通じ、少量多品種での高効率なグッズ展開を実現。クライアントのECサイトと連携し、在庫リスクを抑えながらも商品数を増やす柔軟な生産体制を構築しています。こうした仕組みにより、従来のグッズ業界では難しかったニッチIPや限定企画商品も利益を出しやすい構造に転換しています。
3つ目は、カスタマイズ事業です。これは、2017年にロンドンのテクノロジー企業とともに設立した子会社「YR Japan(ユア・ジャパン)」が中心となって展開しています。有名なキャラクターやデザインの中からお客様が好きなものを選んで、オリジナルのカスタマイズ商品をその場でつくることができるサービスを展開しています。渋谷PARCOにある店舗では連日行列ができるほどの人気で、特にインバウンドのお客様から高い支持をいただいています。
ーー競合他社との差別化はどのような点にありますか?
由羽弘明:
事業において何より大切にしているのは、ナンバーワンのポジションを確立することです。ベンチャー企業が成長するためには、どこかの分野で「この会社が一番」と言われる存在になることが重要だと考えています。そこでコネクトでは他社に先んじて新しいサービスを提供するように心がけてきました。
当D2Cブランド事業においては、9ブランド全てがタレントプロデュース型。メンズやレディースなどのジャンルに縛られず、それぞれのIPが持つファンの熱量を最大化する設計を得意としています。
またグッズ事業においては、いち早くオンデマンド製造に取り組み、『ワンピース』などの人気IPと連携。「IP×オンデマンド」という分野では先駆者ポジションを築いてきました。
カスタマイズ事業でも、グローバルで最も多くの著名ブランドやIPと協業した実績を持っており、これら3領域でそれぞれ明確なNo.1戦略を持っていることが、弊社最大の差別化ポイントです。
「人」にしかできない価値提供で、変革の時代を勝ち抜く
ーー近年のAIの進化については、どのように捉えていますか?
由羽弘明:
AIは弊社のビジネスモデルと非常に相性が良いと感じています。AIは多くの業務を効率化してくれます。しかし、IPライセンス(※)の商品作りを任されるには信頼や実績が必要です。また著名人と協業においても、信頼関係の構築といった部分は、依然として人間の感性や判断力が必要な領域です。弊社はこうした実績を積み重ね、「人」にしかできない価値を提供し続けてきたため、AIの力を使うことで事業をさらに伸ばせるのではないかと考えています。
(※)IPライセンス:知的財産権(IP)の所有者が、他の企業や個人に対してその知的財産の使用権を許諾し、対価(ロイヤリティなど)を得る契約のこと
ーー今後の展望をお聞かせください。
由羽弘明:
弊社の仕組みを通して、「ファンの熱量が市場を動かす“IP経済圏”」をさらに広げていきたいと考えています。
そして今後3年を目処に、弊社がプロデュース・監修・IP提供を通じて関与した年間関連流通総額100億円規模の達成を目指しています。その目標を達成するために、これまでの実績と信頼を基盤に、弊社のソリューションに磨きをかけ、さらなる成長を図っていくつもりです。
この挑戦は、仲間の力なしには実現しません。今、弊社ではIPビジネスや“推し活”に興味があり、ファンの笑顔を生み出す新しいものづくりに情熱を注げる方との出会いを求めています。「ファンを笑顔にする」という弊社のビジョンに共感し、共に大きな挑戦に臨める仲間と、変革の時代を駆け抜けていきたいですね。
編集後記
これまで築いてきた信頼と実績を武器に、これから3年を目処に流通総額100億円を目指すという由羽社長の戦略は、確かな勝算に基づきながらも野心に満ちあふれている。AIという追い風を受けて、コネクト・インターナショナルはどこまで成長を加速させるのか。その答えは、そう遠くない未来に明らかになるだろう。

由羽弘明/神奈川県横浜市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大学卒業後は教育業界に飛び込み、20代でタレント講師として活躍しながら、参考書を出版。その後、ブランドビジネスを経験。2013年、株式会社コネクト・インターナショナルを設立し、代表取締役へ就任。2017年、ロンドンの会社とのジョイントベンチャーで子会社の株式会社YR Japan(ユア・ジャパン)を設立し、代表取締役を兼務している。