※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

「Rossa」は、本物を知る大人の女性に洋装を届ける高級ファッションブランドだ。その作品はヨーロッパの上質な生地や刺繡、レースを惜しみなく使い、伝統的な手法を通して、こだわりの美しさを旬のトレンドに散りばめる。東京、大阪をはじめ、全国各地に店舗を展開している。

代表取締役社長である宇野武氏はカリスマ的存在である創業者の故吉田貞子氏から2021年に会社の未来への舵取りを託された。アパレルとは異分野の経歴を持つ宇野氏が切り開く新たな「ロッサ」の経営戦略についてうかがった。

ロッサの志を継ぐ、献身と情熱の第一歩

ーー社長に就任されるまでの経緯を教えてください。

宇野武:
「ロッサ」は1957年にテイラーとして前会長の吉田貞子が創業いたしました。お客様ひとりひとりのニーズに合わせた丁寧な服作りの姿勢は創業時から今も変わりなく守られ続けています。

前会長は私の母の伯母にあたり、私はまるで孫のようにとても可愛がっていただきました。父も会社に在籍しており、物心ついた頃から「ロッサ」と「服づくり」はとても身近な存在でした。「自分も役に立ちたい、何かできることがあるはず」との思いで2003年に入社しました。

積極的に社長職を志向していたわけではありませんでしたが、当時社長であった吉田と事業承継に関する話を重ねるようになり、誰かが会社の歴史を受け継ぎ、未来を築かなければと思うようになりました。吉田の会長就任をきっかけとして、私が後を引き受け社長になりました。

「妥協なきものづくり」で、お客様に喜びを届ける

ーー会長から社長へとバトンが渡されましたが、ブランドを重視する路線はどうなりますか?

宇野武:
前会長は若い頃からファッションに魅了され、その類い稀なファッションセンスを活かした洋服は今もロッサの服作りに受け継がれています。今後のブランド戦略については、時代に寄り添いながらも前会長独自の感性を継承しつつ、「妥協のない服づくり」へのこだわりだけはぶれないようにしていきたいと考えています。

たとえば、生地ひとつとっても、デザイナー自らがヨーロッパの老舗メゾン御用達メーカーに赴き、生地を吟味し買いつけます。この生地を元にしてデザイン画を描きパターンを起こします。パターンとはデザインのイメージを立体に落とし込むための設計図です。デザイナーとパタンナーが常にコミュニケーションを取りながら、理想のデザインを形にしていきます。

弊社はデザインから縫製まで自社アトリエ内で一貫生産できる、業界でも数少ない体制を備えています。それによりデザイナーやパタンナー、一人ひとりの思いを細部まで共有することができ、厳選された上質な素材を使った価値ある製品を作れることを強みとしています。

ひと針ひと針の伝統的な服作りの姿勢はそのままに、そのときどきの新しいものを取り入れながら、素材、手仕事、そして着心地。いくつもの上質を重ねて、今を生きる大人の女性のために「ロッサ・スタイル」を提案していきたいと思います。

ロッサの服は、大物芸能人も愛用する「作品」

ーー印象に残っているエピソードをお聞かせください。

宇野武:
東京の店舗にご来店いただいたとある女優の方から、「ロッサさんのお洋服は商品じゃなく、1点1点が作品ですよね」と言っていただけたことが、とても励みになる出来事でした。その方がロッサの服を着ていただいているところをSNSなどで拝見しますと「商品の細部にまで至るさまざまな強いこだわり」「妥協をしないものづくり」に共感していただけたのだと、心の底から嬉しく思います。

人材の可能性を最大限に引き出すチャレンジ

ーーさまざまな改革を行っているとお聞きしました。

宇野武:
長年ご愛顧いただいているお客様を大切にしながら、ブランドを成長させ継続していくためには、次の世代も開拓しなければいけません。失敗を恐れずにチャレンジしようと、新ブランドの立ち上げや、EC(電子商取引)の強化を行っています。

長年培ってきた経験やノウハウを活かし、そこに時代に合った新しいアイデアやテクノロジーを積み重ねて、ロッサをより広い世代の方に発信していきます。

今後は社員一人ひとりが主体的に行動し、さまざまな提案ができる組織風土を目指し、個性を活かしながら全員が活躍できる環境づくりを進めます。また、それと同時にワークライフバランスもより充実させる方針です。

新しいことにもどんどん挑戦していきますので、ロッサというブランドに興味を持ち、弊社でアグレッシブに働きたいと思われた方は、ぜひお話をさせていただきたいです。

編集後記

「ロッサ」の洋服に強い誇りと愛情を持ちながらも、新たな世代の育成のため、新ブランドを構築していくと語る宇野社長。妥協しないものづくりを軸として、新たな視座で商機や課題を見つけていくことだろう。宇野社長の挑戦に、これからも注目していきたい。

宇野武(うの・たけし)/1971年大阪府生まれ、シアトル大学卒。2003年にインポートロッサ入社。商品管理、店頭販売、総務事務を経て2012年に同社取締役に就任。経理、財務を担い、2021年に代表取締役社長に就任。