※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

新型コロナウイルスの流行以降、アパレル業界でもインターネット通販の需要が高まっている。その中でも幅広い商品の取り扱いや、お洒落で低価格なオリジナル商品で、主婦層を中心に人気を集めているショップがアンドイット(and it_)だ。

今回はその運営会社、株式会社アンドイットの代表取締役社長の細井康幸氏に、ヒット商品の誕生秘話や、考え方が変化したきっかけ、今後の目標などについてうかがった。

お客様の声をもとに開発した商品がヒット

ーー起業の経緯を教えてください。

細井康幸:
高校生のころからアパレルに興味があり、「いつか自分で服屋さんをやりたい」という夢がありました。

前職もアパレル関係の会社で働いていたのですが、その会社はインターネット通販事業も展開しており、2002年には楽天のショップオブザイヤーも獲得しました。私は実店舗の店長をしていましたが、チラシ作成などしていたためPCを使った業務には抵抗がなく、そのころ「Yahoo!オークション」(現:「ヤフオク!」)が流行していたというのもあり、まずはネット通販サイトから立ち上げてみることにしました。

資金が100万円ぐらいしかない中での独立だったので、リスクはありましたが、インターネット通販はまだなじみのない業種だったため、瞬く間に急成長していきました。

ーー貴社の事業の強みを教えてください。

細井康幸:
お客様の声を取り入れた商品開発です。たとえば弊社のヒット商品である『ロンタン』(ロングタンクトップ)は、ローライズジーンズが流行したときに「屈んだときに肌が見えるのが嫌だ」というお客様の声をもとにしてつくった商品です。通常のタンクトップよりも丈を10㎝伸ばすことでヒット商品につながりました。

また期間限定商品にも力を入れています。主婦層のお客様がメインなので、例えば、3月であれば入学式や卒業式に着用できるようなオケージョンアイテムを、夏には暑さ対策商品をそれぞれ提供しています。季節に特化したものを販売し、お客様が何を求めているか、というのを大事にしています。

外部の手を借りることの大切さに気づく

ーー起業してから苦労したエピソードがあれば教えてください。

細井康幸:
実店舗にいたころはお客様と会話をする機会が多くあったのですが、ネット通販ではそのようにお客様と話ができないということが1番大きな問題でした。あとは在庫の管理にも苦労しました。

ーーそれらの解決のために何か取り組んだことがあれば教えてください。

細井康幸:
基本的にカスタマー対応は専門のスタッフに任せているのですが、ネット通販のお客様からの問い合わせ内容だけは私も見るようにしていて、そこでお客様の声を拾うようにしています。実店舗とネット通販で売れているものは異なるため、実際にネット通販を利用している方の声を聴くようにしています。

物流倉庫の在庫管理に関しては、過去には自社で物流業務を行っていたのですが、実際にやってみると、物流の知識が当時はなかったため、多くの問題をかかえていました。それをきっかけに物流は外部に業務委託するようになったため、繁忙期には在庫を増やす、逆に閑散期には在庫を減らすなどの調整もできるようになりました。現在は、カスタマー対応や商品ページの作成なども外部に委託しています。

外部との交流を遮断していた昔から一転、同業他社との交流を盛んに

ーー同業者との交流があれば教えてください。

細井康幸:
過去に楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー、レディースファッションジャンル大賞をいただきました。しかしその頃は自社で確立したノウハウを他社に漏らすまいと、他社と交流することはせずに閉じこもっていました。しかし今は考え方を変え、いろいろな会社と週に1、2回はお話しする機会を持っています。

ーーそのように考え方が変化したきっかけがあれば教えてください。

細井康幸:
現在、アパレルのインターネット通販というのは同業他社がたくさんいて飽和状態です。その中で今後どのように成長していくかと考えたときに、外部と交流していこうという考えになりました。インターネット通販全体を見ても、昔のように1社だけが飛び抜けているという売り方は、今はどの会社もできません。みんなで力を合わせていろんなことを学ぶというのが今の時代には合っていると思います。

よりよい商品づくりに向けての取り組み

ーー今後の展望について教えてください。

細井康幸:
今後は商品開発の強化を目指しています。

ーー具体的に取り組まれていることがあれば教えてください。

細井康幸:
商品開発についてはお客様の声を反映していくのですが、低価格商品と、付加価値がついた高価格帯の商品、どちらも必要だと感じています。そういった商品の企画は私含め社員のみんなとしています。

先ほどお話しした問い合わせメールの件もそうですが、社長である私が、問い合わせ内容を確認する業務を行う必要は無いと言う声もあるかもしれません。しかし、私からすると「私自身がわかっていないと、そもそも商品にお客様の声を反映できない!」という信念に基づき、やっています。それを皆に伝えて商品作りをしています。これは長年販売員をしていた時に学んだ事です。

これからは個人が能力を伸ばして活躍できる時代に

ーー読者へのアドバイスがあれば教えてください。

細井康幸:
今はSNSもあり、昔に比べて個人が活躍することが容易になってきたと感じています。ネットでどんな情報でも得られる時代です。私は前職でAdobeが提供するツールを使ってチラシをつくっていましたが、今はそういうソフトがなくてもクリエイティブなことができます。そのようなところにもヒントはあるのかなと思います。私も日々勉強で最近は動画編集ができるようになりました。

情報を多く手にできる時代なので常にアンテナを張って、チャレンジ精神を忘れず頑張ってください。

編集後記

人気ショップとなった今も謙虚に学び続ける姿勢を忘れず、外部の力を借りることも躊躇しない細井社長。その姿勢が会社のさらなる成長を後押ししていることは間違いない。また小売業のビジネスモデルを変えたいという発言も興味深く、今後も株式会社アンドイットの動きから目が離せない。

細井康幸(ほそい・やすゆき)/1974年大阪府生まれ、甲子園大学を卒業後、地域密着型の衣料品販売、株式会社シノダに入社。起業に向け、洋服の知識や販売員としての知識を身につける。2007年に株式会社アンドイットを設立し今に至る。