共同カイテック株式会社
代表取締役社長 吉田 建

吉田 建(よしだ たてる)/大学卒業後、コンピュータ専門商社に就職。3年間営業職として勤務した後、共同カイテックへの入社に向けて、電気関連の専門学校に入学。その後、同社入社。数年間の研修期間を経て、大阪支店の支店長として赴任。2年半後にバスダクト事業部長に就任。その後代表取締役専務を経て、2012年同社代表取締役社長に就任。

本ページ内の情報は2016年11月当時のものです。

共同カイテック株式会社は、バスダクト(電力幹線システム)・OAフロア(フリーアクセスフロア)・屋上緑化の3つの事業を柱とする電気設備・建材の開発メーカーである。同社の商品ラインナップはすべてオリジナル製品となっており、3つの分野それぞれでヒット商品を生み出している。特にバスダクトの分野においては、20,000件以上の納入実績を持ち、国内トップシェアを誇っている。

創業60年以上の老舗メーカーならではのノウハウを武器に、新たな商品開発や海外展開など、さらなる挑戦を続けている共同カイテック。同社代表取締役社長、吉田建氏のインタビューを通して見えてきた、チャレンジ精神を醸成する社風の秘訣とは――。同社の今後の事業戦略や求める人物像と共に紹介したい。

共同カイテックが手がける3つの事業

御社は、バスダクト、OAフロア、屋上緑化という3つの事業を行っていらっしゃいますが、それぞれについて簡単にご説明いただけますでしょうか?

吉田 建:
まず、弊社の主力事業であるバスダクト事業についてですが、バスダクトというのは、たくさんの電気を一度に流すことができる電材です。大きなビルや工場のような、大量に電気を供給する必要がある場所に用いられています。同じような電材にケーブルもありますが、バスダクトはケーブルのような1本続きではなく、ユニットを組み合わせていくタイプですので、途中から電源を取ったり、レイアウト変更に対応できたりと、柔軟性に優れています。また、停電なしで増移設できますのでデータセンターなどの施設にも重宝されていますね。簡単に組み立てられるので、ケーブルよりも敷設にかかる人手が少なくて済むというメリットもあります。昨今、人手不足が顕著な建設業界からは、そういった面でも注目を浴びています。

OAフロアは、床下配線のための床材です。本来のオフィスの床の上に空間を設け、そこに乱雑になりがちなOA機器やパソコンのケーブルを収納・配線できる二重床構造です。OAフロアのメーカーは日本で20数社ありますが、弊社の場合、他社とはアプローチが異なるのが特徴です。床下空間を小さく設計できる低床OAフロアや、簡単に個人で配線を変えられる設計など、利用者の利便性を追求しています。ほかにも、歩いた時に床がガタついたり、音が鳴らないような安定した歩行感にもこだわっています。

3つ目の屋上緑化事業ですが、元々はOAフロアの床下に敷くユニットを土壌コンテナに変えて、床のカーペットを芝生にしてみたら、屋上緑化ができるんじゃないかという社員のアイデアから始まった事業でした。ただ、やはり植物ですから維持するためには水やりなどが必要になりますよね。そうした手間を少しでも軽くするため、屋上面のコンテナの下にセンサーを入れて、水の乾き具合に応じて必要な時に水を与えるようなシステムを導入しています。弊社の屋上緑化は、外務省などの官公庁や高層ビルをはじめ、1,400件以上の施工実績があります。

弊社の社名にあります「カイテック」は、「快適」と「テクノロジー」を合わせた造語です。なかなか一般の人の目に触れにくい部分の仕事ではありますが、3つの事業を通して陰ながら世の中を快適にするお手伝いができればと考えています。

社長就任の経緯

社長に就任されるまでの経緯についてお聞かせいただけますでしょうか?

吉田 建:
共同カイテックは僕の祖父が始めた会社ですが、当初僕は跡を継ぐということをそれほど強く意識していませんでした。高校でフェンシングに夢中だった僕は、大学入学後も勉強と部活を両立するため、理工系ではなく文系の経営学部を選んだほどです。卒業後は、コンピュータの専門商社に営業職として入社しました。当時Windows95が出た頃で、新しい流れに自分も関わってみたいと思ったのです。3年ほどした時に、父から声がかかり、父の会社を継ぐことについて改めて考えて、退職を決意しました。今思えば、幼い頃から父の背中を見てきたので、深層心理の中にいつかは後を継ごうという気持ちがあったのかもしれません。そこから昼は電気の専門学校に、夜は簿記の学校に通いました。弊社に入るまでの1年間はとにかく勉強しましたね。

入社後は、まず仕事を覚えるための研修ということで3つの事業を一通り回りました。工場で作業もしましたし、現場にも行きました。営業もやりましたね。“社長の息子”ということで、入社当初は他の社員との間に壁を感じることもありました。しかしあくまで僕は仕事を教えてもらう立場でしたので、謙虚さを忘れずにいこうと決めていましたし、よく飲みにいって、お互いに本音で話をするようにしていましたね。そうしていく中で、自然と周りの人との一体感ができあがっていきました。

研修の後は、どういった役職につかれたのでしょうか?

吉田 建:
数年間の研修のあと、支店の責任者として大阪へ赴任しました。厳しい状態だった経営状態を建て直すことができたのは嬉しかったですね。その後東京へ戻ってきて、バスダクトの事業部長に就任しました。その時は過去最高の業績を出すことができました。そして、2012年に社長に就任したという流れです。

海外展開にかける思い

国内トップの納品実績を持つ共同カイテックのバスダクト(電力幹線システム)。今後は海外への普及を積極的に進めていく。

今後どのように事業を展開していきたいか、社長のお考えをお聞かせいただけますでしょうか?

吉田 建:
今後はバスダクト事業とOAフロア事業の海外展開を積極的に行っていきたいと考えています。バスダクトは、世界中で使われていますので、メーカーの数もたくさんあります。しかし、その中で弊社のように利便性や施工のしやすさといったところまで考えているメーカーは見当たりません。

ただ、海外の建設現場は日本と違って環境がよくないところもありますので、頑丈さが一番に求められます。ですので、弊社のバスダクトがもつ利便性と、耐久性・頑丈さを兼ね備えたバスダクトを現在開発中です。発展途上国などではまだバスダクト自体がさほど普及していませんが、これからどんどん国として発展していくと、そういった質の高い電気設備の需要が高まってくる可能性が十分あります。今のうちから少しずつ布石を打っておくことがとても重要になるのではないかと考えています。

OAフロアについては、先進国では採用されているところもありますが、発展途上国などではまだまだ未採用の所が多いですね。ただ、東南アジアの国などでは、大理石のつるっとした固い床を敷いているところがあって、床の精度が比較的高い特徴があります。弊社の主力製品は床にぴたっと馴染むタイプのものなので、床の精度が高ければ高いほど、その製品の魅力が引き立ちます。弊社の製品がもつメリットがうまく市場にフィットするということは、今後、海外展開をする上で大きな強みになりますね。

社内のコミュニケーションを強化

社長が組織運営する上で大切にされていることはございますか?

吉田 建:
やはり相互にコミュニケーションを取ることでしょうか。社員同士のコミュニケーションを深めるための取り組みとしては、毎年何かしら社内でイベントを企画します。チャリティーウォーキングや、バーベキューといったアウトドア企画もありますし、社内に従業員みんなが集まってパーティをすることもあります。

僕自身、社員とのコミュニケーションはなるべく密に、そして偏りなく取るようにしています。弊社はだいたい320人ほどの社員数なのですが、僕は全員の顔と名前が一致しています。つい先日終わりましたが、3年に1度行う全社員との面談がありまして、地方も含めて全社員と1対1で話をするんですね。この面談がきっかけで、職場環境の改善につながったこともあります。

なかなか社長と直接話をするという機会は、特に新入社員や地方の社員にとっては珍しいことですよね。

吉田 建:
そうかもしれませんね。ただ、僕は新入社員とも飲みにいきますし、逆に新入社員も普通に話かけてくれますよ。地方の営業所にも出張で行った時には、社員と話をする席を設けたりします。やはりそうして直接話をすることは、すごく大事なことですよね。「社長がいつも見てくれている」というのが、社員のやる気を引き出すひとつのきっかけになるかなとも思っています。やはり、社員のみなさんがモチベーションを高く持って仕事に臨むことが、いい成果につながりますから。

共同カイテックの未来を支える人材とは

M&Aや海外展開など、事業拡大にあたり、必要な人材について語る吉田社長。

今後、御社が必要とする人材というのは、どのような方でしょうか?

吉田 建:
新しいアイデアを出してくれる人というのは、やはり重要です。ただ、もちろん、弊社の経営理念に共感し、ビジョンを共有してくれているというのが前提になります。そこを踏まえた上で、事業全体の利益を考えて意見をしたり行動できる、いわば経営者に近い目線を持った人が必要ですね。
と言いますのも、弊社も今後事業を広げていく中でM&Aも視野に入れています。その時に各子会社を任せられる社長を育てていきたいと僕は考えているのです。

弊社は1950年創業で古くから事業を行ってまいりましたので、国内事業に関しては基盤ができています。しかし、海外展開に関して言えばゼロからスタートする状態ですので、非常にやりがいがあると思います。失敗してもそれをビジネスの種にして、チャレンジしていただけるような人にはぴったりですね。また、弊社の製品はライバルメーカーとは一味違うものばかりです。“独創性”を大事にしていますので、ある意味でマニアックな世界に通じる部分もあるかもしれません。ですので、物事を極めるようなタイプの人にも弊社は合っていると思います。

ニッチな分野だからこそ、今後も製品の性能や価値を追求し続けていきたいと思いますので、海外展開も含めたこれからの弊社の事業を一緒に担ってくれる人たちが来てくれると嬉しいですね。

編集後記

短い時間のインタビューの中でさえ、社長の飾らない人柄が十分に伝わってきた。社長自ら社員と積極的にコミュニケーションをとることで、風通しの良い社風が作られている。国内トップシェアという実績に満足することなく、常に新しいものを求める気概が社内にはあふれていた。自社の技術やサービスに誇りを持ち、活き活きと社員たちが働くことができる環境こそ、共同カイテックの強みであると感じた。