流通小売業をはじめ、多くの業界を支えるシステム総合ソリューションメーカー、寺岡精工。

2025年に創業100年を迎えた老舗企業に対して、「社内の雰囲気はやばいのか?」「離職率は高いのか?」といった声も耳にするかもしれません。


今回は、その実態と今後の事業展望、そして正社員の仕事のやりがい、求める人物像について、代表取締役社長を務める山本宏輔氏にお話を伺いました。

「やばい」は誤解?数字が語る寺岡精工の圧倒的な安定性と成長性

ー創業100年を直近に迎えた貴社が、なぜこれほど長く企業として存続し続けられるのでしょうか?

山本宏輔社長:
私たちは、社会に貢献しながら売上と利益を保ち成長し続ける「ニューエクセレントカンパニー」を目指しています。

100年存続できる企業はわずか0.03%と言われる中で、寺岡精工は1925年の創業以来、まさにその稀有な存在となりました。

単に長く続けるだけでなく、企業規模を維持しながら成長することも重要です。


日本の法人210万社のうち、売上1000億円以上は950社と非常に少ないのが現状です。

その中で、寺岡精工は1553億円の売上高(連結)を達成。

これは、私たちが掲げる「ニューエクセレントカンパニー」であることを客観的に示しています。

昨年、社員旅行でハワイに行き、その上で過去最高益を出せたことは、社員全員が会社に参画し、皆が豊かになることを目指した結果だと考えています。

離職率は「やばい」ほど低い?社員定着の理由

ー「寺岡精工はやばい」といった検索キーワードでは、離職率や社風に関する情報も散見されます。貴社の具体的な離職率や社員の定着について、どのようにお考えでしょうか?

山本宏輔社長:
当社の定年退職を除く離職率は2022年3.5%、2023年2.7%、2024年2.7%と、厚生労働省の全国平均14.2%と比較しても大幅に低い水準を保っています。

平均勤続年数も19.3年と、社員が安心して長く働ける環境があることの証です。


この高い定着率の背景には、社員の経営参画を促す「エンゲージメント」の考え方があります。

私たちは「会社とは、皆が豊かになる為に集まったところ」というミッションを大切にし、社員が会社に対して何ができるかを考える「ギフト」の精神を共有しています。


新卒定着率向上のための「新任再配属制度」を2019年から導入し、入社5年以内であれば人事の判断で再配属を可能にしています。

これにより、社員が自身の適性を見つけ、より長く活躍できる場を提供しています。

現在、20代、30代の新卒・中途採用にも力を入れており、女性社員や外国籍社員の数も年々増加しています。多様な人材が活躍できる環境づくりを進めています。

会社は皆が豊かになる場所。頑張りが報われる公正な評価制度とエンゲージメント

ー社員が長く活躍し続けるために、人材育成やキャリア形成に関してどのような取り組みをされていますか?

山本宏輔社長:
社員の成長を支援するため、研修制度の充実はもちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、社員一人ひとりの意欲を公正に評価し、後押しする風土だと考えています。

当社のミッションにもある「豊かさ」とは、給与面だけでなく、自分の仕事が社会にどれだけ貢献しているかという心の豊かさも含みます。

私たちはこの理念を社員に伝え、日々の業務に取り組んでもらっています。


評価制度においては、期初・中間・期末の年3回、必ず評価面談を実施し、上長と部下が互いに要望を伝え合うことで、成長をサポートする体制を構築しています。

頑張りたいという意欲を持った社員の努力は適正に評価され、それが給与アップや昇格という形で反映されることで、社員の活力が会社の成長へと繋がる良い循環が生まれています。

ー社員のエンゲージメントを高めるための社内コミュニケーションや、福利厚生についてお聞かせください。

山本宏輔社長:
当社の考え方として、会社がまず社員に投資し、働きがいや充実した生活といった豊かさをギフトとして提供します。

会社公認の部活動・サークル活動への補助金支給や、本社内の多目的コートの開放もその一環です。


さらに、社員とそのご家族からいただく力に対し、2024年度はハワイへの社員旅行が実現しました。

このような5年に一度の海外社員旅行も、日頃の貢献への感謝を形にした特別なギフトです。

こうした会社の想いを受け取った社員が、今度は「会社のためにどんなギフトを返せるか」を考え、行動で応えていく。このギフトの交換、すなわち「双方向のエンゲージメントサイクル」こそが、私たちのビジネスの原動力です。

そのサイクルの中で生まれた素晴らしい功績、いわば社員から会社への最高のギフトを全社で称える場が、毎年の「TVP AWARD」です。

会社から社員へ、そして社員から会社へ。このギフトの好循環を絶え間なく回し続けることで、社員は自らの頑張りが報われると実感し、会社は成長し続けることができるのです。

このサイクルを回し続けることこそ、100年企業である私たちの矜持です。

100年企業が見据える次の100年。「攻守創るギフト」で描く社会貢献と事業展望

ー今後の寺岡精工の成長戦略について、山本社長が特に重視されている点はありますか?

山本宏輔社長:
私は社長として、「自分たちの課題を見つけて、自分たちで解決する以外に成長の方向はない」と強く感じています。

そこで、新たなスタートに向けて「守るギフト」「攻めるギフト」「創るギフト」の3つの「ギフト」を方針として掲げました。


「守るギフト」は、お客様との信頼とこれまでの売上を継続・発展させていくことです。お客様満足度をさらに高め、リピーターを増やすことで、安定した企業基盤を維持します。

「攻めるギフト」は、未来を見据え、社会に貢献しながら新たな価値を創造することです。

特に「Grow with Green」という取り組みを推進し、環境に配慮した製品やソリューションを全事業部で提供していきます。

流通業界のDX推進もこの一環で、業務効率化と人に優しいビジネスを両立させます。


そして「創るギフト」は、海外ビジネスの強化です。
世界の市場には大きなポテンシャルがあり、今年から海外マーケットを総合的にサポートする「海外事業統括部(Global Business Development)」を立ち上げ、海外での事業展開を加速させていきます。

これら「3つのギフト」は、寺岡精工が100年以降も成長し続けるための道筋であり、社員一人ひとりが「会社に対して何ができるか」という「100年企業の矜持」を持って仕事に取り組むことで、未来を切り拓いていきたいと思っています。

これからも寺岡精工は、社会に必要とされる企業であり続けるために、挑戦を続けてまいります。

編集後記

「寺岡精工はやばい」という検索キーワードから抱くイメージとは裏腹に、山本社長のお話からは、圧倒的な安定性と、社員を大切にする温かい社風、そして未来を見据えた明確なビジョンが伝わってきました。

特に、「頑張りが報われる」という公正な評価制度や、社員とその家族を大切にする企業姿勢は、求職者にとって非常に魅力的なポイントです。

これからの寺岡精工のさらなる飛躍に注目せずにはいられません。