出光興産株式会社:概要と沿革
まずは、出光興産の基本情報を確認しておきましょう。
出光興産株式会社の概要
社名 | 出光興産株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区丸の内3-1-1 |
設立年月日 | 1940年3月30日(創業1911年6月20日) |
代表取締役社長 | 月岡隆 |
株式公開 | 東証一部 |
資本金 | 1,086億円 |
事業内容 | ・石油精製並びに油脂製造、販売
・石油化学製品の製造・販売 ・石油、石炭、地熱、その他鉱物資源の調査、開発並びに採取 ・農業薬品、農業用資材並びに化学薬品製造業 ・電子機能材料の開発、製造および販売 ・各種化学工業用および環境保全用機械設備・機器の設計、施工、製作および売買 ・不動産の売買、賃貸借、管理 ・コンピューターソフトウェアの開発、販売およびコンサルティング |
出光興産は従業員数が9000名にもなる、非常に大きな会社です。出光興産の営業所・販売店は国内各地にあります。また、北海道・千葉・愛知に製油所があり、千葉に生産技術センターがあります。また、出光興産は5つの研究所を千葉に置いています。また、出光興産はアジア・中東を中心として、世界中に拠点があります。
出光興産株式会社の事業内容
出光興産の基盤事業
出光興産は原油から精製される燃料油などの石油製品、エチレンなどの基礎化学品の生産および販売、そして風力や太陽光および地熱などの再生可能エネルギーを電源とする売電事業を行なっています。
出光興産のガソリンスタンドでのガソリン等の販売はもちろん、産業用エネルギーを電力会社、一般産業、航空会社、海運会社などへ販売しています。また、出光興産は再生可能エネルギーの事業も積極的に行なっており、風力、太陽光、バイオマス、地熱、水力など資源の枯渇しないもので、利用時に二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーなので、エコな資源として今後の事業拡大に期待できます。
出光興産の資源事業
出光興産の石油開発事業では、ノルウェー、英国、ベトナムをはじめとする東南アジアを中心に石油・天然ガスの探鉱・開発・生産プロジェクトを推進し、生産量の維持拡大を行なっています。オーストラリア・インドネシアでは石炭鉱山事業を展開しています。また、原子力発電の燃料であるウラン資源の生産をカナダで行っています。そして、出光興産は再生可能エネルギーとして、九州で地熱を利用した電力供給の開発も行なっています。
出光興産の高機能材事業
出光興産は、創業以来の潤滑油事業をはじめ、石油化学の研究分野である分子設計や精密有機合成技術などをベースに高収益・高付加価値商品の開発、拡大を目指しています。多くの機械やパソコンなどで利用される商品です。また、出光興産はバイオ技術を核に生物・化学農薬や飼料添加物の開発、製造・販売も行なっています。
出光興産株式会社の企業理念
出光興産の経営理念
出光興産の経営理念は、以下の「経営の原点」「経営方針」「行動指針」で表しています。「経営の原点」に掲げた『人間尊重』の考え方のもと、「経営方針」に示したステークホルダーとの約束を果たしていくことで持続可能な社会の実現に貢献します。また、社員はそれを実現するために、「行動指針」にのっとり自分の役割を果します。
出光興産の経営の原点
出光興産は、創業以来、『人間尊重』という考えを事業を通じて実践し、広く社会で期待され信頼される企業となることをめざしています。
・わたしたちは、お互いに信頼し一致協力し、「人の力」の大きな可能性の追求を事業で実践することで、世の中に役立ちたい。
・わたしたちは、常に高い理想と志を持ち、仕事を通じてお互いに切磋琢磨することで、一人ひとりが世の中で尊重される人間として成長していきたい。
・わたしたちは、お客様との約束を大切にし、何よりも実行を重んじることで、信頼に応えていきたい。
出光興産の経営方針
・新しい価値の創出と提供(お客様への約束)
お客様に安心・活力・満足を感じていただける商品・技術・サービスを提案、提供します。そして、新しい価値の創出に努めます。
・社会への貢献(環境・社会への約束)
安全を基盤とし、自然環境の維持・向上に努めます。そして、地域・文化・社会に貢献します。
・確かな成果の還元(株主への約束)
企業としての社会的責任を果たし、健全で持続的な成長を図ります。そして、株主に確かな成果の還元に努めます。
・パートナーとの協働(ビジネスパートナーへの約束)
販売店はじめ、共に事業に携わっている方々とお互いに協力し、お客様の安心・活力・満足を実現します。そして、成果と成功の共有を目指します。
・自己成長・自己実現の追求(社員への約束)
社員一人ひとりが、自己成長と自己実現を追求することができる環境をつくります。そして、各人が尊重される人間となるべく努力します。
出光興産の行動指針
・顧客第一
どうすればお客様に満足していただけるのかを考え、行動する。
・倫理観
高い倫理観を持ち、誠実・公正に行動する。
・チャレンジ
柔軟な視点と発想で創意工夫し、スピードをもって革新に挑戦する。
・一致協働
論議を尽くし、その結論に対しては一致協力して取り組む。
・自己完結
任された仕事は、自らの責任と誇りにおいてやり遂げる。
・自由闊達・人を育てる
自由闊達で、互いに成長し合う風土をつくる。
・地域との融和
地域の一員として、地域の発展に貢献する。
出光興産株式会社の事業ビジョン
国内の燃料油事業は、需要の減少に加え、過剰設備・過当競争という業界の構造的な課題を抱えています。この状況下、「日本のエネルギー供給を支える」という出光興産の社会的使命を果たすための安定的な収益基盤を維持できるのか、という危機感から、昭和シェル石油をベストパートナーと見定め、経営統合の準備を進めています。
出光興産は燃料油事業で拡大してきましたが、現在、化学事業、資源事業、再生エネルギー事業、高機能材事業である潤滑油、機能材料、電子材料、アグリバイオなどに拡大し、これらをグローバルに展開しています。また、ベトナム・ニソン製油所プロジェクトへの参画など、アジアを中心に伸び行く海外需要の取り込みを進めています。
これからも今まで100年以上で培われてきた出光興産の技術やノウハウを活かした商品開発を加速させるとともに、環境変化に対応した様々な事業構造改革に取り組んでいくでしょう。
出光興産株式会社の事業ポートフォリオ
1911(明治44)年 | 門司で出光商会創業 | |||
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1913(大正2)年 | 消費者本位の漁船燃料油販売 | |||
1914(大正3)年 | 外油独占の大陸市場へ進出 6月28日 第一次世界大戦勃発 | |||
1919(大正8)年 | 満鉄用の凍結しない車軸油の開発 | |||
1920(大正9)年 | 朝鮮半島、台湾に販路を拡大 | |||
1923(大正12)年 | 給油コストを下げた漁船への中身給油 | |||
1931(昭和6)年 | 名古屋地区に進出 | |||
1936(昭和11)年 | 華北、華南に販路を開拓 | |||
1938(昭和13)年 | 日章丸(一世)就航 | |||
1939(昭和14)年 | 中華出光興産株式会社・満州出光興産株式会社設立 | |||
1940(昭和15)年 | 出光興産株式会社の設立
大規模油槽所建設で外油独占に対抗 | |||
1942(昭和17)年 | 簡素な組織で民需配給業務を遂行~~~
1943(昭和18)年 | 出光興産本社を東銀座に移転 | ||
1945(昭和20)年 | 敗戦により国内外の事業消滅 | |||
1946(昭和21)年 | 人を資本に再スタート | |||
1947(昭和22)年 | 全国29店舗が石油配給公団販売店に指定される
出光商会と出光興産(株)が合併 石油業への復帰 | |||
1949(昭和24)年 | 元売業者に指定 | |||
1950(昭和25)年 | 石油輸入基地の室蘭・川崎・神戸油槽所竣工
消費地精製方式で苦境に | |||
1951(昭和26)年 | 日章丸(二世)就航~~~
1952(昭和27)年 | 高品質で安価な「アポロガソリン」の発売~~~
1953(昭和28)年 | メジャー支配に挑戦した「日章丸事件」 | |
1955(昭和30)年 | ニューヨーク事務所設置 | |||
1957(昭和32)年 | 出光初の製油所の建設 | |||
1959(昭和34)年 | 国の要請によりソ連石油を輸入 | |||
1961(昭和36)年 | 本社を丸の内一丁目(パレスビル)に移転
アポロサービス(株)設立~~~ 1962(昭和37)年 | 巨大タンカーの建造
出光タンカー(株)設立 第一宗像丸遭難事故 | ||
1963(昭和38)年 | 千葉製油所竣工/生産調整に抗議し、石油連盟を脱退
天皇・皇后両陛下徳山製油所をご視察 | |||
1964(昭和39)年 | 出光石油化学(株)設立
出光石油化学徳山工場竣工 | |||
1966(昭和41)年 | サービスステーションスタッフを対象に中央訓練所を開設
出光美術館が開館 本社を丸の内三丁目(帝劇ビル)に移転 日本人の世界的使命を伝える 出光佐三は会長に、出光計助は社長に就任 石油生産調整撤廃により石油連盟に復帰 | |||
1967(昭和42)年 | 千葉製油所に世界初の重油直接脱硫装置を竣工
「出光100ガソリン」を発売 | |||
1968(昭和43)年 | 営業研究所開所 | |||
1969(昭和44)年 | 「出光クレジットカード」を発行 | |||
1970(昭和45)年 | 兵庫製油所竣工(11万B/D、2003年生産停止)
潤滑油精製装置を千葉製油所に竣工 中央研究所開所~~~ 1971(昭和46)年 | 石油開発に進出
ロサンゼルスにIAC設立 | ||
1972(昭和47)年 | 出光佐三は店主に、出光計助は会長に、石田正實は社長に就任
沖縄石油精製(株)設立(2003年生産停止) | |||
1973(昭和48)年 | 石油の安定供給めざし、中東へ進出
中国の大慶原油を輸入 北海道製油所竣工 第1次石油危機 | |||
1974(昭和49)年 | 国際市場での活動を本格化~~~
1975(昭和50)年 | 愛知製油所竣工
石油化学千葉工場操業開始~~~ 1977(昭和52)年 | 石田正實は会長に、大和勝は社長に就任
石油代替エネルギーへの取り組み~~~ 1979(昭和54)年 | 石油備蓄への取り組み 第2次石油危機 |
1981(昭和56)年 | 店主出光 佐三、逝く
大和勝は会長に、出光昭介は社長に就任~~~ 1983(昭和58)年 | 出光エンジニアリング(株)を設立
出光無鉛金アポロガソリンを発売 | ||
1984(昭和59)年 | サービスステーション新業態「Shop&Care」開始~~~
1986(昭和61)年 | 出光クレジット(株)設立 | ||
1988(昭和63)年 | 豪州、エベネザ鉱山の権益取得し、自社炭輸入開始 | |||
1989(平成元)年 | 出光オイルアンドガス開発(株)設立 | |||
1991(平成3)年 | ポルトガルでアポロマークのサービスステーション開設(1999年売却) | |||
1992(平成4)年 | プエルトリコでサービスステーション事業開始(2001年売却)
スノーレ油田が生産開始 米国インディアナ州に潤滑油ブレンド工場竣工 ~~~ 1993(平成5)年 | 出光昭介は会長に、出光裕治は社長に就任
低ベンゼンガソリン「ゼアス」発売 | ||
1996(平成8)年 | 出光大分地熱(株)、滝上発電所の営業運転開始 | |||
1998(平成10)年 | 全製油所、工場で「ISO 14001」の認証を取得
出光初のセルフサービスステーションを東京・八王子に開所 出光裕治は相談役に、出光昭は社長に就任 | |||
2000(平成12)年 | 優先株式を発行(6月、9月)し、資本金356億円に増資 ~~~
2001(平成13)年 | 資本金が388億円となる(2001年3月末)
IR準備室を設置し、上場の準備を開始 石油業法廃止 | ||
2002(平成14)年 | 電子材料室を設置
出光昭は会長に、天坊昭彦は社長に就任~~~ 2003(平成15)年 | 兵庫(製)並びに沖縄(製)生産停止
北海道製油所タンク火災発生 出光クレジットとクレディセゾン合弁会社化~~~ 2004(平成16)年 | 出光興産と出光石油化学合併 NYMEX原油価格バレル50ドル突破 | |
2005(平成17)年 | 株式会社プライムポリマー設立
第三者割当増資、優先株式有償消却を実施し、資本金513億円 | |||
2006(平成18)年 | 出光ガスアンドライフ(株)と三菱商事のLPガス供給部門及び三菱液化ガス(株)の事業を統合しアストモスエネルギー(株)を設立
東京証券取引所市場第一部に株式上場~~~ 2007(平成19)年 | 資源部を設置、石油・石炭・ウラン開発事業集約 | ||
2008(平成20)年 | ベトナムでの「製油所・石油化学コンプレックス」建設に向けた合弁会社に参加 | |||
2009(平成21)年 | 英国法人石油開発会社「ペトロサミット」社を買収 | |||
2010(平成22)年 | 米国石油卸売販売会社「ニューウエストペトロリアム」社を買収 北アフリカ民主化運動活発化 | |||
2011(平成23)年 | 創業100周年
徳山(製)原油処理を2014年までに停止することを発表 | |||
2012(平成24)年 | 株式会社イエローハットと出光興産株式会社の業務・資本提携
無担保社債発行(計200億円) バイオエタノール事業に関するカンボジア政府との覚書締結 | |||
2013(平成25)年 | ニソン製油所、石油化学コンプレックス建設コンソーシアムを決定
第4次中期経営計画を発表 中野和久は会長に、月岡隆は社長に就任 | |||
2014(平成26)年 | 徳山製油所 原油処理機能停止
北米ファンデールLPG基地からブタン輸出を開始 | |||
2015(平成27)年 | 土佐グリーンパワー(株) 土佐発電所を竣工
昭和シェル石油(株)との経営統合に関する基本合意書を締結 |
出光興産は100年以上歴史のある会社です。戦前から存在して、戦争を乗り越えてきました。驚くべきことに、戦前から挑戦や中国などに進出しています。戦後も出光興産は着々と国内・海外と拠点を増やしてきました。また、近年では石油燃料の需要減少から、出光興産は様々なエネルギー開発に着手していたり、昭和シェル石油(株)との経営統合を進めています。
石油だけでなく、新たなエネルギーへ挑戦する出光興産株式会社
いかがだったでしょうか。石油燃料の需要の減少や、電力・ガスの自由化など、私たちのエネルギーへの状況は目まぐるしく変化しています。その中で出光興産は先を見据えて、石油を燃料としてだけでなく、製品に利用したり、海外に進出したり、新たなエネルギーの研究開発を行なってきました。日々変化していく中、挑戦を続ける出光興産を訪れてみてはいかがでしょうか。