カネ美食品株式会社 ~全国約300店舗テナント展開。惣菜屋の新たな在り方を追求する“中食企業”~

惣菜屋の既成概念を打ち破り、進化を続ける食品会社

カネ美食品株式会社 代表取締役社長 三輪 幸太郎

※本ページ内の情報は2016年12月時点のものです。

食事を取るシチュエーションには、各家庭で料理したものを食べる「内食」、レストランなどで食べる「外食」、そしてその中間に位置する、店舗で購入した弁当などを自宅で食す「中食」と、大きく分けて3つパターンがある。

1971年に設立されたカネ美食品株式会社は、スーパーマーケットを中心にデパ地下や駅ナカなどで寿司や弁当、惣菜等を扱う店舗を展開するテナント事業と、コンビニエンスストア向け弁当などを製造する外販事業で構成する「中食企業」であり、テナント約300店舗と16工場を展開している。また、食の分野だけでなく、幅広い業種に目を向け、スタイリッシュな店舗・商品開発を推し進めるなど、惣菜屋の既成概念にとらわれないブランド戦略に挑戦し続けている。

中食企業として進化を続ける同社代表取締役社長、三輪幸太郎氏に、同社の強みや、ブランド戦略、今後の展望などについて話を伺った。

三輪 幸太郎(みわ こうたろう)/1970年生まれ。南山大学外国語学部卒業。1993年カネ美食品株式会社に入社し、1997年に関東運営部長に就任。その後、専務取締役テナント事業本部長や代表取締役専務などを歴任し、2009年に代表取締役社長に就任。全国のデパ地下やスーパーマーケットで新ブランドのテナントを積極的に展開し、店舗数を拡大させている。

異業種に目を向ける

-御社の事業内容の特徴や強みについてお教えください。

三輪 幸太郎:
弊社は中食企業として、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、デパ地下、駅ナカや駅ビルに至るまで、幅広い販売チャネルを有しています。仮にデパ地下だけで展開していたとしたら、量販店の販売ノウハウは学べませんし、その逆も然りです。それぞれの良い部分を取り入れることで相乗効果を生み出すことができるのです。また、弊社は中食のマーケットをすべて網羅しているので、自社の様々なブランドを既存の販売チャネルとは異なるチャネルに応用することができ、商品開発に幅を持たせることができると考えています。

以前、コムサイズムなどのアパレルブランドを展開する株式会社ファイブフォックスとライセンス契約を結んで行った事業で、『コムサ・デリ』というものがありました。そこで我々は、照明の当て方から制服のデザイン、ビジュアルマーチャンダイジングなど、アパレルブランドのノウハウを学ぶことができました。

食の分野だけで完結していたら周りが見えなくなってしまいます。異業種にも目を向けることで、自らの事業に取り込む要素がたくさんあることに気づくはずです。スーパーマーケットやコンビニエンスストアの商品は既成概念に強くとらわれがちですが、同じスーパーマーケットでもアメリカの場合はいろいろなブランド戦略をして、自分たちの世界観を確立しています。弊社としても、従来の惣菜屋の既成概念を崩すような新しいブランディングを、これからも続けていくつもりです。

ブランドイメージを刷新させた強い信念

-御社がデパ地下への出店に乗り出した経緯をお教え頂けますか?

三輪 幸太郎:
私は大学卒業と同時に弊社に入社し、店舗での経験を積んだ後、1996年に東京事務所に異動しました。90年代後半の東京は、お台場再開発やユニクロの原宿出店、スターバックスコーヒーの日本上陸など、街と共に様々な業界が大きな変革を迎えようとしていた時期でした。

カネ美食品株式会社が展開する洗練された惣菜売り場(e'z mart枚方店)。

その当時、実は私は、弊社の店舗イメージに対してあまり洗練された印象を持っていませんでした。しかし、変わりゆく東京の姿を目の当たりにして、こうした華やかな世界観と旧態依然とした自分たちのブランドイメージを比較した時、「このままでは我々はいずれ通用しなくなる」という危機感を覚えたのです。その時から、ブランドイメージをよりスタイリッシュなものにするべく、店舗の改革を進めていきました。その頃はデパ地下ブーム先駆けの時代でもあり、ブランド力向上のためにもデパ地下への展開は外せないものだと考え、進出を決めたのです。

既存のイメージや旧来の社風までも覆す私のこうした動きに対して、改革当初は社内の一部からも反発を感じました。ただ、当時の社長は私の考えを後押ししてくれましたし、信念を持って進めていくうちに周りの理解も得られるようになり、徐々に事業がスムーズに進むようになっていったのです。一度軌道に乗れば、社内の雰囲気も変わります。そこに至るまでは大変でしたが、自分の理想を追い続ける強い意志を持つことが結果にも繋がると実感しました。

働きやすい環境が組織全体の利益に繋がる

店舗にて接客を行うカネ美食品の従業員。従業員が気持ちよく働ける労働環境を追求し続けることが、お客様の満足、組織全体の利益に繋がる。

-三輪社長が大切にされていることは何でしょうか?

三輪 幸太郎:
従業員のモチベーションです。やはりモチベーションを持った人間は高いパフォーマンスを発揮すると思います。弊社のブランドイメージを変えると決心した東京での経験は、私の仕事に対するモチベーションを大きく変えました。明確な目標を持つとそれに向かうために何をするべきか、逆算して考えるようになります。そうすると、必然的に自分で考えて動くことができるようになるのです。だからこそ、社員には目標や理想を持つことの大切さを日頃から伝えています。

ただ、社員の仕事に対する意欲は、労働環境にも大きく左右されますので、弊社では労働環境の改善を積極的に行っております。残業時間や休日日数の改善といった制度的な部分はもちろんですが、エアコンの風当りといった非常に細かい部分もチェックします。毎日そこで働く人にとっては、こうした些細な事も重要な要素になりますからね。社員が高いパフォーマンスで仕事をしてくれることが、最終的には会社の業績にも繋がると、私は考えています。

従業員を犠牲にするような組織で利益を出そうとしても、それは一時的な結果にしかならず、いつかは必ず綻びが出てくるはずです。弊社の労働環境改善の取り組みは、少しずつですが成果を伴うようになってきており、ここ10年間で離職率は半分になりました。まだ道半ばではありますが、これからも働きやすさを追求していきたいと思っています。

中食企業日本一を目指して

最終目標は「中食企業日本一」。目標達成に向けての展望を語る三輪社長。

-今後の御社の展望についてお話いただけますでしょうか?

三輪 幸太郎:
弊社の最終的な目標は「中食企業日本一」となることです。売上だけではなく、商品力でも労働環境でもトップを目指しています。そのための中期的な目標として、統合したユニーとファミリーマートに対して、弊社の立ち位置をしっかりと示していこうと考えています。もともとユニーグループを主要取引先にしておりましたが、ファミリーマートがユニーと統合した今、販路を拡大する大きなチャンスです。そこで確固たる存在感を示すことができるよう、ここ数年で結果を出したいと思います。

また、弊社の売上の約85%がユニー・ファミリーマートグループに関する売上になっていますが、それ以外の部分の売上を高めていくことも考えています。そのために、テナント数の増加や、夕食宅配事業での生活協同組合との繋がりの強化、そしてJR東日本リテールネットが運営するNewDaysへの納品アイテム数などを増やしていくことで、経営の裾野を広げていきたいと思います。

-そのために御社ではどういった人材を求めていますか?

三輪 幸太郎:
何事にも興味関心を持って、一生懸命仕事に取り組める人物ですね。そういう人は向上心を持ち、自分で考えて動くことができます。指示を待つだけの人や、自分の意見をしっかりと主張しない人は、成長することが難しいと思います。弊社では学歴もキャリアも年齢も関係ありません。チャンスは全員にあります。

また、女性社員も積極的に登用していく予定です。目標としては女性社員比率を40%くらいまで引き上げたいと考えています。まだまだ弊社は進化の途中にあります。自分たちが中心になって会社を引っ張っていくという気概を持ち、一緒にこれからの組織を作っていく人材を求めています。

編集後記

三輪社長は、過去に女性ファッション誌で流行をチェックし、商品開発のヒントにするなど、「中食」という事業分野を主体としつつ、マーケティングやブランディングは幅広い業種を参考にしている。自社事業の枠組みにとらわれない社長の考え方は、結果として本来の「中食」事業を深化させ、新たな可能性を広げることに繋がっていくのだと感じた。

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