「地球にやさしい自然素材の家づくり」をコンセプトに、神奈川県を拠点に展開する株式会社ecomo(エコモ)。代表の中堀健一氏はエコロジーな家づくりとともに建設業のDXを目指し、株式会社logbuild(ログビルド)を設立してVR・AI・ロボットを活用した最先端の取り組みにチャレンジしている。
2021年には、プレシリーズAラウンドとなる総額約1億円の資金調達に成功。リモートで施工管理を可能とするソリューションを生み出している。
起業から現在までの苦闘とこれからのビジョンについて、中堀氏に話を伺った。
エコロジー・環境配慮からライフスタイル提案への変貌
――ecomo創業からの経緯を教えていただけますか。
中堀健一:
私が13年前に病気になったときに、玄米菜食のライフスタイルに切り替えたのですが、そのときに衣食住は繋がっていると考え、自然素材の建築、エコロジーを理念にした工務店を立ち上げました。それが株式会社ecomoです。
最初は下請けから始まり、自然素材のみを特徴とした工務店だったのですが、創業当時は自然素材というものは世の中的に認知されていませんでした。単純に価格が高くなるし、デザインも少し落ちると思われていましたので、「自然素材を使っても良いデザインでつくれる」ということを広めていきたいと考えていました。
現在ではSDGsが当たり前に語られるようになっているので、環境配慮型の建材が支持されるようになりました。時代の流れに乗って、自然素材や環境配慮型の建材がお客様に選ばれるようになったのです。
現在のecomoができあがるまでにもう1つポイントがあり、それがDX(デジタルトランスフォーメーション)でした。工務店には図面があって、紙が大量にあるというのが基本的な姿です。建築業界は他の業界と比べて、IT化やDXが遅れているというのが実情です。
2011年東日本大震災があったとき、福島のある工務店さんが大量の紙の書類、図面とともに流されてしまった。それをテレビで見たときに、有事の際に対応できるようにすべてをクラウド化しないといけないと思いました。
その後、IT活用を推進したことで今は生活全般・ライフスタイルを提案する会社になっています。今の位置付けとしては「スマートビルダー」と銘打っており、未来の工務店がどうなっているかを予測して、それを先取りした家をつくるという試みをしています。
今回のコロナ禍もそうです。私たちの会社ではZOOMやチャットなど非対面のツール活用に以前から取り組んでおり、座席を固定しないフリーアドレスを導入していたため、テレワークにすぐ対応できました。ecomoという工務店は、今後も「10年後の工務店」であり続けたいと考えているので、常に10年後はどうなっているかと考えて先取りできるようにしていきます。
住宅建築業界のDXを目指して
中堀健一:
住宅産業の根幹は「家を建てる」ことにあります。つまり、現場が最も重要です。建設現場のDXが本丸になると思います。
現場管理・施工管理のDXについては10年ぐらい前から取り組みを始めていて、6年前から現場監督を廃止しました。設計監理という担当者がいて、その担当者が遠隔で施工現場も管理する形にしています。住宅建築においては、「労働安全衛生法」という法律がありまして、この法律でいう建設業を行う事業者(特定元方事業者)は毎日作業場の巡視が義務付けられているのですが、これを緩和していく流れを進めています。
この仕組みの実現のためにはツールやシステムが必要になるのですが、そんなツールは当時の日本には当然ありませんでしたので、世界中を探し回りました。それでも求めているツールはなかったので、自分たちで作るしかないということになり、ロボット・VR事業部を立ち上げて、その事業部で実行する形にしました。
その延長にあるのが、関連会社である株式会社logbuildの事業です。
世界を見据えた事業モデルへの挑戦
中堀健一:
ecomoはこうしたことを先導的に取り組んでいる会社で、logbuildはこれを全国に広げていく会社です。独自のVRソフトウェアを開発して、日本の住宅建築業界全体のDXを目指しています。
より大きい視野で考えると、建設業界の人手不足という大きな問題があります。現場監督に若い世代が少なくなり、これからも若い人が入ってきにくい。そういう状況の中で、私たちはDXに取り組まざるを得ないという状況になっているのです。
日本は少子高齢化がものすごいスピードで進んでいます。なおかつ、「レガシー」といわれるほど古い業態である建設業界の中で、私たちは人がいなくても対応ができる事業モデルを創出することにチャレンジしています。
この事業モデルができれば、アジア・欧米など海外に打って出ることがでるでしょう。
今はまだ国内での展開を進めている段階ですが、現場管理の効率化システムをリリースしてから2年、これまで広告なども一切打っておりませんでしたが、大手ハウスメーカーやビルダーとの取引実績を作ることができたため、ここから全国への営業展開を加速していきます。
その後に見据えているのは、設計、営業、コーディネーターなどの各工程におけるDXです。
また、職人不足を補えるようなテクノロジーも開発していきたいですし、その先には家そのもののDX、スマートハウスをモデルとして作りたいと考えています。
そのためには、まだまだ技術開発も必要ですし、それに伴う資金調達も必要です。
今はまだ全体構想の10%にも満たない道半ばですので、実現に向けて進んでいきたいですね。
編集後記
少子高齢化が進む日本の中でも、人手不足が深刻な建設業界。この問題をテクノロジーの力で解決すべく、中堀社長は果敢にチャレンジを続けている。彼の視野はすでに日本を飛び越え、世界に広がっている。
10年後の未来を描く工務店、ecomoから目が離せない。
中堀健一(なかぼり・けんいち)/1971年新潟県生まれ。神奈川の高校卒業後、会社員を経て都内の工務店にて働く。1997年に株式会社ecomoを創業、湘南・横浜エリアを拠点に地球にやさしい自然素材の家づくりを始める。2020年には建設現場のDXを目指し、株式会社logbuildを創業。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」。