1983年の創業以来、制御盤の設計・製作や電気工事業で成長してきた株式会社セイクン。近年は代理店として、落雷対策の製品普及にも力を入れている。2019年に代表取締役社長に就任した上野晃氏に、事業の特徴や人材の育成方法、今後の展望についてうかがった。
多角的な事業展開――電気工事からシーケンサーメンテナンス、避雷針工事まで
ーーまずは事業内容について教えてください。
上野晃:
電気制御設備の工事に関するサービスをワンストップで提供しています。サービス内容は、制御盤や分電盤の設計・制作、シーケンサーという制御装置のメンテナンス、避雷針の設置・点検などと幅広く、スタッフは各分野のスペシャリストで構成されています。
弊社のスタッフの強みは、さまざまな業務を請け負える「多能工」であることです。たとえば、同業他社が2つの問題しか解決できない場面でも、弊社は5つの問題を解決することができます。
ーー現在注力している事業についてお話しいただけますか?
上野晃:
画期的な落雷対策ができる避雷針「dinnteco(ディンテコ)」を輸入・販売する事業は、ロマンや面白さを感じる部分が多く、近年ようやく利益が形になってきたところです。現在の売上は約2億円で、今後さらに加速して2030年には20倍にできると考えています。
「dinnteco」は海外のスタートアップが手がけたプロダクトであり、「保護範囲内に落雷現象を発生させない」という、従来型の避雷針とは異なるコンセプトを持ちます。
弊社は総代理店として、日本国内やタイ、ベトナムといったアジア諸国に「dinnteco」を広めてきました。事業においてはトレンドも重視しており、避雷針の展開を皮切りに、現在は多様な災害対策を展開しています。
社内改革による業務効率化と「誰でも成長できる」スキルマップの公開
ーー社長としての取り組みや信念について聞かせてください。
上野晃:
弊社の社長に就任した後は、数値によるデータの可視化を進め、組織内の役割を明確にするなど、会社の仕組みを改革しました。変化を好まない人に対しては、給料や休暇が増える形で「労働環境が改善する」という結果を示しました。取り組み開始から約5年が経ち、休暇日数は以前の倍に、給料は業界水準より1.2倍ほど高い状態に達しています。
私が大事にしているのは「スピード感を意識する」ことです。何事も早く終えるように心がけた方が、業務効率が上がる確率が高いと思います。「レスポンスを早くする」「期限までに任務を終える」といった日頃の積み重ねが大切ですね。
ーー独自の教育方針について教えてください。
上野晃:
電気工事業者としてステップアップしていけるフィールドを整えています。個人がどんどん成長できて、成果がしっかりと報酬に反映される会社です。技術に関するスキルマップや評価制度を用いた教育システムにより、「どんな技術があれば給料や役職がアップするか」が可視化されます。
電気工事に関する知見やフォークリフトの操縦など、会社で必要とされるスキルはさまざまです。ライセンスや資格を取得するだけでなく、「できることが一つ増えるたびに手当ても一つ増える」というのが、社内で公開しているスキルマップの魅力です。個人の成長度合いは、必ず報酬に直結しなければいけないと思っています。
技術的な教育はもちろん、社内の理念やルールを正しく理解できるための仕組みも整えています。極論としては、成長意欲の高さにかかわらず、システム化されたレールに沿って進んでいけば「誰でも成長できる」ということです。評価が高まるほど給与も上がっていくシステムは、同業界の中堅企業よりもしっかりと構築されているのではないでしょうか。
個人の成長×面白い仕事を集めて会社をさらにスケールアップ
ーー次世代へのアドバイスをいただけますか?
上野晃:
体が元気なうちに「量」をこなすべきでしょう。スキル磨きにかける時間など、努力の量が足りていない人が多いと思います。「1万時間の法則」といって、専門分野で成功するには1万時間が必要だと言われ、私は3つの分野でそれを実行しました。いろいろな業務に対応できる多能工を目指せば、業界内で100人に1人の人材になれるはずです。
ーー今後の展望をお聞かせください。
上野晃:
日本製・外国製を問わず、今までになかった価値観や製品・プロダクトを強烈に、面白おかしく広めていきたいですね。あらゆる規制がネックで他社が突破できずにいる壁を壊し、みんなが本当に必要としているサービスを展開したいと思います。
きちんと成長しながら仕事を全うすれば、お金を稼げて面白いこともできる。仲間たちと一緒に楽しく、気持ちや生活に余裕を持てる会社づくりを続けます。
編集後記
「成長する人が多ければ会社も成長する」と語った上野社長。父親の会社を引き継ぎ、独自の価値観を信じて社内改革を進めてきた。昇給や休暇の充実など「目に見える成果」を与えて人材を成長させるという、シンプルかつ確実性のある取り組みに好感を抱く人は多いだろう。
上野晃/名古屋市出身。海外留学を経て父が経営する株式会社セイクンに入社。2011年にCOO、2019年に代表取締役社長に就任。自社サイトとは別に「シーケンサーメンテナンス.com」と「避雷針工事.net」と「防爆工事.com」など専用サイトを開設。