※本ページ内の情報は2026年4月時点のものです。

企画開発、調達流通、貿易3PL(※1)など、各種BPM(※2)サービスを手掛ける株式会社フクミ。2023年取材当時は輸出の貿易支援業務に注力していたが、現在は生成AIを活用した業務の自動化や独自のプラットフォーム構築など、次々と新たな変革を推し進めている。長年の課題であった業務の属人化を乗り越え、さらなる飛躍を目指す三代目トップの和泉隆治氏に、現在の取り組みや見据える未来について詳しく話をうかがった。

(※1)3PL:Third Party Logistics(サードパーティ・ロジスティクス)の略。企業の物流業務全般を第三者の企業へ委託する業務形態のこと。
(※2)BPM:Business Process Management(ビジネス・プロセス・マネジメント)の略。企業内の業務プロセスを整理し、継続的に改善していくマネジメント手法の一つ。

自身でも意外だった、父が経営するフクミへの入社

ーー社会人としてのキャリアはどのようにスタートされたのでしょうか。

和泉隆治:
弊社は私で三代目ですが、もともとは母方の祖父が九州で創業した会社です。父が二代目でしたが兄もいたので、私自身は社長になる考えは全くありませんでした。大学を卒業して専門商社に就職して、自由にやっていたのです。私が入社した商社では、扱う商品の半分以上が半導体でしたが、海外製のレーザー製品も輸入していました。理化学や工業向けのレーザー製品は家電と違ってすぐ使えるわけではないので、私は技術の担当者と一緒に客先へ赴き、現場で使えるように営業として据付調整の立会をしていました。

ある程度のビジネススキルが身に付き、自分の力が他社で通用するのか試したいという気持ちが芽生えたころ、たまたま父から「入社しないか」と声がかかりました。選択肢として全く考えていなかったというのが正直なところですが、声をかけてもらったことではじめて、真剣に考えたのです。フクミはレーザーポインターのODM(※3)をしていて、私も当時同じ技術を応用した製品の営業をしていたことに奇遇なつながりを感じ、どうせ転職するのなら父の会社へと覚悟を決めました。

(※3)ODM:Original Design Manufacturingの略。委託者のブランドで製品を設計・生産すること。

事業の進化と「輸入、輸出、ものづくり」の3本柱

ーー創業からの事業の変遷と、現在の主力事業についてお聞かせください。

和泉隆治:
祖父が創業した当初は九州の製造業者の下請けでした。その後、二代目の父が会社を分けて貿易事業を開始しました。私が三代目を継いだ現在は、当時の事業をさらに発展させ、「輸入・輸出・ものづくり」の3本柱を基本としています。ただ、自社の規模や知名度だけでは、販売ルートを確立するのが難しいという現実もあります。そのため、引き続き大手メーカーと組んで商品開発から取り組むODMと、ものづくりであるOEM(※4)を行いつつ、現在の3本柱の体制を盤石に整えてきました。

(※4)OEM:Original Equipment Manufacturingの略。委託者のブランドで製品を生産すること。

多数決の限界を知り 強いリーダーシップで変革を牽引

ーー2013年の社長就任後、組織運営においてどのような壁に直面されたのでしょうか。

和泉隆治:
社長就任当初、企業経営のすべてを「民主的」な多数決で行うことの限界を痛感しました。自分がトップに立って全体を見渡した際、多数決で適切な経営判断を下すのは非常に困難だと気づいたのです。

たとえば、ある社員が将来を見据えた有益な提言を行っても、それが多数派の理解を得られなければ採用されません。うまくいかなかった時に「多数決で決まったから」と妥協するのは、経営者としての逃げではないかと考えました。

組織を正しい方向へ導くには、トップが責任を持って意思決定し、自らも学び続けて社員を納得させる強いリーダーシップが必要です。その考えに基づいて取り組んだのが、長年の課題であった業務の標準化でした。

属人化の課題を乗り越える生成AIを活用した自動化

ーーその長年抱えられていた課題について詳しくお聞かせください。

和泉隆治:
私たちの仕事はお客様をお手伝いするサービス業であり、どうしても業務が属人化してしまう部分がありました。担当者によって提供するサービスの質にばらつきが出ることに、非常に悩んでいたのです。

品質を均質にして提供するため、業務の標準化を長年掲げてきました。しかし、サービスは得意不得意などの人に付随する要素が大きく、画一的なマニュアル化は困難です。同じ輸出でもアメリカ向けとインド向けでは内容が異なり、海外の国ごとにニーズは均一ではありません。細分化されたマニュアル作りは難しく、日々の業務に追われる中で優先順位も下がり、なし崩しになってしまい、社長就任からの10年間は標準化を達成できずにいました。

ーーその課題に対して、現在はどのようにアプローチされているのですか。

和泉隆治:
DXの推進となる、生成AIやAIエージェントの活用推進です。近年、AIが世の中に広く認知され始め、要素を入力すればマニュアル化してくれたり、社内のチャットボット化を進められたりするようになりました。

たとえば、日誌などをAIに読み込ませておけば、特定の顧客向けのマニュアルを高いクオリティで即座に作成してくれます。私自身、AIにWebサイトを構築するための言語(HTMLやCSS)を教えてもらいながら、自社のWebサイトを作成しています。AIは魔法の箱ではなく、一緒に開発を進めてくれる思考の加速装置です。長年目指していた標準化がAIの力で自動化まで進化し、品質を揃えて均質化する目標がようやく現実のものになってきたと実感しています。

「持たない強み」を生かしたフクミの仕組みづくり

ーー事業を展開するうえで貴社の最大の強みはどこにあるとお考えですか。

和泉隆治:
私が社内でよく言っているのは、「持たない強み」です。製造業のように工場を持たず、販売業のように店舗を持たないからこそ、お客様の要望へしがらみなく柔軟に提案できます。メーカーであれば自社製品を売らなければならないジレンマがありますが、私たちは持っていないからこそ、他社から最適なものを探して組み合わせられるのです。

ーーその強みを生かして今後どのようなサービスを展開される予定ですか。

和泉隆治:
事業的な部分での自動化を進め、BPaaSのようなプラットフォームの中で貿易を進行できる新しいサービスの開発を目指しています。人に頼る属人性だけでなく、「フクミのシステムがあるから安心して任せられる」「他社には真似できない」と言っていただける独自のビジネスモデルを構築したいと考えています。蓄積してきたノウハウをシステム化し、目に見える仕組みを武器にしていく段階です。

組織に刺激を与えるオフィス移転と原点回帰の営業活動

ーー今後のさらなる飛躍に向け、組織体制や営業活動においてどのような変革を行っていますか。

和泉隆治:
まず、組織に刺激を与えるために大きく環境を変えました。以前の神田のオフィスから、東京駅隣接の丸の内に移転したのです。前の環境では競争を意識しづらい部分がありましたが、丸の内ではランチの値段一つとっても良い意味での刺激になります。外国人のビジネスパーソンが行き交う環境に身を置くことで、社員にも変わらなければと思ってもらいたい狙いがあります。

また、効率ばかりを追い求めるのではなく、泥臭い営業をもっとしていく必要があると感じています。Webミーティングは便利ですが、ふらっとお客様のところへお茶を飲みに行く無駄な努力も重要です。直接会い、無駄話の中から本音やチャンスを見つける、AI時代だからこその人間的な原点回帰が求められます。BtoB(※5)のお客様との信頼関係は、やはり対面でこそ深まるはずです。

(※5)BtoB:Business to Businessの略。企業間取引のこと。

ーー新規開拓を進める上でどのような戦略を描いていらっしゃいますか。

和泉隆治:
これまでは大手企業とのお取引が多く、豊富なノウハウを蓄積できた反面、1社への依存度が高くなると下請け的な立ち位置になりやすいという課題がありました。そこで現在は、蓄積したノウハウを標準化し、売上数百億円規模の中堅企業など、新たなお客様への販路開拓に注力しています。そのための武器としてWebサイトをリニューアルし、弊社の魅力を発信して新規開拓や採用PRにつなげていく戦術です。

輸出における付加価値の創造と新たなライセンス取得

ーー海外展開や輸出事業についてはどのような展望をお持ちですか。

和泉隆治:
今は発想の転換をしています。これまでは日本のお客様に「海外へ輸出しませんか」とアプローチしていましたが、現在は海外のお客様に対して「日本から輸入しませんか」と働きかけています。私たちが貿易に必要な実務をワンストップで請け負うことで、大きな付加価値を感じていただけるからです。

海外のお客様を見つけることは難しいのですが、弊社で立ち上げた貿易の情報サイトなどを通じて問い合わせをいただくなど、仕組みが機能し始めています。また、最近では、お客様からの強い要望で日本酒の輸出ライセンスも取得しました。これを展開していくにあたり、食品の輸出は国によって規制が異なり大変ですが、まずはアメリカ向けなど、自社のリソースに合わせて着実に進めていきます。

社員の好奇心を育み成長を楽しむ好循環

ーー事業を推進するうえで欠かせない、社員の皆様の強みや魅力はどのような点でしょうか。

和泉隆治:
社員の好奇心旺盛なところですね。物を見てどうやって作られているのだろうと興味を持ち、知識を頭の引き出しにしまっておいて、いざという時にお客様への面白い提案につなげるアイデアの柔らかさがあります。

ーーその強みを生かし、今後お客様に対してどのような価値を提供し、貴社の魅力を発信していきたいとお考えですか。

和泉隆治:
弊社は先義後利の精神を大切にしており、その価値観を体現するフクミイズムのバリューとして「FAN & FUN」を掲げています。お客様第一(FAN)はもちろんですが、さらに自分たちが面白いと夢中になって楽しむ(FUN)過程が大事です。楽しんで働くからこそ継続ができ、さらにお客様に喜んでいただける好循環が生まれます。その好奇心から生まれた独自の視点や魅力の発信の仕方を工夫し、Webサイトなどを通じてBtoBのお客様にリッチな表現で伝えていく。共感していただくことが今後の要になると考えています。

ーー最後に「FAN & FUN」の実現に向けて最も大切なことをお聞かせください。

和泉隆治:
最も大切なことは、成長を楽しむことではないでしょうか。成長することに喜びを感じることができれば、どんどん進歩していきます。そうすればお客様をより喜ばせられるようになり、また次のお客様にもつながります。新たな成長ステージにもたどり着き、それが自分の幸せにもつながっていく。成長し続けることで好循環が生まれます。すると、周りに居るみんなも巻き込んで、全ての人を幸せにすることができるのではないでしょうか。

編集後記

和泉氏は顧客をファン(FAN)にし、自分たちも楽しみ(FUN)を感じる働き方で好循環を生み出すため、常に成長を求めることが重要だと語る。過去の多数決に頼る運営の限界からトップとしての強い覚悟を持ち、長年の課題であった属人化の壁を次々と突破していく姿勢が頼もしい。大手企業への依存を脱却し、次なるステージへの新規開拓を進める同社の今後の飛躍に期待したい。

和泉隆治/1972年福岡県生まれ東京都育ち。明治大学理工学部卒業後、丸文株式会社に入社。4年間の修行期間を経て、2000年に株式会社福美トランスパック(現・株式会社フクミ)へ入社。2013年、同社代表取締役に就任。