※本ページ内の情報は2023年10月時点のものです。

企画開発、調達流通、貿易3PL(サードパーティー・ロジスティクス)などの各種BPOサービスを手掛ける株式会社フクミ。昨今の為替の状況から、現在は特に輸出の貿易代行業務に注力し、新しいビジネスモデルを構築しているという。社長が社内の運営に心を砕いている点や、経営理念、今後の業務展開について詳しく話を伺った。

自身でも意外だった、父が経営するフクミへの入社

ーー今の会社に入社された経緯を教えていただけますか?

和泉 隆治:
弊社は私で三代目ですが、元々は母方の祖父が九州で創業した会社です。

父が二代目でしたが兄もいたので、私自身は社長になる考えは全くありませんでした。大学を卒業して専門商社に就職して、好きなようにやっていたんですよね。
私が入社した会社では、扱う商品の半分以上が半導体でしたが、海外製のレーザー製品も輸入していました。レーザー製品は家電と違ってすぐ使えるわけではないので、私は技術の担当者と一緒に客先に行って、現場で使えるように営業として技術者の据付調整の立会をしていました。

ある程度のビジネススキルが身に付き、今の自分の力が他社で通用するのか試したいという気持ちが芽生えたころ、たまたま父から「入社しないか」と声がかかりました。選択肢として全く考えていなかったというのが正直なところですが、声をかけてもらったことではじめて、真剣に考えました。フクミはレーザーポインタ―のODMをしていて、私も当時同じ技術を応用した製品の営業をしていたことに奇遇なつながりを感じ、どうせ転職するのなら父の会社へと覚悟を決めました。

製造業から始まった株式会社フクミの歩み

ーーその頃から貴社では現在と同じ事業を行っていたのでしょうか。

和泉 隆治:
創業当時は九州の大きな製造業者さんの下請けとして営業していて、父が入った後に会社を分けて貿易事業を始めました。最終的にはその二つがまた合併して今の会社になっています。

現在は貿易とOEM/ODMでのモノ作りを軸にしています。ただ、貿易というのは、商品やサービスを売り買いする取引ですが、それだとモノ自体に深い関わりを持てないんですね。私には「自分たちが作った製品を輸出したい」という強い思いがあり、これまで以上にモノ作りを積極的に行うようになりました。

ただ、「自分たちでモノを作りたい」といって、例えばレーザーポインターを作って世に出しても、今の自社の規模・知名度では注目を集めることは難しいという現実もあります。良い商品だったとしても、販売ルートが確立できていないとビジネスとしては厳しい。ですから、今は大手メーカーさんと組んで、商品開発から取り組むODMとモノ作りであるOEMを行っています。

多数決を選択するのは、経営者の「逃げ」ではないか

ーー2013年に社長に就任してからのご苦労があったら教えていただけますか?

和泉 隆治:
一番考えさせられたのは、企業経営の全てを「民主主義」で行うのは難しいということです。私も下の立場からトップを見ていたときは、もっとみんなで話し合って民主的に決めればいいのにと思っていました。

ただ、自分がその立場になって全体を見たときに、多数決で適切な経営判断を下すのは実は非常に難しいと思い知らされたという感じです。立場によって、持っている情報も、視野の広さも違います。一人が豊富な情報を集め、将来を見据えて必要な提言を行ったとしても、それが多数派に理解されなければ多数決では採用されません。ここに難しさがあります。誰か一人がリーダーとして引っ張ったほうが、組織は強くなり、より適切な方向へ動くのではないかということを大いに考えさせられました。

最初は社長として、みんなに何でも意見を聞いていました。しかし、多数だからといって必ず正解を導き出せるわけではなく、多数決を選択するのは、実は経営者として無責任なことではないかと思うようになったのです。うまくいかなくても「多数決で決まったことだから」と言うのは、社長として逃げではないかと。

いろんな人の意見は聞くものの、最終的にはトップが意思決定しなければならない。ただし、自分で判断するためには情報の収集や勉強は欠かせません。それがなければ、社員を納得させられませんから。

輸出における付加価値の創造と顧客の新規開拓

ーー今後の展開として、特に力を入れていきたい点について教えてください。

和泉 隆治:
輸入ビジネスに魅力を感じていましたが、為替の問題もあり、今後は輸出のほうが期待できると思っています。

国内にある企業ではなく、海外にある日系企業に対して「日本から輸入しませんか」と働きかけます。日本国内から見ると輸出ですね。日本に私達がいて、海外にある日系企業の輸入ビジネスをお手伝いをするわけです。私たちが現地企業についての知識を持ち、かつ貿易に必要な全てをパッケージとして実行することで、付加価値を感じていただけるのではないかと考えています。

経営者として大切にしていること

ーー経営理念や経営者として大切にしていることはなんでしょうか。

和泉 隆治:
「先義後利」の精神で、製造にしても貿易にしてもまずはお客様のことを第一に。そして、その先に自分たちの幸せがあると考えています。

フクミイズムのバリューとして『Fan&Fun』を掲げていますが、まずお客様にファン(Fan)になっていただくことで、私たちは楽しみながら(Fun)働けます。楽しんで働くからこそ継続が出来、さらにお客様に喜んでいただけるという好循環が生まれます。

お客様が幸せになり、自分たちが幸せになるという好循環を生み出すことが大切です。

成長を楽しむことの重要性

ーーFan&Funの実現には何が大切だとお考えでしょうか。

和泉 隆治:
もっとも大切なことは、成長を楽しむことではないでしょうか。成長することに喜びを感じることができれば、どんどん進歩していきます。そうすればお客様をより喜ばせられるようになり、また次のお客様にもつながります。あらたな成長ステージにもたどり着き、それが自分の幸せにもつながっていく。成長し続けることで好循環が生まれます。すると、周りに居るみんなも巻き込んで、全ての人を幸せにすることができるのではないでしょうか。

編集後記

和泉社長は顧客をファン(Fan)にし、自分たちもファン(Fun)を感じる働き方で好循環を生み出すため、常に成長を求めることが重要だと言う。ワンストップで海外の日系企業に輸出する事業に注力し、これからも着実に成長を続けていくであろう株式会社フクミの今後に注目だ。

和泉隆治(いずみ・りゅうじ)/1972年福岡県生まれ、東京都育ち、明治大学理工学部卒。丸文株式会社に入社し、主にドイツ製のレーザー応用機器のセールスを担当する。4年程の修業期間を経て2000年に前身である株式会社福美トランスパックへ入社。2001年には福美トランスパックは合併して、株式会社フクミに。2013年、同社の代表取締役社長に就任。