※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

投資信託・投資一任の運用会社として1998年に設立されたベイビュー・アセット・マネジメント株式会社。同社は、株式や債券、プライベート・アセットなど、多彩な運用商品を取り扱い、非上場の独立系としてその歩みを進めてきた。創業から現在までの事業、そして今後の展望について、同社の代表取締役社長兼CEOである八木健氏に話をうかがった。

ベンチャー精神を尊び、独立系の運用会社を志す

ーー起業に至るまでのご経歴をお聞かせください。

八木健:
私は、1984年に野村證券に入社しました。当時の野村證券は、大規模でありながらベンチャー企業のスピリッツを持つ、非常にユニークな会社でした。私はそのベンチャー精神に憧れていたのです。私が入社した頃は、まだバブル経済に突入する前で、日本の株価が上がっていく状態でした。私の期待通り、入社後はチャンレンジングな仕事をさせていただき、営業力とマーケティング力を磨きました。しかし、1991年のバブル経済崩壊後は、社内でのベンチャー精神が失われていったと感じたのです。

そのような中で、私は米国へのMBA留学を機に、サンフランシスコの投資銀行Robertson Stephens & Company(以下、RS&Co.)の創業者サンディ・ロバートソンと出会い、金融の分野で起業を志すようになりました。RS Investments(※RS&Co.の資産運用部門会社)の支援によって、弊社の前身であるRSアセット・マネジメント株式会社を設立したのは、1998年のことです。

ーー社内では、どのような価値観や考え方を共有していますか?

八木健:
私は、「神は細部に宿る」という言葉を信条としています。私はこの言葉を、「細部までこだわり仕事をしなければ、成功しない」という意味だと解釈しており社員にも伝えています。

日本の金融業界で数少ない独立系の運用会社として、ベンチャー精神を尊びつつ、規律も大切にする価値観を社内で共有しています。

経営の独立性を維持し投資家に向き合った資産運用を提供

ーー独立系運用会社の意義を教えてください。

八木健:
戦後の日本にとって、復興のための経済的な成長は非常に重要な意味を持ちました。そのため、資金調達を支えていた銀行や証券会社は大きな影響力を持っていたのです。

そして、高度成長期に資産運用はあまり重要視されておらず、銀行や証券会社の子会社である運用会社が市場を寡占してきました。その中で弊社は、数少ない独立系運用会社として、経営の独立性を確保し、証券や銀行、外資といった系列親会社に影響されない資本構成を堅持しています。

そして現在、弊社は契約資産残高約1兆1,800億円を有する日本最大級の独立系運用会社に成長することができました。

ーー独立系運用会社としての貴社の強みや特徴は、どのようなところですか?

八木健:
外部に影響力を持つ株主がいないので、株主の意向に影響されない経営ができるところが強みです。株主はリターンを求めるものなので、その意向に沿った経営をすると、運用会社は運用資産を増やし自社の利益を上げることを目的とした方針をとることになります。しかし、運用資産が増えすぎると、顧客である投資家へのパフォーマンスが落ちるなどの不具合が生じるのです。

弊社のような独立系運用会社の場合は私たち自身が株主なので、適切に資産を増やしつつ、しっかりと投資家を向いた業務遂行が可能です。つまり、投資家にとって真に有益な、厳選した商品を提供しているところが弊社の特徴と言えるでしょう。

全国展開で投資の在り方を変革

ーー貴社の中長期的な展望をお聞かせください。

八木健:
これまでプロの機関投資家を顧客として発展してきましたが、いよいよ個人投資家への直接販売を本格的に実施したいと考えています。独立系運用会社が自ら全国展開するには、システム面の設備投資などのコストがかさみ困難を伴います。ですが、弊社は上場企業に匹敵する80億円という純資産を保有しており、この課題を乗り越えられる財務基盤があります。こうして2025年の4月から、全国の個人投資家に向けて、オンラインで弊社商品の販売を開始しました。これを通じて、全国に「日本に独立系の運用会社がある」と周知を図ることで、日本の投資の在り方を変えていきたいと考えています。

ーー最後に、この記事の読者に向けてメッセージをお願いします。

八木健:
ビジネスで成功したいのであれば、まずは焦らずしっかりと根を張り、太い幹をつくることが大切です。そのためには、自分の足下を見て、地道な努力を続け、厳しい環境でも誠実に取り組んでいく必要があります。

将来成功するために、今は自分を厳しく鍛えて成長する。そういう努力ができる人に弊社で働いてほしいですし、そのような人材が集まる企業が伸びると私は考えています。

編集後記

「さらなる発展のために、若手採用やデジタルマーケティングを強化したい」と語る八木社長。日本で希少な独立系運用会社として、1兆円超まで契約資産残高を増やした八木社長の手腕が、どのように次世代に引き継がれるのか。ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社の今後の動向から、目が離せない。

八木健/一橋大学卒業。1984年、野村證券に入社。ペンシルベニア大学ウォートン・スクールへの留学を機に、起業を決意する。1998年、RS Investmentsの支援を得て、RSアセット・マネジメント株式会社を設立。2002年、MBOにより同社の株式を取得することで独立系運用会社となり、ベイビュー・アセット・マネジメント株式会社に社名を変更、現在に至る。