ファストファッションの台頭により衣料品が大量生産・大量消費され、アパレル業界の余剰在庫は年間でおよそ15億点とも言われている。
そんな中、アパレルやブランド品、電化製品などの在庫品を買い取り、自社のECサイトや実店舗で販売をしているのが、株式会社Shoichiだ。
同社では在庫品を販売するにあたってメーカーやブランドの価値を損なわないよう、自社で製品タグの張り替えを行っている。
こうした誠実な対応が評価され、着実に取扱ブランドを増やし、グループ会社合計で26億円の売上を達成している。
日本の衣料廃棄ゼロを実現するため、在庫処分のリーディングカンパニーを目指す山本社長の思いについてうかがった。
創業時の苦労や株式会社Shoichiの強み
ーー創業された当初はどのようなご苦労があったのでしょうか。
山本昌一:
創業当初は会社の知名度がないので、取引先を増やそうと思ってもなかなか商談を取り付けられなくて苦労しましたね。
あとはどこの企業も同じだと思いますが、創業したばかりの頃は資本が少ないので資金繰りも大変でした。
それでも、とにかく一つひとつの取り引きに対し、誠実に対応してきました。
こうした積み重ねが弊社への信用につながり、今の株式会社Shoichiがあると思っています。
ーー貴社の強みについてお教えください。
山本昌一:
弊社はテレビやラジオなどのメディアに多く露出しているので、知名度が高いのが強みですね。
知名度が高まったことによってこちらから営業をしなくても、先方から「私どもの商品を貴社で取り扱っていただけませんか?」と問い合わせをいただき、そこから取引が始まることも多くなりました。
そのような蓄積が取引件数を順調に増やす源となっています。
2つ目の強みは、弊社は業界内で売上がトップクラスで、また若くてフレッシュな会社であることが評価されており、人材が集まりやすいことです。
在庫処分業界に入りたいという人は少ないのですが、その中でも弊社への入社を志望してくれる方が多いのはうれしいですね。
3つ目の強みは、自社倉庫を有していることです。
メーカーからの在庫を買い取った後は、大量にある商品を保管しておく場所が必要ですが、自社で所有している倉庫に置いておけるので、どんどん商品を仕入れられるのです。
4つ目の強みは、販路が広く複数の販売先があることです。
メーカーさんから「この販売先では自社の商品を取り扱ってほしくない」と指示を受けることがあります。
そのため販売先を複数持っておくと、一部の販売先で販売できなかった場合でも他のところで販売ができ、不良在庫を抱えるリスクを回避できています。
ーー他社と比較したときの貴社のマイナスポイントはありますか。
山本昌一:
在庫処分業は長年にわたり商売を続けてこられた方たちが多いので、他社と比べると弊社は歴史が浅いところですね。
そのため同業者の先輩方には「新参者がテレビなどに露出してすみません」と、いつも低姿勢であいさつをしています。
このように相手への尊敬の思いを持って接することを心がけているので、同業の方々から反発を受けることもなく、事業を円滑に進められています。
ーー貴社ではメーカーのタグカットや検品、包装なども自社で行われているそうですね。商品の処理に手間をかけるほど人件費がかかると思うのですが、それでも高価買取ができている秘訣はどこにあるのでしょうか。
山本昌一:
弊社では障害者の方々の就労支援を行う、就労継続支援A型事業所へ作業を依頼しております。
障害者の方の就労支援を行っている企業には国から助成金が支給されるので、そのおかげで商品の処理にかかる人件費を抑えられています。
ーー他社と取引をされる際に意識されているポイントはございますか。
山本昌一:
きちんとビジネスルールを守ってもらえるところと取引をするようにしています。
たとえば、メーカーの正規品でないのに正規品と偽って販売する会社とは一切取引をしません。
やはり相手に思いやりを持って、誠実な対応をしてくださるところとお付き合いしたいと思っています。
社会貢献や衣料廃棄ゼロを目指す衣類リサイクルについて
ーー在庫品の寄付や買い取りを行い、売上の一部を寄付する「TASUKEAI 0 PROJECT(助け合い0プロジェクト)」を始動したきっかけは何だったのでしょうか。
山本昌一:
事業を立ち上げた頃はとにかく自分たちが稼ぐことしか考えていなかったのですが、ある程度業績が安定してからは社会貢献に興味を持ち始めたんですね。
そこで子どもが好きというのもあって、カンボジアの養護学校へボランティアに行ったのですが、NPOの方々が熱心に活動されている姿を見て、支援したいと思ったのがプロジェクトを始動したきっかけです。
ーーこのプロジェクトを通して日本語学校を設立し、日本語を教えられているそうですが、なぜ日本語教育をしようと思われたのでしょうか。
山本昌一:
せっかくなら日本のためになることをしたいと考えたときに、日本語を教えれば将来日本で働きたいと思ってくれる子どもたちも出てくるんじゃないかと思ったからです。
言葉を理解できれば日本に移住しても生活しやすいでしょうし、少子高齢化により働き手が不足している日本を支えてくれるといいなと期待しています。
ーーメーカーが廃棄する予定だった衣類を原料として活用し、再生ウールやフェルト製品へのリサイクルも自社で行われていますね。
山本昌一:
廃棄するよりもリサイクルをする方がコストがかかるため他にやっているところがなく、それなら自分たちでやるしかないと思い、リサイクル事業を始めました。
弊社で在庫を買い取るのでメーカーは処理コストがかかりませんし、仕分けや解体を行うため元のデザインは残らず、ブランドタグもカットするのでブランドのイメージを損なうこともありません。
また、リサイクルの依頼を受けたものについてはリサイクル化証明書を発行しており、どのようにリサイクルしたのかをきちんとお伝えしています。
起業家が成功する秘訣
ーー山本社長は起業家として成功されていますが、経営者にとって大切なことは何だと思われますか。
山本昌一:
何か問題が起きたときに逃げずにきちんと対応することですね。
従業員は雇われている側なので「私にはできません」と逃げることもできますが、経営者は問題が解決されるまで対峙しなければいけません。
そのため見て見ぬふりをせず、何が原因で問題が起きたのか、解決するにはどうするべきか、再発を防ぐための予防策を考えることが重要だと思います。
それとこれは私の場合なのですが、リスクやコストをあまり気にし過ぎず、新しいことにどんどんチャレンジしてきたんですね。
私自身のその性格も、ここまで事業を拡大できた要因だと思っています。
たとえアイディアを思いついたとしても、失敗したときのリスクが気になって発言を控えてしまう人は多いですよね。
しかし、10やってみたうち3つだけでも成功すればいいといったように、失敗を恐れず果敢に挑戦する姿勢が大切だと思います。
ーー今後の展望についてお聞かせください。
山本昌一:
どこのメーカーもなるべく在庫を持たないよう工夫されていますが、それでも完全に無くなることはないと思うので、限られた在庫処分のシェアはすべて取りたいと思っています。
他社と比較しても弊社は高価買取を行っているので、この利点を活かしてシェアをさらに伸ばしていく予定です。
編集後記
大学在学中に中古品のネット販売をしていたことがきっかけで、在庫処分サービス事業を始めたという山本社長。「眠れる在庫に魂を与え、再び輝くステージを与えたい」という信念で、廃棄されるはずだった在庫品を救い、新たな消費者への橋渡しを行っている。株式会社Shoichiの活動により在庫品の活用や衣服のリサイクルがさらに広がり、過剰在庫問題の解決につながることを期待したい。
山本 昌一(やまもと・しょういち)/1978年8月3日生まれ、大阪府堺市出身。2000年鳥取大学在学中にECショップを開設し、中古ブランド品のネット販売ビジネスを始める。2005年に有限会社Shoichiを設立(2011年に株式会社に改組)し、2014年に小売店舗「COLORS」を展開、2018年オンライン卸ECショップ「アパレル卸問屋.com」を開設。ASEAN諸国を中心としたボランティアプロジェクト「TASUKEAI 0 PROJECT」を始動し、ベトナムやタイ、中国、台湾、マレーシアなど海外へも販路を拡大している。