※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

2024年4月1日、働き方改革関連法の猶予が終わり、ドライバーの労働時間に罰則付きの上限規制が発生する。

これによってさらに加速するのが、ドライバーの輸送能力低下による荷物の不達や物流の停滞といった運送業界のトラブル「物流の2024年問題」だ。

少子高齢化が進む現代社会において、もはや大手企業でも十分なドライバーを確保することは困難になってきている。

そうした中、独自のアプローチで2024年問題を乗り越えようと準備を進めているのが、株式会社盛運だ。

今回は、代表取締役である穐山正明氏から、創業52年になる企業を立ち上げたきっかけや2024年問題への対応について話をうかがった。

創業50年を越える物流企業が生まれたきっかけ

――起業のきっかけは何だったのでしょうか。

穐山正明:
もともと、小さい頃から「社長になろう」という夢を持っていたんです。松下幸之助が23歳で独立したことを知っていたので、自分もなんとか若くして独立したいと考えていました。

そういった背景から、私の場合は大学には行かず、高校卒業後すぐに就職をして、独立できる事業を探すという道を選びました。

高校卒業後は就いた職を半年ずつで辞めて様々な事業を経験しましたが、その中で出会ったのが運送事業でした。その後、1971年に個人事業主としてトラック事業を始めました。

――なぜ運送業を選ばれたのでしょうか。

穐山正明:
実は、最初から運送業をしようと思っていたわけではありません。当時、会社を立ち上げて社長になろうと思ったら、300~500万円くらいの資金が必要でした。
当時の給料は、高校を卒業した年で大体月2万2,000~3,000円です。この給与で創業資金を貯めようと思ったら、何十年もかかってしまいます。

ところが、運送業ならトラック1台で始められる。まずは運送業でお金を貯め、違う事業にいこうと考えていたら、やっているうちに楽しくなって、52年この仕事を続けています。

会社の強み

――貴社が考える企業の強みは何でしょう。

穐山正明:
「特別積合せ貨物運送(以降、特積み)」の事業許可を持っていること、特積みを持っていることで市街化調整区域にも保管施設の建設ができること、単なる運送のみならず構内作業を含む物流のコンサルティングも行えることなどです。現場の改善には自信があります。

特積みというのは、不特定多数の貨物を1台のトラックに載せて輸送する事業を指します。

特積みを持っていると、通常なら開発許可が下りない農地にも積み合わせ用の施設をつくれるんです。たとえば市が所有する農地の開発なども受けられるし、お客様の工場の近隣に物流施設を建てられます。

――現場を知っていることの強さについて教えていただけますでしょうか。

穐山正明:
弊社は小さな組織ですから、お客様が物流のコストダウンや改革をしたいとなったとき、スピード感をもって動けます。

また、単に工場から荷物を受け取って運送するのではなく、倉庫の手配・荷物の保管・荷役まで一括して請け負えるため、弊社の社員は取引先の商品をすべて把握していますし、取引先の工場で働く担当者がしてほしいことへの改善提案もできる。

だからこそ、現場で働くお客様から弊社を支持してもらえているんです。
同じ仕事を任されたら大手にも勝てる、この自信と信頼感が弊社の大きな強みとなっています。

実際、とある大手メーカーの常務取締役から式典でお褒めの言葉をいただき、物流部門を丸々任されていたりもします。

――お客様の近隣に物流センターを建てられることもメリットでしょうか。

穐山正明:
工場に隣接して荷物を配送するセンターなどを用意し、工場からセンターへの輸送、いわゆる横持ちの時間を限りなくゼロに近づけており、お客さんから高く評価されています。

その結果、現場の作業時間や残業時間を大幅にカットできた例もあります。また、運送に留まらず、物流全体の効率化や改革について提案できるのが、弊社の強みです。

ドライバーが足りなくなる「物流の2024年問題」

――多くの物流企業が頭を悩ませる、人員不足にはどのように備えていらっしゃいますか?

穐山正明:
大手の運送業もそうですが、中小企業の場合は特に、どこもずっと人手不足です。基本的に、大型免許を取れるようになるのは、普通自動車の免許を取った3年後。18歳で普通免許を取っても、大型のドライバーになれるのは21歳なので、新卒採用ではなかなかドライバーを確保できません。

そこで、弊社では大型免許の取得費用をトラック協会の助成金と自社負担でカバーしたり、未経験者でも安心して仕事に取り組めるように安全講習やトレーニングを実施したり、シャワールームや自動洗車機を設置したりして、未経験者や中途採用者が働きやすい・通勤しやすい環境を整備しています。

――物流の2024年問題に対して、どのような対応を行っておられますか?

穐山正明:
5年くらい前からトレーラー輸送を強化しています。

小さい車で何往復もするより、大きな車で一気に運ぶ方がコストを抑えられます。また、荷物の積み替えの必要がないので、中継拠点を設け東西双方から来たトレーラーを交換することにより、往復に費やす日程を半分に済ませて疲労軽減につなげています。

また昔と違って、工場の製品も大量生産・大量輸送ではなく、必要最小限の在庫を必要な分だけ運送するのが主流になっていますので、特積みの認許を活かし、小さな製品を集めて大きなトレーラーで地方へピストン輸送することで効率よく収益を上げ、従業員に給与として還元できるようにしています。

編集後記

業界全体の人員不足や2024年問題にもいち早く取り組まれ、常に顧客にとって最善を追求し、歩み続ける穐山社長。

「最初は運送業をするつもりはなかった」と口にしつつも、中継拠点や物流センターの開設など事業拡大を続け、創業52年を迎えている。

豊富な経験で企業の物流改革を後押しする株式会社盛運から目が離せない。

穐山正明(あきやま・まさあき)/1951年生まれ。1971年に盛運興業(個人事業)として創業。1980年に法人として運送免許を取得し、株式会社盛運代表取締役に就任。現在に至る。