※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

時間外労働の規制によりトラックドライバーの労働時間が制限され、労働力不足が叫ばれている「2024年問題」。そんな中、お菓子や雑貨、アパレルなど多岐にわたる商品の配送を手がけ、堅調に成長しているのが、ダイセーロジスティクス株式会社だ。

代表取締役社長の田浦辰也氏に、社長に就任するまでの経緯や、周囲から非難されても自社のスタンスを貫いたこと、健康経営への取り組みなどについてうかがった。

軽い気持ちで転職した会社で昇進を続け、会社のトップへ

ーーまず入社の経緯からお聞かせください。

田浦辰也:
以前は地元の青森県の小さな漁師町で団体職員をしていました。当時は目的も目標もなく、ただ1日の仕事をこなすだけでした。そして8年が過ぎた頃に、何の変化もなくいい加減に生きていた結果生じた大きな失敗から、自分を変えなければいけないと思うようになりました。

そこで環境を大きく変えるために、一度東京に出てみようと考えました。ハローワークでたまたま弊社のドライバー募集広告を見つけ、就職を決めたのです。

ーー代表取締役社長に就任するまでの経緯を教えていただけますか。

田浦辰也:
取引先との間に管理会社が入ることになり、管理体制がガラッと変わりました。毎朝行われるミーティングでミスを指摘され続けた当時のセンター長が耐えられなくなり、突如辞めてしまったのです。

そこで社内では中堅だった私が、上司と一緒にミーティングに参加するようになりました。その後、上司から「後は任せた」と言われ、最年少の28歳でセンター長に任命されました。当初は3ヶ月で辞めて地元に帰るつもりだったのですが、その後事業本部長に昇格し、今に至っています。

まさか自分が会社の代表になるなんて思ってもみませんでしたね。それと同時に社員とその家族の生活がかかっているので、経営者として会社を潰してはいけないという重圧を感じました。

酷評されても自分たちの信念を貫いた結果、業績は右肩上がりに成長

ーー貴社の強みについてお聞かせください。

田浦辰也:
カテゴリーを問わず、あらゆる業界の物流に対応できるのが強みです。かつてある会合において、「あれこれ手を出すから業績が悪いんだ」と厳しく指摘されたことがあります。帰りの新幹線で副社長が涙を流すほど厳しい指摘でした。

それがあまりにも悔しくて、絶対に見返してやると闘志を燃やしていましたね。その後も自分たちの方針を変えずに事業を進めたところ、徐々に業績が伸びていきました。現在はパンやお菓子、雑貨、アパレルなどあらゆるジャンルの配送を手がけ、安定した収益を得ています。

また、受発注や入庫作業、在庫管理、出荷業務、伝票発行業務など、すべての物流業務を自社で請け負っている点も強みです。さらに自社の配送センターを基点に、全国で安定した配送サービスを行っています。

果敢に挑戦しやすい職場環境の醸成。ウェルネスチームを発足し健康経営に注力

ーー人材採用や社員教育についてはどのようなお考えですか。

田浦辰也:
データに基づく管理手法が主流になっている流れを受け、学習能力の高い人材を積極的に採用しています。そして、高度な計算は得意な人に任せ、ベテラン社員はこれまでの経験を活かして業務にあたってほしいと思っています。

社員教育で私が言い続けてきたのが、「失敗を許す文化を創ろう」です。ベテラン社員には、失敗した後にもう一度挑戦するチャンスを与えるように伝えています。ただし、失敗を隠したり他人のせいにする、自分に非はないと開き直ったりする場合は助けなくていいと言っています。

弊社は年功序列ではなく、各自の能力や成果を重視しているので、努力した分はきちんと評価しています。自分の成長のためにもめげずに挑戦し続けるマインドを持ち、どんどん新しいことにチャレンジしてもらいたいですね。

ーー経営面において貴社独自の取り組みを教えてください。

田浦辰也:
社員の健康管理を強化するため、2023年に人事部内にウェルネスチームを設置しました。これまで健康診断で再検査が必要と言われても、病院を受診しない社員が多いことが課題でした。そこで看護師資格を持つ人を採用し、専門家の立場で再検査を促してもらうようにした結果、受診率は以前の倍以上になりました。

さらに健康啓蒙活動の促進により、社員の健康への意識も高まっています。こうした取り組みが評価され、2024年には全国健康保険協会から健康優良企業の銀に認定されました。

健康経営に力を入れることにより、ご家族に「社員の健康を気遣ってくれる会社なんだ」と安心していただければと思っています。また、求職者へのアピール材料になることも期待しています。

会社のさらなる発展に向けた今後の展望について

ーー今後の展望についてお聞かせください。

田浦辰也:
まず中小企業の体制から脱却し、上場企業と同等の職場環境やコンプライアンス体制を整備していきたいと考えています。2027年には九州へ、3年以内に東北や北海道に進出し、5年以内には全国に物流網を構築する計画です。また、海外で働きたい人の受け皿をつくり、会社をステップアップさせるため、5年を目途に海外展開の拡大も視野に入れています。

システムの販売については、人工知能を活用したAI配車や、配車業務を集約する総合配車システムの販売を視野に入れています。また、開発中の荷主と複数の運送会社をつなぐ、共同配送マッチングサービス「TRi」の販売も検討中です。こうして配送以外の事業を増やすことで収入の柱を増やし、収益の安定化を図っていきたいと考えています。

ーー最後に読者の方々へメッセージをお願いします。

田浦辰也:
現在、弊社では新卒採用と中途採用を行っています。新卒採用では定員は設けず、できるだけ多くの方に来ていただきたいと思っています。中途採用では大型トラックやフォークリフトの免許をお持ちで、物流業界での勤務経験がある方も募集しています。

弊社はあらゆる物流ニーズに対応できる総合力が強みです。200社以上との取引実績があり、全国そして海外をカバーする物流網の構築を進めています。また、社員の健康管理の促進やAIシステムの開発など、時代に合った経営を行っています。物流業界の未来を共に創る仲間として、チャレンジ精神のある方をお待ちしています。

編集後記

出稼ぎのつもりで入社した会社で社長に就任した田浦社長。「これは私一人の力ではありません。上の人が引っぱってくれて、横の人が支えてくれて、下の人が担いでくれて、ここまで来れました」と語る。ともに働く社員の健康を守り、挑戦の場を提供するダイセーロジスティクス株式会社は、これからさらなる成長を遂げることだろう。

田浦辰也/青森県出身。1993年にダイセーロジスティクス株式会社のドライバーとして戸田営業所に配属される。1995年当時最年少の28歳で戸田営業所のセンター長に抜擢。その後、埼玉県に新設した倉庫にてセンター長、事業本部長を歴任、2012年より取締役社長に就任。2013年に代表取締役社長に就任。