※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

私たちが毎日口にする食べ物。食品は生活する上で必要不可欠であるため、それを支える食品会社は多く存在し、常に需要が高い状態だ。

そんな数ある企業の中で、自然食品や健康食品の企画・販売を行っている株式会社創健社。

素材本来のおいしさを活かした商品を提供し、創業から55年以上という長い間、消費者の信頼を獲得し続けてきた。

今回は代表取締役社長、中村靖氏に、社長就任のきっかけや主力製品、今後の展望などについて話をうかがった。

創業55年を迎える食品会社の代表取締役に就任するまで

ーー貴社が創業されたきっかけを教えていただけますか。

中村靖:
弊社は私の父が創業した会社です。父が最初に創業したのはプラスチックの成形加工会社で、弊社のような食品とは全く別の事業に関わっていました。

当時は「新・三種の神器」である白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫が売れた時代で、父はそれらのプラスチックの部品を製造する会社を経営していたので、事業は順調に進んでいました。

しかし、その後父は重病にかかり、治る見込みはなく、あと数年の命であることが医師から伝えられます。そんな中でも父は少しでも長く生きるために、占いや民間療法などさまざまなものを頼り、最終的に見つけたのが食事療法でした。同時に、食の大切さというものにも強く関心を抱くようになったようです。

当時、アメリカのゲイロード・ハウザー博士が「ハウザー食」という健康食事法を提唱し、ハウザー食品普及会というものが日本に登場しました。そこで、父はその本部の手伝いをすることになり、それがきっかけで「自分で食の事業を展開したい」と思うようになったのです。これが弊社創業の背景です。

ーー代表取締役就任までの経緯を教えてください。

中村靖:
私は最初は父の会社を継ぐことに全く興味がなく、自分で仕事を見つけて働きたいと思っていました。私が就職活動をしていた時は、多くの企業がコンピューターを使い始めた時期だったので、コンピューターへの興味と需要の高さから、システムエンジニアの仕事を最初のキャリアとして選びました。

無事に就職し、システムエンジニアとして順調に働いていたのですが、ある日弊社の当時の専務から、「今の会社は辞めて、創健社の社員としてニューヨークに行ってみないか」と急に提案されたのです。

システムエンジニアの仕事が楽しかったので、初めは断ったのですが、改めて考えてみると、これは2度とないチャンスだと思い、1987年に弊社に入社することになりました。

入社後、約1ヵ月で実際にニューヨークに行き仕事をしていたのですが、そのタイミングで父が亡くなってしまったのです。日本に帰国し、係長として福岡営業所に赴任し現場を学びました。その後、上場の準備を行う本社の経営企画室の責任者を任され、2001年に代表取締役に就任することになりました。

ーー今までで1番苦労したことや辛かったことを教えてください。

中村靖:
おかげさまで人には恵まれていたので、自分のキャリアの中で対人関係で辛かったことはありませんでした。しかし、会社として規模縮小とリストラを行わなければならなかったことは、とても辛いことでした。

バブルが弾けた後に弊社は上場したのですが、景気の悪化により、リストラを2回もしなければならなくなりました。経営者として1番やりたくないことであり、勇気がいることだったので、1番辛い出来事として残っています。

主力製品である「べに花油」が企業成長のきっかけに

ーー貴社はどのような会社ですか?

中村靖:
弊社は、現代では当たり前に存在してる無添加食品に対して、一貫してこだわって事業を行ってきた会社です。今でこそ健康食品は世の中に根付いていますが、弊社の創業当時はけげんな目で見られていました。しかしそんな逆境に屈せず、世間からの信頼を得るために上場し、愚直に事業を進めてきたおかげで、食に関するノウハウは他社に負けないほどのものを得ることができたと思っています。

また、社内はフラットな雰囲気です。私自身、積極的にオフィスに行くようにしており、新入社員とも積極的に話すように心がけています。社員にとって、風通しのいい楽しい会社だと思っています。

ーー貴社の主力製品について教えてください。

中村靖:
弊社を拡大するきっかけにもなった、「べに花油」が主力の製品です。

当時、アメリカやヨーロッパなどの海外では、コレステロールを低下させ身体に良いというサフラワーオイル(べに花油)がさまざまな場所で売られていました。

しかし、日本では、サラダ油の調合用のごく一部に使われていたものの、単品では売られていませんでした。

そこで私たちの会社でべに花油をつくろうと思い、リノール油脂株式会社(現日清オイリオグループ株式会社)に協力していただき、自然食品店や百貨店の地下の健康食品売り場などで売らせていただいたところ、順調に売上が出るようになりました。

当時、べに花油に含まれるリノール酸はコレステロールを減らす効果があるとマスコミが放送したことで、べに花油の需要が高まったので、タイミングも良かったと思っています。

このことがきっかけで、マーガリンやマヨネーズ、カレールーといったべに花油を使った油脂製品を増やしていくことができました。

現在も350品目ほどある弊社の商品の中で、1番出荷数が多いのは、べに花油と有精卵を使ったマヨネーズです。

次世代につなぐための人材計画

ーー貴社はどのような人材育成を行っていますか?

中村靖:
次の世代を引っ張っていく社員に、積極的に仕事を任せるようにしています。

まず、次の世代の経営者候補となる社員には、中期経営計画の策定といった中枢的な業務を積極的に任せています。また現場の若手社員には、新商品開発にメインで関われるように業務を分配しています。

なるべく現場の社員に業務を任せることで、経営者層だけでなく全社員が自主性を持ち、世代交代した後も自信を持って業務に取り組めるような育成環境をつくるよう心がけています。

周りより1歩先を進む食品会社として日本の健康を支えたい

ーー今後はどのような企業になっていきたいですか?

中村靖:
食品業界の中で、絶えず新たな価値を持つ新商品を生み出す企業でいたいと思っています。

現在、食品はありふれたものであり、良くも悪くも代わり映えしないものとなっています。その中で弊社は現状を疑い、さらにできることがあるのではないかと考え、皆様の食卓を彩り、健康に過ごしていただけるような商品をつくり続けなければいけないと考えています。

微力ではありますが、地域、そして日本が健康になるための手助けをしていきたいですね。

編集後記

創業当初から食品に真剣に向き合ってきた株式会社創健社を父から引き継ぎ、お客様からの信頼を積み重ねてきた中村靖氏。

現状に甘んじず、新商品開発や社内体制の強化など、さらなる挑戦を続ける株式会社創健社から、今後も目が離せない。

中村靖(なかむら・やすし)/1958年神奈川県生まれ、日本大学卒。1984年システムエンジニアとして就職し、1987年に創健社に入社。2001年に同社代表取締役に就任。趣味は料理。