街中にコーヒーチェーンがあふれ、多くのカフェや喫茶店が競合する昨今。その中でも「日本茶を専門とするカフェ」として、他社との差別化に成功しているのが株式会社七葉だ。
同社は国内外にお茶のカフェ「nana’s green tea」を展開し、素材と店舗づくりにこだわることで多くのファンを獲得している。同社の代表取締役、朽網一人氏は、開業のきっかけを「テレビで見た温泉街でのワンシーン」だと話す。
nana’s green teaが国内外で愛される理由とは一体何なのか、朽網氏に創業秘話や事業戦略を聞いた。
「抹茶のスタバを始めたい」という思いでnana’s green teaを開業
ーーなぜ現在の事業を始めようと思ったのか教えてください。
朽網一人:
もともと飲食業が好きで、学生時代も飲食店でずっとバイトをしていました。何の事業で起業しようかと考えたとき、自分の好きなことだったら頑張れそうだなと思ったのが1つの理由です。
また、当時、テレビを見ていたときに、大分の湯布院で抹茶を飲んでいる女性の姿を見かけたんです。「東京から大分まで来てわざわざ抹茶のためにお店に並ぶのか」と思ったのと同時に、「日本茶や抹茶でスタバのようなお店を始めたら面白いかも」と思いました。
実際に京都や静岡を訪れてみたところ、「抹茶のカフェ」はまだ存在していないことがわかりました。誰もやっていないなら、自分がやろうと思ったのです。nana’s green teaを世界に通用するブランドにしたいという思いで創業しました。
予想を上回る来店客数でオープン初日に店を閉めることに
ーー創業当初の印象的なエピソードを教えてください。
朽網一人:
1号店のオープンが上手くいき、2号店をオフィス街にオープンしたときの話です。オフィス街ということもあって、平日の昼間に予想以上の数のお客様が来店し、オペレーションが追い付かなくなってしまいました。
それでオープン初日に「1週間で店を立て直して新たに始めさせていただきます」という張り紙を掲示し、お店を一時閉店しました。1週間の間にほかのお店を見学して、どのようにランチタイムを回しているのか調査しました。
メニュー構成なども参考にさせてもらい、再オープン時には無事に店舗を上手く回すことができました。
ーー事業が軌道に乗ったのはいつ頃ですか。
朽網一人:
「ラクーア」という東京ドームに併設されたアミューズメント施設内に、4舗目をオープンしたときです。とても良い条件で出店させてもらえたため売上が倍近くになり、そこから一気に事業が軌道に乗り始めましたね。
店舗デザインを通して地域への尊敬を伝える
ーー貴社のこだわりを教えてください。
朽網一人:
素材が良い抹茶を使っている点が、1番の差別化ポイントになっています。ただ良い抹茶であるというだけではなく、僕たちが1番美味しいと感じた抹茶を使っています。牛乳との相性が非常に良い点も強みですね。
また、地域によって店舗デザインを変えているのも弊社のこだわりです。たとえば姫路にある店舗には、姫路城と同じ瓦を用いて天守閣の中にいるかのようなデザインを施し、窓から姫路城が望めます。
店舗デザインを変えているのは、その地域への尊敬を伝えたいから、そしてお客様や地元の方に愛されるようなお店をつくりたいからです。
給与を上げることで優秀な人材を確保できる
ーー採用の際に意識していることはありますか。
朽網一人:
弊社はお茶を提供しているという点でほかのカフェと差別化ができているので、もともと応募が多く、人材が集まりやすい傾向にあります。それに加えて、時給を上げたことで本当に多くの方が応募してくれるようになりました。
時給を上げると、たくさんお金を稼ぎたい人が応募してくれます。たくさん稼ぎたい人は何か目標や目的意識があることが多いので、仕事ができる傾向にあるのです。
採用で1番大切なことは、同じ船に乗る人材を間違えないこと。一定以上の時給を提示することで、意欲的な人材が集まるようにしています。
ーー朽網社長から社員やスタッフには、どのようなことを伝えていますか。
朽網一人:
僕はいつも「自分と他人には嘘をつくな」ということ、そして「ありがとうとごめんなさいを言った数ほど幸せになる」ということを伝えています。この2つさえしっかりとしていれば、誰でも自分の人生を一歩一歩、確実に登っていくことができると思っています。
これからを担う若手には目的意識や夢を持ってもらいたい
ーー貴社にはどういった人材が向いていると思いますか。また、これから社会で活躍する若手人材の方には、どういったことを伝えたいでしょうか。
朽網一人:
弊社は保守的な方には向いていないかもしれませんが、自ら積極的に面白いことを始めたい方には楽しい会社だと思います。若いからできない、新人だからできないではなくて、是々非々で仕事を進めていける方には合っていると思いますよ。
また、若手の方には目的意識や夢、希望を持ってほしいというのが1番の気持ちです。そして、苦労したり、真剣に働いたり、努力した結果は必ず自分に返ってくるということも知ってほしいですね。
編集後記
「人生で唯一の後悔は、英語を勉強しなかったこと」と語る朽網社長。「英語でコミュニケーションがとれるだけで世界は広がるから、若い人たちには海外へ飛び出してほしい」とメッセージを送った。
海外展開に力を入れる株式会社七葉が、これからもお茶を通して日本の良さを世界へ広め、日本の飲食業を盛り上げてくれることに期待したい。
朽網一人(くたみ・かずと)/1971年神奈川県生まれ。大学卒業後、大手OA機器メーカーで営業職に従事。3年で退社し、3年間の海外放浪後、2001年にナナズグリーンティーの元となるグリーンティーカフェを自由が丘に創業。現在に至る。