※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

東京都千代田区の山甚物産株式会社は、福井県越前を発祥地とし、蚊帳の製造から始まった寝具の製造卸企業。創業162年の老舗として知られている。

近年は分社化していたリネンサプライ、リビング、不動産といった組織を合併・一本化し、相互の協働によって全体を推進させる経営スタイルが特徴的だ。

最近は「通気性が良い」「適度な反発力」「洗えて清潔」等の特徴を活かしたプリマレックスというオリジナル商品を武器に、介護福祉方面への寝具の供給に注力している。

厚生労働省のデータによれば、寝具を含む福祉用具の貸与費用額は2009年度1880億円から10年後の2019年度に86%アップの3494億円を記録。高齢化の進行による利用者数の増加で、さらなる成長が見込まれている。

就任3年目となる代表取締役社長の山本健一郎氏に、入社の経緯や経営方針についてインタビューを行った。

社長就任後の大仕事は部門間のチームワーク構築

ーー社長に就任するまでの経緯をお聞かせください。

山本健一郎:
前社長は私の親ではなく伯父でしたから、もともと事業を継ぐ予定はありませんでした。

大学を出て就職した半導体の会社で充実して働く日々でしたが、あるとき伯父が病を患ってしまいました。伯父には後継者がいませんでしたので、妹である私の母から「兄を助けてほしい」と、頼まれたのです。

最初は固辞していたのですが、「経営者として働くことで会社員より多くの経験が積めるだろう」と思い直し、また家業を助けたい気持ちも膨らみ、2018年に入社し、2021年に社長に就任するに至りました。

ーー社長になって取り組んだことは何でしょうか?

山本健一郎:
弊社はグループ内外で合併を重ねてきた歴史があるため、私が入社した頃は明らかに部署ごとに垣根がありました。部門間のコミュニケーションがなく、まとまりのない組織という印象でした。

「共有できる経営資源があるのに、競い合っているだけでは意味がない」と思い、月1回の経営会議を開き、シナジーがありそうな案件について協議する機会を設けました。例えば基本的な事ですが、リレーションのある不動産関連の企業の中でホテル等の運営開発しているところに寝具やリネンを紹介したりなどヒト、モノ、情報を共有し、相乗効果を利用しない手はないのです。

また、私と各部署の本部長が出席する食事会を開いて交流の場を増やしました。これらによって現在では上層部のあつれきは解消されています。他本部間の社員のコミュニケーションも増え、同じ方角を向いた1つの経営体として活動を進めているところです。

オリジナルの「高反発マットレス」を介護施設向けに拡販

ーー現在注力しているセクションは何でしょうか?

山本健一郎:
現在伸び悩んでいる部門こそ社一丸となって伸ばしていきたいと考えています。その一つはBtoCがメインのセクションであるリビングです。

今まさに高齢化社会の真っただ中ですから、介護や福祉向け用品に新たに挑戦、注力しています。長年幅広いジャンルの寝具を扱ってきた弊社ならではのノウハウを駆使し、介護業界のニーズにマッチした商品を開発しています。

また、同時にECによる一般ユーザー向けの販売にも注力する方針です。量販店等の大型店舗が寝具を取り扱いをはじめ、街の専門店も伸び悩んでいますが世の中の「睡眠」への関心も高まっておりますので専門店ならではの訴求に加え、今後は一般消費者向に直接訴求できるニーズ対応型の商品を開発販売するためにネットの活用こそ必須と考え、EC事業を成長させる構えです。

ーー貴社商品の特長を教えてください。

山本健一郎:
寝具には「通気性」「清潔さ」「反発力」といった睡眠の質に関わる課題があります。プリマレックスは特殊ポリエチレンを硬さの異なる層を複数を網状に絡めることでそれらの課題が解決できる商品(※)に仕上げています。
(※)プリマレックス公式HP

プリマレックス

この素材であれば介護向けの商品も、一般消費者向けの商品も同様のメリットを提供できると考えています。また、高反発に仕上げたマットレスは高齢者や介護者が起き上がる動きをアシストすると同時に介助者のサポートにも繋がります。

長年、一般消費者向けにも良い睡眠を提供してきており、そこで得たノウハウを介護向けにも活用し、若者や働き盛りの方等が追求できるような高品質な睡眠を、高齢者や介護が必要な方々を含めた皆様にお届け出来ればと考えています。

編集後記

山本社長は20代30代の方に「失敗を恐れずに、アクションしてみないと何が起こるか分からないのだから、人を巻き込んででもやるべき。そして若いときから行動する癖をつけた方がいい」とアドバイスしている。

若いうちから社長を引き受ける度胸を持ち合わせた人物だけに、アグレッシブなコメントに勇気づけられる。

「2030年までに年商100億円」という目標については、「М&Aしかり、競合他社でも違う業態でも、互いのビジネスを組み合わせる必要はあるでしょう」とのこと。社長ならばきっと、目標よりも早く達成するのではと期待してしまう。

山本健一郎(やまもと・けんいちろう)/1984年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、2007年にトーメンエレクトロニクス株式会社(現株式会社ネクスティ エレクトロニクス)入社。中国や台湾系新興メーカーの発掘、営業に携わる。2018年に伯父である前社長の依頼を受け、山甚物産株式会社に入社。2021年に同社代表取締役社長に就任。