※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

コロナショックを機に、世の中に急速に広がったテレワーク。それに伴い、オフィスにデスクを置かない企業が増えた。これにより生じるのが大量の不要備品で、中でも机や椅子といった大型事務用品が目立つ。

佐川急便を中核とするSGホールディングスグループ事業会社であるSGムービング株式会社は、そのような不要品のリユースを提唱する。デリバリー事業にリサイクル事業などの新たな付加価値を付け、大型貨物を得意とする物流企業として活動している。

代表取締役社長の角本高章氏に、会社の現在とこれからについて話をうかがった。

社会とグループ企業の静脈物流という役割

ーーはじめに事業内容についてお聞かせください。

角本高章:
当社はSGホールディングスグループに属している物流会社です。小型の宅配荷物は佐川急便が展開していますが、佐川急便では運べない大型の家具や家電などを自宅までお届けし、指定場所で組み立てや接続を行う事業を行っています。

また、事務所の移転や人事異動に伴う引っ越し事業も請け負っています。机や椅子などを新調する場合にはその手配も承り、LED工事やEVの充電設備の設置も行うなど、幅広く対応できることが特徴です。

現在は、移転時に発生する什器等のリユースやリサイクルの提案に力を入れており、「静脈物流」という表現を使っていますが、BtoC企業や個人から出る廃棄物などをもう一度リサイクルして原料に変えたり、リユースで欲しい方に再度ご利用いただける取り組みを強化しています。

ーー現在どれぐらいの自治体と提携が進んでいますか。

角本高章:
現在102か所ほどの自治体と協定を締結しています。大きなところでは、福岡市や相模原市があります。地域の個人宅で処理にお困りの家電を搬出するお手伝いをしながら、リサイクルを促すスキームで、企業や個人も含めて利用できるサービスに展開を広げています。

ドライバー時代に天職だと感じた経験

ーー社長の経歴について教えてください。

角本高章:
1996年に佐川急便の九州支社に入社しました。当時はセールスドライバー®として預かったお荷物を届けることが仕事でしたが、お届けしたときに「ありがとう」と言われたり、雨が降っていればタオルを出してくださったり、野菜や食べ物をいただいたり、仕事をして感謝されることに非常にやりがいを感じていたので、それが「私にとって天職だ」と思い、今に至ります。

私は福岡県出身ですが、九州各地の営業所を経験しました。北熊本や鹿児島の所長に就いた後、関西支店に副支店長として着任し、その後は本社の安全推進部長、中国支店の支店長を経て、2021年4月に現職に至りました。さまざまな事業がグループ内にある中で、長い間デリバリー事業に携わってきましたが、お客さまが心待ちにしている商品をお届けして感謝の言葉をいただける点で良い仕事だと今でも感じています。

グループの観点から見た事業戦略

ーーSGホールディングスグループであることの強みを教えてください。

角本高章:
当社にも営業担当者はおり、個社の活動も行っていますが、佐川急便のセールスドライバー®は約26,000人ほどいるので、この情報量は他社にはない強みだと思っています。佐川急便から日々共有される情報を事業会社内に展開して、どこへ営業するかを一緒に相談することもあります。

また、グループ横断の先進的ロジスティクスプロジェクトチーム「GOAL」には、私たち事業会社から選抜されたメンバーが集まっているので、情報が各社から集まります。複合的な提案を求められることも多いので、その場合は、「GOAL」を活用して、各事業会社内の収益に結びつけていく動きをしています。

企業の経営体制とコンプライアンスに関する議論

ーー人事評価制度の強化や見直しについてはどのような構想をお持ちですか。

角本高章:
管理するうえで、コンプライアンスを意識しています。SGホールディングスがプライム市場へ上場していることもあり、当社が中途半端なビジネス展開をするわけにはいきません。

表彰制度を設けて頑張っている従業員に対して表彰を行う活動もしています。従業員がワークライフバランスを大切にしながら、やりがいを持って仕事ができる会社を目指しています。

社員への投資は惜しまない。専門性も強化中

ーー人材育成についてはどのように進めていく予定ですか。

角本高章:
社内では年間の教育コンテンツが20ほどあり、今後も拡充していく予定です。コミュニケーション能力やロジカルシンキング、キャリア形成などのカリキュラムがありますが、それだけでは十分ではないと考えており、バディ制で先輩社員とペアを組み、毎月意見交換や面談を行う取り組みもしています。

また、電気工事士の資格取得を推進しており、取得に向けて事前にレクチャーをしたり、外部の方を招いた実技の事前試験を行ったりしています。同じように、移転作業に伴う美術品関連の資格取得推進制度も設けています。このように、専門性の高い資格の研修制度を順次増やしていく予定です。

やりがいを感じられる仕事を追い求めてほしい

ーー採用された方が貴社を選んだポイントはどこだと思いますか。

角本高章:
学生から見れば、当社の「静脈物流」という事業は、なじみがないものだと思います。たとえば、ペットボトルが廃棄されるときに「何かに役立つのでは」「使いたいと思う人がいるのでは」という発想を持って商材を扱えば、廃棄されているものが実は価値ある物で、資源に変わっていくという捉え方もできます。これが私たちがやろうとしていることであり、それに賛同していただける方も多いのではないでしょうか。

ーー学生に向けてのメッセージをお願いします。

角本高章:
世の中には素晴らしい仕事がたくさんあるので、自分がやりたいと思うことを模索してほしいと思います。やりたいことが明確にあり、それを実行している方は少ないかもしれませんが、私自身は「社会貢献や、世の中のためというキーワードになるビジネスができればいいな」と思っています。

現在、私たちは循環型社会の実現に向けて静脈物流に取り組んでいる最中です。ここをしっかりビジネスとして推進している企業は、国内にはまだ少ないと思っています。社会に貢献できる分野で新しく挑戦しながら、次の世代、そのまた次の世代に向けて、このビジネスが継続的に成長できるよう取り組んでいるところです。

挑戦したり、ポジティブ思考で取り組んだり、広い視野でいろんな企業を見ていけば、自分に合った場所も探せるでしょう。ぜひ、当社でもお待ちしております。

編集後記

セールスドライバー®から一企業の代表へとたどり着いた角本氏。現在の立場はドライバー時代を含めたすべての経験あってこそだと語る。

そんな同氏率いるSGムービング株式会社が目指しているのは、先の世代まで続く循環型の物流企業。夢と未来あふれる会社の今後の飛躍に注目したい。

角本高章(かくもと・たかあき)/1996年佐川急便株式会社九州支社に入社。同社南九州支店で所長を歴任。その後、関西支店で副支店長、東京本社安全推進部長、中国支店支店長を経て、2021年4月より現職。