
株式会社リオ・ホールディングスは、弁護士、司法書士、税理士、社会保険労務士の各士業法人が構成するリオ・パートナーズ総合事務所との連携により、不動産・法務・税務を融合させ、不動産領域を中心とした資産運用コンサルティングをワンストップで提供している。今回は代表取締役の中川智博氏に、今までのキャリアや起業時のエピソード、今の事業を始めたきっかけ、仕事をする上での考え方、そして今後の展望について話をうかがった。
リクルートでの経験、起業にいたるまで
ーー新卒で株式会社リクルートコスモスに入社した理由を教えてください。
中川智博:
学生時代から、将来は独立することを心に決めていました。当時はバブル絶頂期で、東京23区のマンション価格は高騰し、会社員として一生懸命働くだけでは到底手が届かない時代だったからです。そのため、就職活動では不動産と金融を軸に幅広い業界を検討しましたが、最終的には独立起業を応援する風土があり、不動産事業を展開していたリクルートグループのリクルートコスモスへの入社を選びました。
ーー起業するための原動力となったことは何ですか?
中川智博:
私は大学入学前に2浪しており、24歳から社会人生活がスタートしました。2浪の悔しさや、そこから自覚した自身の凡才さゆえに、「人の何倍も努力しなければ世の中で勝っていけない」という思いを胸に、大学1年生の頃から必死に勉強し、努力していました。そのことを当時付き合っていた彼女(現在の妻)に伝えると「一緒に起業しよう」と言ってくれて、2人でリクルートコスモスに入社したのです。
しかし、バブルが崩壊してマンションも買えるようになり、リクルートコスモスも楽しい会社だったので、独立する必要はないかもしれないと思っていました。その上、何とか一念発起してリクルートを卒業しようと思った矢先に阪神大震災があり、不動産ビジネスの行く末を考えると怖気づいてしまった時期もあって、なかなか一歩を踏み出せずにいました。
すると、妻から「2浪もして、大学1年の頃から皆が遊んでいる間に独立に向けて勉強してきたのに、夢を夢で終わらせるな」と励ましてもらい、奮起することができました。
「世の中にないサービス」というヒントを得て今の事業をスタート
ーー現在の事業を立ち上げたきっかけを教えてください。
中川智博:
リクルートコスモス退社後に、リクルートの創業者である江副浩正氏のもとで3年ほど一緒に仕事をさせていただきました。そこで、彼から「儲けようとするのではなく、世の中にないサービスを生み出せ」というアドバイスをいただきました。
その時、頭に浮かんだのが自分の親族に起きた相続の経験でした。相続の手続きには法務や税務、資産があれば不動産など、様々な分野の問題が複雑に絡み合って降りかかります。私はリクルートに勤めていたので、すぐ顧問弁護士や顧問税理士などに話を聞くことができましたが、普通の人にはそれが容易にできないことに気付きました。相続だけでなく、資産運用全般においても同様です。
それであれば、不動産事業の会社の中に弁護士や税理士などを抱えたサービスがあればとても便利だと思い、資産運用サービスをワンストップで提供する事業を始めることにしました。
ーー法務や税務でもAI活用が進む中、貴社のコンサルティング価値はどこにあるとお考えでしょうか。
中川智博:
弊社の最大の強みは、リオ・パートナーズ総合事務所とのチーム体制「チーム・リオ」を形成し、不動産に税務会計や法務といった多岐にわたる領域を組み合わせ、お客様へのトータル的なソリューションを提供する点です。この総合的な判断や提案は、現在のAIにはまだまだ難しい領域と言えるでしょう。
特に私たちが主軸とする不動産は、「リアルエステート」と呼ばれるように、現場で見聞きした情報がすべてを握ります。現地の業者からの報告やインターネット上の検索結果だけで勝負するのではなく、自ら現場に足を運んで得た情報を加工し、専門知識と組み合わせる泥臭い人間力こそが私たちの本質。チーム・リオの弁護士にしても、書籍やインターネットからの二次情報だけで勝負している弁護士とは全く異なります。この泥臭い人間力があるからこそ、お客様に「この人に頼もう」と思っていただける、AIには決して代替できない独自の価値を生み出せると確信しています。
ーー金利上昇などで環境が厳しくなる中、貴社の事業にはどのような影響がありますか。
中川智博:
コロナ禍や金利の高騰、インフレ、建築費の上昇など、ビジネスの先行きを不透明にする要素は常に現れます。私たちはこれまでに訪れた幾多の危機にも、ビジネスモデルの根幹は維持しつつ、その時々に応じて舵取りの転換を図り、そのたびに大きく成長してきました。
ゆえに、私は現在の環境が悪いとは全く思っていません。インフレが進めば進むほど、不動産を購入したいというニーズは高まるものの、同時にコストの壁に阻まれ、買いたくても買えない人が増加します。
だからこそ、不動産に関する深いノウハウと優秀な人材、独自の情報網を持つ私たちにとっては、むしろ大きなチャンスなのです。時代に逆行するような厳しい環境下であっても、泥臭く一次情報を集める私たちの事業モデルは、強い味方になると考えています。世の中の格差が広がれば広がるほど、私たちが提供できる価値は高まり、お客様からの期待も大きくなるため、現在の情勢下でも価値を出し続ける自信を持っています。
専門領域の壁を壊す「遠慮はしないが配慮はする」組織文化

ーー多様な専門家が集まる組織を、一つのチームとしてまとめる秘訣は何ですか。
中川智博:
「遠慮はしないが配慮はする」という文化です。士業の誇りを持つ者、利益を生む自負を持つ者など、多様なエネルギーがぶつかり合うことで大きな推進力が生まれます。パートナーズ側の代表と協議をしながら、チーム・リオ内でもお互いへの不満を溜めず、お客様へのソリューションを第一に考え、フラットに意見をぶつけ合うことを大切にしています。
ーー専門家のプライドがぶつかり合う中で、あえて設けていないルールはありますか。
中川智博:
世間一般に存在するヒエラルキーの概念を、社内に一切持ち込まないことです。たとえば、会計の分野では税理士より会計士が上だとか、法務では司法書士より弁護士が上だといった暗黙の了解がありますが、私とパートナーズ側の代表で協議し、そうした枠組みを意図的に壊しています。
私は社員の出身高校や大学、保有資格、前職などをほぼすべて把握していますが、その上で、あえてヒエラルキーを棚に上げ、率直に意見を交わせる環境を整備しています。働き方や待遇に関する不満が出た際も、パートナーズ側の代表とともに業界ごとのメリットとデメリットを明確に伝え、いいとこ取りを許さない厳しい姿勢も示して、組織のバランスを保っています。
ーー資格の有無にとらわれない独自の評価制度について、詳しくお聞かせください。
中川智博:
資格取得のための努力は心から尊敬しています。しかし、「資格があるから無条件に偉い」わけではありません。給与や評価を決めるのは資格の有無ではなく、現在、会社にどれだけの付加価値を提供しているかという実利的な基準です。これを明確に伝えることで脱・資格至上主義の環境を実現し、多様なメンバーがお互いを認め合える強い組織を作っています。
研修よりもまずは「当事者意識」で現場経験を積むことが大切
ーー仕事をする上で大切にしている考え方や価値観について教えてください。
中川智博:
リクルートから起業した方が共通で持っている考え方なのですが、人材を経営の中核に置くようにしています。既存の事業モデルに人を合わせるのではなく、「強い意志と実力を持つ人がいれば、その人のために新しい部署をつくる」というのが弊社のスタンスです。これは「良い人材さえいれば仕事や結果は後からついてくる」という考え方によるものです。
ーー貴社ではどのような教育体制をとっていますか。
中川智博:
研修に時間をかけるよりも、まずは現場に出て仕事をしてもらうようにしています。弊社で活躍している社員は当事者意識が高く、彼らは現場に行くと、自分自身で判断して解決方法を考えるので、とても成長が早いのです。当事者意識を持って行動できる社員が、これからも増えていくことを期待しています。
ーー人ありきで新たな事業が生まれた具体的なエピソードについてお聞かせください。
中川智博:
実際に、子会社の社長が商業施設開発に興味を持ち実績を出した際には、そこに資源を投下して事業を展開しました。また、外部から専門家を招くのではなく、社内でオフィス事業を担当していたメンバーをホテル事業のトップに据え、一大事業へと成長させた例もあります。このように、まさに「人ありき」で事業の枠組みが広がっています。
優秀層を集める採用投資と次世代へのバトンタッチ
ーー新卒採用に莫大なエネルギーを投資されている理由をお聞かせください。
中川智博:
最大の戦術は圧倒的な戦力を集めることです。採用費を惜しまず投資した結果、東大や京大層などの優秀層が集まる会社になっています。また、社員の退職をネガティブに捉えず、外でも通用する人材を輩出する「登竜門」でありたいと考えています。「ここでなくても、生きていけるか。」と自問できる、やんちゃな野心家を獲得するためにも、圧倒的なスピードで成長し続ける会社でありたいですね。
ーー次世代への権限移譲について、現在どのようなお考えをお持ちでしょうか。
中川智博:
私は「65歳で社長を交代する」と宣言しており、残された時間はあと4年です。強い組織を次世代へ継承するためには、私自身が変わらなければなりません。私が出しゃばると次世代が指示待ちになるため、口頭での指示を抑え、メールでは次世代の役員をCCに入れることで状況を把握させたり最終承認を任せたりと、意図的に私がフェードアウトする仕組みを作り、経営者としての覚悟を持ってバトンタッチを進めています。
就職人気ランキングにランクインするような魅力ある企業にしたい

ーー働き方が多様化する現代において、若手社員にはどのような働き方を期待されていますか。
中川智博:
私は、弊社の社外監査役、社外取締役、相談役と12年間も弊社にお力添えくださった、元伊藤忠商事会長で元中華人民共和国駐箚特命全権大使、丹羽宇一郎さんの著書にあった「汗出せ、知恵出せ、もっと働け!」という言葉が大好きです。人口減少社会において、20代のうちに泥臭い努力をして基礎力を身につけないと後で苦労します。だからこそ泥臭い努力を全肯定し、あえてプレッシャーをかける環境を用意しているのです。そうした熱量に響く若い人材が集まるからこそ、私たちの組織は強いのだと確信しています。
ーー今後注力していきたいことを教えてください。
中川智博:
1つ目は、採用強化です。弊社のキャッチコピーは、「ここでなくても、生きていけるか。」です。雇われる意識ではなく、弊社を利用して自分のスキルや市場価値を高めていきたいという優秀な人材を採用したいと思っています。人材採用はとても大切なので、私自身、今でも面接には一番時間を割いています。
2つ目は、理念の浸透です。弊社では「努力で、可能性を切り拓け」をコア・バリューとして掲げ、ハードワークを厭わないこと、人がやらないことに取り組むことの大切さを社員に伝え続けています。これからももっとこの考えを浸透させたいと思っています。
ーー次世代への継承を見据え、どのような組織を目指されますか。
中川智博:
就職人気ランキングにランクインするような会社にしたいですね。そのためには、社員自身の成長や社会的価値につながるようなやりがいのある仕事ができる環境を作り、給与も上げていく必要があると思っています。そして多くの方々に「入社したい」と思ってもらえるような魅力を持った会社を創りあげていきたいですね。
編集後記
独立するつもりでリクルートコスモスへ新卒入社したものの、一時は独立を諦めようかと考えた中川社長。目的を見いだせたことで起業に踏み切ることができ、今では従業員数2000人(※連結)を超える規模にまで会社を成長させた。今後は採用も強化し、就職人気ランキングにランクインするような魅力あふれる会社となるよう力を入れていく。次世代へのバトンタッチを見据え、フラットな組織文化と泥臭い努力を肯定する同社の挑戦は続いていくだろう。

中川智博/1964年生まれ。早稲田大学卒業。新卒で入社した株式会社リクルートコスモス(現・株式会社コスモスイニシア)での財務業務、転籍先の株式会社コスモスライフ(現・大和ライフネクスト株式会社)での不動産管理業務を経て、1991年に株式会社リオ(現・株式会社リオ・コンサルティング)を設立、1997年に創業。2007年にホールディングス制への移行に伴い、株式会社リオ・ホールディングス代表取締役に就任(現任)。