
不動産業界において、中古マンションの買取再販事業を手掛ける株式会社ブレーメン。特に、市場が安定している港区・千代田区に特化することで独自の地位を築いている。同社の強みは、経験豊富な人材が築いた大手不動産仲介会社との強固なパイプと、親会社の潤沢な資金力を基盤とする「現金決済」のスピード感である。
デベロッパー、不動産ファンドでキャリアを重ね、「真面目で誠実な商い」を信条とする代表取締役の石川浩之氏に、取引先との信頼を深化させる秘訣と今後の展望について話を聞いた。
不動産一筋のキャリアと「誠実さ」という原点
ーーまず、石川社長が不動産業界を志された経緯についてお聞かせください。
石川浩之:
理由は2つあります。1つは、実家が不動産業を営んでいたため、幼い頃からこの業界に慣れ親しんでいたこと。そしてもう1つは、率直に「ビッグになりたい」という思いがあり、最も高価な商材である土地や建物を扱う不動産業が、そのための近道だと考えたからです。
ーー社会人としての最初のキャリアと、そこで得た学びがあれば教えてください。
石川浩之:
マンションデベロッパーで、マンションを建てるための土地を仕入れる「用地仕入れ」という仕事を担当していました。土地は最低でも5億円以上する商材ですから、入社してすぐの頃はなかなか信用してもらえず、情報を得ること自体が困難でした。業界の知識を必死に学び、どうすれば相手に安心してもらえるかを常に考え、信頼関係を築くことに苦労した記憶があります。
幸運にも入社1年目で土地を仕入れることができ、それが大きな転機となります。この経験を通じて、用地仕入れから設計、マーケティング、建築、そして販売まで、マンション開発の全ての流れを実体験として理解できました。点と点だった知識が線で繋がり、事業の全体像を把握できたことで、2年目以降は交渉の進め方や話法も身につき、スムーズに仕事を進められるようになりました。
ーー経営者として大切にされていることは何ですか。
石川浩之:
どんなビジネスも、結局は人と人との関わり合いで成り立っています。だからこそ、相手を思いやる協調性や、真面目に、誠実に仕事に取り組む姿勢が何よりも重要だと考えています。不動産業界にはさまざまな人がいますが、自分は誠実な人たちと誠実な仕事をしていきたい。その積み重ねが信用や信頼を生み、新たな仕事に繋がっていくのだと信じています。
ブレーメンが貫く「選択と集中」の事業戦略

ーー事業内容とその特徴を教えてください。
石川浩之:
6年前の株式譲渡を機に、現在は中古マンションの「買取再販」のみに事業を特化しています。かつて手掛けていた開発事業や戸建て事業などからは完全に撤退し、中古マンションを一戸単位で買い取り、価値を高めてから再度販売することにリソースを集中させている形です。
最大の特徴は、事業エリアを港区と千代田区に絞り込んでいる点です。これは不動産価値が日本で最も安定しているエリアだと考えているためで、景気の動向に左右されにくいというメリットがあります。買取再販事業は市況の変化に対応しやすい柔軟性が求められますが、常に需要が見込めるこの2区に集中することで、事業リスクを抑えながら安定した経営を目指しています。
ーー大手仲介会社との強固な関係を築けている理由は何だとお考えですか。
石川浩之:
理由は2つあります。1つ目は、在籍する営業担当者の資質です。業界経験が20年を超える担当者たちが長年かけて培ってきた、大手担当者との個人的な信頼関係が事業の生命線です。そしてもう1つは、会社の財務的な強み。弊社は親会社との連携により自己資金でスピーディーに現金決済が可能です。そのため、「買う」と決めたら確実に購入できる安心感を取引先に提供できています。
未来を見据えた取引先との関係構築
ーー今後の取引先との関係構築について、どのようにお考えですか。
石川浩之:
まず既存の取引先に対しては、これまで通り誠実に仕事に向き合い、一つひとつの売買を丁寧に重ねていくことが、結果としてさらに強い信頼関係につながると信じています。私たちを信頼して良い物件情報を提供してくださる皆様を裏切ることなく、継続して取引を続けていくことが最も重要です。
また、新規の取引先開拓も欠かせません。大手の不動産仲介会社では、3〜5年で担当者が異動になることが一般的です。担当者が変わっても関係が途切れないよう、後任の方を紹介していただいたり、そのエリアのキーマンとなる方とのつながりを新たに構築したりする必要があります。これもまた人と人とのつながりなので、一つひとつのご縁を大切にしながら、新たな関係性を築いていきたいです。
ーー最後に、今後の目標についてお聞かせください。
石川浩之:
会社として大きな野望があるわけではありません。親会社から預かっている資金を有効に活用し、安定した利益を生み出し、堅実な不動産経営を継続していくことが目標です。弊社は少数精鋭の組織なので、万が一、担当者が退職するようなことがあっても、その穴を埋められる優秀な人材を確保しつつ、現在の事業規模を維持し続けていくことが大切だと考えています。
編集後記
デベロッパー、ファンドという不動産業界の最前線で15年間腕を磨き、独立した石川氏。その言葉の端々から感じられたのは、華やかな世界のイメージとは対照的な「真面目さ」と「誠実さ」という確固たる信念だ。同社の強みである、港区・千代田区への「選択と集中」、経験豊富な「人」が築く信頼、そして「現金決済」という圧倒的なスピード。これら全ては、取引先と真摯に向き合うという同氏の哲学に貫かれている。変化の激しい不動産業界において、同社の在り方は、事業を堅実に成長させる上での普遍的なヒントを与えてくれるだろう。

石川浩之/1973年東京都生まれ。新卒で不動産デベロッパーに入社し、営業として10年間勤務。その後、ファンドにて不動産の取得・売却業務に5年間従事。2011年に株式会社ブレーメンを設立。港区・千代田区を中心に、不動産と建築に特化したオンリーワンの住空間提案を行っている。