※本ページ内の情報は2025年7月時点のものです。

トランクルームという成長市場において、事業者と利用者をつなぐ“縁の下の力持ち”として圧倒的なシェアを誇る株式会社パルマ。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)という形で、賃料保証から施設管理、コールセンター、さらには施設の開発支援まで一気通貫で提供できる体制を強みに、現在約400社以上のトランクルーム事業者から選ばれている。今回、2023年12月に社長に就任した木村純一氏に、同社の歩みと未来へのビジョンを聞いた。

加瀬倉庫での実績を経て、上場企業の経営者へ転身

ーー前職ではどのような仕事をしていましたか?

木村純一:
新卒で入社した加瀬倉庫では、そこで、トランクルーム事業の開発から収益改善、新規事業立ち上げまでを担い、屋内型トランクルーム事業の拡大に貢献しました。

私と私の上司以外は中堅社員ばかりで、新卒1年目で即戦力を求められる環境でした。その後、上司が退職してしまったことから、私は1人で最大限の成果をあげる方法を試行錯誤しました。そして、遊休不動産(※)の活用に悩む地主の方への営業を効率化する仕組みを発案し、17年間で500件以上の施設開発を実現。さらに、貸し会議室やレンタルオフィスなどの新規事業を立案したところ、収益化に成功し、当時の加瀬倉庫の主力事業に成長しました。

特に、トランクルームの使用料金を事務手数料などを除いた本体金額のみに設定することで、他社より安価で、かつ稼働率も高いサービスの提供が可能になり、全体の稼働率を7割から9割に引き上げることに成功。大きな成果を上げたことが評価され、2022年に加瀬倉庫の代表取締役に就任した次第です。

地道に成果を積み上げ、最後は会社の主力事業まで育てることができた経験は、私の財産です。収益モデルや運営改善の視点を持ち合わせ、若くして同社の代表取締役に就任した経験は、今の経営に色濃く活かされています。

(※)遊休不動産:所有者が適切な活用をしていない、空き家以外の店舗・土地などの不動産のこと。

ーーその後、どのような経緯で株式会社パルマの社長に就任したのですか?

木村純一:
加瀬倉庫で17年間キャリアを積んだ後、2023年5月に退職しました。退職後に何をするかは決めていなかったのですが、加瀬倉庫と取引があった弊社の前社長から誘いを受け、2023年6月に執行役員として入社。さらに半年後の12月に、代表取締役社長に就任しました。

入社を決めた理由は、未上場のオーナー企業とは異なる、上場企業のガバナンスや経営のダイナミズムに惹かれ、より大きなスケールの挑戦ができると感じたから。また、「社長として、事業をさらに拡大しよう」という意気込みもありました。

トランクルーム事業者の“最強の裏方”として、ワンストップ支援を提供

ーー貴社の事業内容をお聞かせください。

木村純一:
パルマの中核は、トランクルーム専業者向けのBPO支援サービスです。単なる賃料保証にとどまらず、コールセンター業務、現場管理、施設の開発から運営サポートまでトランクルーム事業に関わる煩雑な業務を丸ごと引き受けており、特化型BPOとして業界に深く根を下ろしています。

また、会社の事業領域をスケールするために、トランクルーム経営を検討している方に向けて、コンテナを販売するビジネスにも着手しました。これまでは、用地を取得してビル型のトランクルームを建設し、それを投資ファンドに売却していたのですが、コロナショックで不動産価格が高騰し、用地の仕入れができなくなってしまったのです。しかし、コンテナ型のトランクルームであれば、借りた土地に設置するだけで運営できるため、現在はそちらにも注力しています。

ーー貴社の強みや特徴はどのようなところですか?

木村純一:
現在、トランクルーム事業者全体の約6割、約400社がパルマのサービスを活用していただいております。これは、同社の信頼性と業界でのポジションを如実に示す数字だと思っています。

また、土地を購入せず運営可能な「屋外型コンテナトランク」事業も進めており、地価高騰の中で投資ハードルを下げるモデルとして注力しています。

「改革2027」で目指すのは、業界の枠を超えた事業展開と100億円企業

ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか?

木村純一:
中期経営計画「改革2027」では、既存のトランクルーム関連事業の強化と、新規分野への横展開の両立を掲げています。今後はBPO機能にITソリューションを掛け合わせ、AIによる空室予測や自動対応チャットボット、遠隔管理ツールなどの導入を進めることで、「不動産×テクノロジー」の実装を加速させていく方針です。蓄積したオペレーションデータを活用し、業界の標準化・効率化を支えるインフラ企業を目指します。これまでのノウハウを他業種や業界にも応用することで、第二・第三の収益柱を育てる構想です。

トランクルーム事業で蓄積してきた運営ノウハウ、施設管理や保証、受付といった仕組みは、介護、教育、不動産仲介などの他業態でも展開できると考えています。スピード感を持って成長させ、会社全体で100億円を超える売上高を、なるべく早い段階で達成したいと考えています。新規事業に参入することで、取引先を増やし、会社の成長につなげたいですね。

また、会社の成長には社員の成長が不可欠なので、今後は人材教育と採用にも力を入れたいと考えています。役職に関係なく、自発的に意見を述べ、その意見を形にして収益化できるような仕組みを構築する方針です。また、会社の成長につなげていけるよう、2〜3年後には新卒に絞った人材採用を行う計画もあります。

ーー貴社が求める人物像をお聞かせください。

木村純一:
成長戦略のカギは“人”だと考えています。ですので、社員一人ひとりが“主役”として活躍できる企業文化を目指しており、将来的には新卒採用にも注力し、組織基盤の若返りと拡充を図っていくつもりです。

採用の際、学歴は選考の判断材料の一つではありますが、それ以上に、元気で明るく向上心がある人材かどうかを重視しています。将来的に、経営層や管理職として会社をけん引していくような人材が理想です。時間の切り売りをするような働き方をするのではなく、全員が主役になれるような、当事者意識の高い方と一緒に働けることを楽しみにしています。

ーー最後に、貴社の目指す未来について教えてください。

木村純一:
これからはテクノロジーの活用が業界成長の鍵を握ると考えています。たとえば、BPOの現場にAIやIoTを導入することで、管理コストの削減やユーザー満足度の向上を実現する仕組み作りを進めています。最終的には、業界横断で使えるプラットフォームを構築し、パルマが“業界のOS”のような存在になることが目標です。

編集後記

“縁の下の力持ち”から“業界を動かす主役”へ。トランクルームというニッチな市場に深く根差しながらも、その仕組みとノウハウを武器に、他業界にも広がる可能性を秘めた株式会社パルマ。今後は「不動産×テクノロジー」の視点で、業界の業務フローそのものを効率化・可視化し、データドリブンな意思決定を可能にするプラットフォーム構想も視野に入れている。木村社長のリーダーシップと行動力は、同社を次の成長ステージへと引き上げていくだろう。

木村純一/1984年、神奈川県出身。2007年上武大学ビジネス情報学部卒業後、株式会社加瀬倉庫に入社。同社の代表取締役を経て、2023年にパルマに入社。同年12月に代表取締役社長に就任。